2026年度 認定対応版
「健康経営を推進するぞ!」と意気込んだものの、何をもって「成功」とすれば良いのか──。
担当者が最初に直面する大きな壁が「KPIの設定」です。
しかし、KPIは「設定して終わり」ではありません。
この記事では、2025年3月に改訂された最新ガイドブックの「戦略マップ」に準拠し、KGIから逆算するKPI設計 → 測定 → 効果検証 → 改善まで、担当者が明日から使える実践ガイドをお届けします。
健康経営のKPI設定でよく見られる3つの落とし穴があります。
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「去年と同じKPI」をそのまま使い続け、なぜそれを測るのか説明できない。
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月次で数値報告はするが、改善アクションにつながらない。
❌
数値を見ているのは担当者だけで、経営層も現場も動けない。
これらの根本原因は、KGI(最終ゴール)が不在のままKPIを並べていることにあります。
企業が目指す最終的なゴール。
いわば「山の頂上」。
例:プレゼンティーイズム損失を3年で15%改善
KGI達成のための中間チェックポイント。
いわば「一合目・二合目の看板」。
例:運動習慣者率を40%に引き上げる
つまり、「KPIの達成を積み重ねた結果、KGIが達成される」という因果関係を意識することが、KPI設計の第一歩です。
2025年3月に改訂された「健康経営ガイドブック」では、KPIを4つの層に分けて整理する「戦略マップ」の考え方が示されています。
下の土台(プロセス指標)から積み上げ、最上位のKGI(経営指標)へとつなげる設計です。
| 層 | 指標例 |
|---|---|
|
🎯 第4層 経営・パフォーマンス (KGI) |
プレゼンティーイズム損失割合、アブセンティーイズム率、ワークエンゲイジメントスコア、離職率、労働生産性指標 |
|
❤️ 第3層 健康アウトカム |
適正体重維持者率(BMI 18.5〜25未満)、血圧・血糖・脂質有所見者率、高ストレス者割合、メンタル不調による休職者数 |
|
🏃 第2層 意識・行動変容 |
運動習慣者率、喫煙率、朝食欠食率、睡眠による休養充足度、健康リテラシー自己評価スコア |
|
📋 第1層 プロセス(実施量) |
健診受診率(目標:100%)、ストレスチェック受検率、セミナー参加率、特定保健指導実施率、再検査・精密検査受診率 |
▲ 上から KGI → アウトカム → 行動変容 → プロセス(土台)の順。下から積み上げ、最終的にKGIの達成を目指す構造です。
読み方のポイント:
この「因果の鎖」を意識してKPIを選ぶことが、やりっぱなしにならないための最も重要な原則です。
💡 専門家の視点:KPIは「選ぶ」のではなく「逆算する」
KPIを「設定すること」がゴールになっている企業を、8年間で数多く見てきました。
本当に差がつくのは、KGIから逆算してKPIを選び、
そのKPIが「動いているか」を四半期ごとに検証する仕組みです。
100社あれば100通りのKPIがあるはずです。
他社のKPIリストをそのまま借りても、自社の経営課題は解決しません。
自社の健康課題をデータで特定し、そこから逆算する。
それが、数字で語れる健康経営の第一歩です。
ここでは、5つのカテゴリ別に代表的なKPIを整理します。
★は2026年度に新設・強化された項目です。
| カテゴリ | 代表的なKPI | 層 |
|---|---|---|
|
生産性向上 組織活性化 |
プレゼンティーイズム損失割合(%) | 第4層 |
| アブセンティーイズム率(欠勤日数/人) | 第4層 | |
| ワークエンゲイジメントスコア(ユトレヒト尺度等) | 第4層 | |
| 有給休暇取得率(%)/ 離職率 | 第4層 | |
|
メンタルヘルス ★ 名称変更 |
高ストレス者率(%) | 第3層 |
| 心理的安全性スコア / 職場環境スコア | 第2層 | |
| メンタル不調による休職者数・休職日数 | 第3層 | |
| 相談窓口認知率・利用率(%) | 第1層 | |
| フィジカルヘルス | 定期健診受診率(目標:100%) | 第1層 |
| 適正体重維持者率(BMI 18.5〜25未満) | 第3層 | |
| 運動習慣者率(%)/ 喫煙率(%) | 第2層 | |
| 再検査・精密検査受診率(%) | 第1層 | |
|
★ 女性の健康 2026新設 |
婦人科検診(乳がん・子宮がん)受診率(%) | 第1層 |
| 更年期症状・PMS等による就労支障率(%) | 第3層 | |
