近年、男性の育児休業取得率は着実に向上し、多くの企業で両立支援制度が整備されてきました。しかし、その一方で新たな課題が浮き彫りになっています。
それは、育休からの**「復職後」にキャリアが停滞してしまう問題**です。育児をすることは、決してキャリアの「休み」ではありません。むしろ、多様な視点やタイムマネジメント能力を養う貴重な「業(わざ)」と捉えるべき時代です。
この記事では、単なる「育休」で終わらせず、男女ともにキャリアを継続させる**「育業」**時代の両立支援について、企業が取り組むべき具体的な仕組みを専門家の視点で解説します。
制度はあっても、その後のキャリアに不安を感じる社員は少なくありません。男女それぞれが直面する、リアルな課題を見ていきましょう。
女性社員の課題:見えないキャリアの行き止まり「マミートラック」
「時短勤務だから重要な仕事は任せてもらえない」「昇進はもう無理だろう」といった空気を感じ、やりがいを失ってしまうケース。本人の意欲とは裏腹に、補助的な業務に追いやられ、キャリアアップの道から外れてしまう問題です。
男性社員の課題:キャリアへの不安と「取るだけ育休」
「育休を取ったら評価が下がるのでは」「同僚に迷惑をかける」といった心理的障壁は依然として存在します。また、単に制度を利用するだけで、育児・家事への主体的な関与や、復職後の働き方の見直しに繋がらず、形骸化してしまう「取るだけ育休」も課題です。
不安やすれ違いを防ぐには、節目ごとの丁寧な対話が不可欠です。場当たり的な面談ではなく、会社の仕組みとして設計しましょう。
「短い時間で働く=評価が低い」という考え方から脱却する必要があります。
最も重要なのが、制度を支える「文化」です。
Q. 育児をしていない社員から「時短勤務者ばかり優遇されて不公平だ」という声が上がらないか心配です。
A. 非常に重要な視点です。対策として、①時間ではなく成果で評価する公正な評価制度の導入、②カバーする側の社員の貢献を正当に評価し、賞与や昇格に反映させること、③育児だけでなく介護や自己研鑽など、全社員がライフステージに応じて柔軟な働き方を選択できる制度設計を目指すことが有効です。「あの人だけ」ではなく「誰でも使える」制度にすることが不公平感をなくす鍵です。
Q. 短時間勤務の社員に、どこまでの業務を任せてよいか判断が難しいです。
A. まずは本人の意欲を確認することが第一歩です。「キャリアプラン面談」などを通じて、本人がどのような仕事に挑戦したいのかをヒアリングしましょう。その上で、責任ある業務も「役割を細分化する」「チームで担当する」などの