| プレコンセプションケア研修実施率 / 相談窓口認知率 | 第1層 | |
|
★ 高年齢従業員 2026新設 |
体力測定・フレイルチェック実施率(%) | 第1層 |
| 転倒予防・運動施策参加率 / 転倒労災件数 | 第2層 | |
| 介護離職率(%)/ 介護と仕事の両立支援利用率 | 第4層 |
出典:経済産業省「健康経営ガイドブック」2025年3月改訂版、健康経営度調査票(令和7年度)、健康経営推進検討会資料を基に作成
自社の優先テーマに合わせて、5カテゴリからKGI1〜2個+KPI3〜5個を選定するのが実践的な目安です。
最初から50個設定する必要はありません。数を絞り、因果の鎖でつなぐことが重要です。
2026年度の健康経営度調査では、プレゼンティーイズムの測定方法・結果・改善計画の開示が評価に直結します。
主な測定手法を比較しましょう。
| 手法 | 設問数 | 特徴 | 推奨企業規模 |
|---|---|---|---|
|
SPQ 東大1項目版 |
1問 |
「最高の状態を100%として、過去4週間の仕事のパフォーマンスは何%?」 無料・簡便・ストレスチェックと同時実施可 |
中小企業に最適 |
| WHO-HPQ | 3問 | WHO推奨の国際標準、国際比較・ベンチマークが可能 | 全規模対応 |
| WLQ-J | 25問 | 時間管理・身体的要求・集中力・対人関係の4次元で分析。詳細な課題特定に強い | 大規模法人向け |
| QQmethod | 2問 | 仕事の「量」と「質」を11段階評価。症状ごとの損失を推計可能 | 全規模対応 |
【SPQによる損失額の計算例】
SPQで全社平均「85%」と回答 → 損失割合 = 15%
年間損失額 = 平均年収 × 損失割合 × 従業員数
= 460万円 × 15% × 100人
= 年間 6,900万円
たった1問のアンケートで、経営層に伝わる「金額」が出せます。
3ヶ月に1回測定すれば、施策の効果を定量的に追跡できます。
💡 専門家の視点:完璧を待たない、SPQ1問から始める
プレゼンティーイズムの測定は「完璧な客観指標」を待っていたら永遠に始まりません。
SPQ1問から始めて、3ヶ月で1サイクル回す。
それだけで、健康経営優良法人の申請書に書ける
「測定 → 施策 → 改善」のPDCAが完成します。
まずは「今の数字」を知ること。それが、すべての起点です。
2026年度(令和7年度調査)では、以下の変更によりKPIの設計・運用に直接的な影響が出ます。
KPI設計への実務的な影響:
健康経営のKPIを「設定して終わり」にしないために、以下の4ステップを実践してください。
STEP 1 ── 経営課題を特定する(KGI設定)
「何を達成したいのか」を明確に。生産性向上?離職率低下?
経営層と合意した1〜2個のKGIを設定する。
STEP 2 ── 健康課題をデータから探る
健診データ、ストレスチェック結果、残業時間、有給取得率。
KGI達成を阻害している健康課題を数字で特定する。
STEP 3 ── 4層構造に沿ってKPIを選ぶ
プロセス → 行動変容 → アウトカム → KGI の因果の鎖でKPIを配置。
「このKPIが動けば、KGIが改善する」というストーリーを作る。
STEP 4 ── 四半期レビューでPDCAを回す
経営会議で四半期ごとにKGI/KPIの達成状況を報告。
動いていないKPIは施策を見直す。年1回の健康経営度調査で終わらせない。
施策を増やすことよりも、「なぜこの数字を追うのか」を経営層と共有する仕組みを作ること。
それが、2026年以降の健康経営で最も求められる力です。
「自社に最適なKPIが分からない」「効果検証の方法を知りたい」
ウェルネスドアが、業種平均との比較から最適なKPI設計までご支援します。
狩野 学(かりの まなぶ)
ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間、フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。課題分析からKPI設計、セミナー・運動施策の実施、効果検証まで一気通貫で支援。「数字で語れる健康経営」の実装を専門とする。
【参考文献・出典】
「健康経営を推進するぞ!と意気込んだものの、何をもって『成功』とすれば良いのだろう?」
健康経営の担当者様が最初に直面する大きな壁、それが**「目標設定」**です。適切なKPI(重要業績評価指標)がなければ、施策は"やりっぱなし"になり、成果を正しく評価できません。この記事では、担当者様の悩みを解決する具体的なKPIリストと実践的なガイドを提供します。
目標設定の話で必ず出てくるのが「KGI」と「KPI」です。この2つを混同していると、適切な目標設定はできません。
つまり、**「KPIの達成を積み重ねた結果、KGIが達成される」**という関係性を意識することが、目標設定の第一歩です。
ここでは、企業の主な目的に合わせて5つのカテゴリに分類し、具体的なKPIの例を50個ご紹介します。自社の課題に近いものからチェックしてみてください。
上記のKPIリストをCSVファイルでダウンロードできます。自社の目標設定シート作成や、施策検討の際にご活用ください。
今すぐリストをダウンロード (CSV)
「自社に最適なKPIが分からない」「設定したKPIをどう改善すればいいか、専門家の意見が欲しい」
ウェルネスドアの専門家が、貴社の課題分析から最適なKPI設定、そして成果に繋がる具体的な施策の実行まで、一貫してサポートします。
「KPIは決めた。でも、その後どう運用すれば成果につながるのだろう?」
「毎月数字は見ているけれど、結局“確認だけ”で終わってしまう……」
健康経営でよくあるのが、**KPIを設定した時点で満足してしまうケース**です。ですが本当に差がつくのは、その後の**運用設計**にあります。この記事では、前編「健康経営KPI 50選」の続編として、**KPIを成果につなげるための“回し方”**を、担当者目線でわかりやすく整理します。
前編はこちら: 「【事例シート付】明日から使える健康経営KPI 50選|KGI・KPI設定に迷わないための実践ガイド」
健康経営におけるKPIは、単に数字を並べるためのものではありません。本来の目的は、**施策が狙い通りに進んでいるかを確認し、必要に応じて軌道修正すること**です。
しかし実際には、次のような状態に陥ることが少なくありません。
つまり、問題は「KPIがないこと」よりも、**KPIが“動く仕組み”に乗っていないこと**なのです。
Q. 健康経営でKPIを設定したのに、成果が見えにくいのはなぜですか? A. KPIが「目標」にはなっていても、「改善のための会話や行動」に結びついていないからです。 健康経営のKPIは、数字を記録することではなく、意思決定と改善行動を生み出すために使うことが重要です。
前編で50のKPI例をご紹介しましたが、実際に自社で追う指標は、最初から多くしすぎないことが大切です。数が多すぎると、担当者も現場も「結局どれが重要なのか」が分からなくなります。
まずは、自社の最重要課題に紐づく**3~5個程度の重点KPI**から始めるのが実践的です。
健康経営の成果は、すぐに最終結果に表れないことが多くあります。たとえば離職率やプレゼンティーイズムは、変化が出るまでに時間がかかる指標です。
そのため、KPI設計では**結果指標(最終成果に近い指標)**と、**先行指標(その手前で変化が起こる指標)**をセットで持つことが重要です。
この2種類を分けて考えることで、「まだ最終成果は出ていないが、良い方向に進んでいる」と判断しやすくなります。
KPI運用が続かない理由の一つは、「全部を毎月見ようとする」ことです。実際には、指標によって適切な確認頻度は異なります。
すべてを同じ粒度で追わないことが、実務負担を下げつつ、継続的に運用するコツです。
実務ポイント: KPIレビューの場では、必ず「この数値を見て、次に何をするか?」まで話すようにしましょう。
例:「参加率が低い」→ 周知方法の見直し/対象者の絞り込み/参加のハードルを下げる、など。
ここでは、目的別に「まず押さえたいKPIの組み合わせ」をご紹介します。
KPI運用の質を高めるには、月1回または四半期に1回、短時間でもよいので**定例レビューの場**を設けることが有効です。
健康経営は、年1回の申請のためだけに動くと、どうしても「書類のための施策」になりやすくなります。日常的なレビューがあることで、健康経営が本当の意味で“経営の一部”になります。
Q. 健康経営KPIの会議は、どのくらいの頻度で行うのがよいですか? A. 月1回の簡易レビュー+四半期ごとの振り返りがおすすめです。月次では変化の確認と小さな改善、四半期では施策全体の方向性を見直すと、無理なく継続しやすくなります。
健康経営で差がつくのは、KPIを設定した会社ではなく、そのKPIを使って改善を回せる会社です。
前編で「何を測るか」を決めたら、次は「どう回すか」を整える。
その一歩が、健康経営を“やっている”状態から、“成果が出る”状態へ進めます。
「KPIを作ったが、どこまで絞るべきか分からない」
「会議で見ているだけで、改善につながらない」
「自社に合った健康経営の進め方を整理したい」
ウェルネスドアでは、課題整理・KPI設計・運用改善まで、実務に落とし込める形でサポートしています。
「KPIは見ている。でも、経営層には“結局何が言いたいの?”と返されてしまう」
「現場では頑張っているのに、健康経営が“福利厚生の話”で終わってしまう」
健康経営が本当に機能し始めるのは、数字を集めたときではなく、その数字が経営課題とつながったときです。 この記事では、前編・第2弾の続編として、健康経営KPIを経営会議で通じる言葉に変える方法を整理します。
前回までの関連記事:
・【事例シート付】明日から使える健康経営KPI 50選|KGI・KPI設定に迷わないための実践ガイド
・【続編第2弾】健康経営KPIは“設定後”で差がつく|目標値・頻度・会議体の回し方 実践ガイド
健康経営の担当者が苦労しやすいのは、数値を集めることそのものではありません。難しいのは、その数値を「何の経営課題に効くのか」という文脈で説明することです。
たとえば「ストレスチェック受検率95%」という数字だけを報告しても、経営層から見ると「それで何が変わるのか」が見えにくいことがあります。 一方で、高ストレス者率の低下 → 休職リスクの抑制 → 離職率の改善 → 人材定着と生産性向上という流れで語れれば、数字の意味が一気に伝わりやすくなります。
つまり、KPIが動かないのは、数字が足りないからではなく、因果関係の整理が弱いからです。
Q. 健康経営KPIを経営層に説明するとき、最も重要なことは何ですか? A. 「そのKPIが、どの経営課題につながるのか」を先に示すことです。 先に数字を話すのではなく、「離職防止」「生産性向上」「組織活性化」など、経営にとっての意味を示してからKPIを説明すると、会議で理解されやすくなります。
健康経営を経営に近づけるために有効なのが、戦略マップです。 戦略マップとは、健康課題、施策、KPI、KGIのつながりを一枚で整理する考え方です。
戦略マップがあると、担当者だけでなく、経営層・管理職・産業保健スタッフのあいだで、「この施策は何のためにやっているのか」が共有しやすくなります。
経営課題 → 健康課題 → 施策 → KPI → KGI
この順番でつながっていれば、「なぜこのKPIを見るのか」「なぜこの施策をやるのか」が説明しやすくなります。
KPI設計で混乱しやすい理由の一つは、プロセス指標・行動変容指標・健康アウトカム・経営成果が混ざってしまうことです。 実務では、次の4階層で整理すると、非常に扱いやすくなります。
この4階層で整理すると、「参加率が上がったのに、最終成果が変わらないのはなぜか」「行動変容が起きているのに、経営成果まで時間がかかるのはなぜか」が説明しやすくなります。
経営会議では、担当者が知っていることを全部話す必要はありません。大切なのは、判断に必要な情報を短く整理することです。
おすすめの報告順
たとえば、「相談窓口認知率は改善したが、利用率は横ばい」「高ストレス者率は改善傾向だが、特定部署で停滞」「睡眠充足度は改善したが、残業時間に変化なし」といったように、“数字の変化”と“次の打ち手”をセットで報告すると、会議が動きやすくなります。
ここでは、健康経営KPIを経営課題とつなげる際の“語り方”の例をご紹介します。
高ストレス者率の改善や上司の健康配慮満足度の向上は、職場の安心感や働きやすさに影響しやすく、結果として離職率の改善や人材定着につながる、というストーリーで整理できます。
睡眠充足度、運動習慣、プレゼンティーイズムは相互に関連しやすく、生活習慣施策を通じて日中パフォーマンスを改善する流れとして説明しやすくなります。
KGI・KPIの設定だけでなく、健康課題・施策・効果検証まで一貫した形で整理されていることが重要です。外部開示や認定対応でも、単なる実施実績より、目標と成果のつながりが見えるほうが説得力が高まります。
実務ポイント: 経営層に説明するときは、 「数字 → 課題 → 次の打ち手」の順で伝えると整理しやすくなります。 数字だけ、施策だけ、感想だけ、にならないように意識することが重要です。
健康経営KPIで差がつくのは、数字をたくさん持っている会社ではなく、 その数字を経営課題とつなげて語れる会社です。
前編で「何を測るか」、第2弾で「どう運用するか」を整理したら、 第3弾では「どう経営に伝えるか」まで整える。
そこまでできてはじめて、健康経営は“人事施策”から“経営施策”へ進みます。
「KPIはあるが、経営層への説明に自信がない」
「施策と数値のつながりを整理したい」
「自社らしい健康経営戦略マップを作りたい」
ウェルネスドアでは、課題整理・KGI/KPI設計・運用改善・社内説明まで、実務に落とし込める形でサポートしています。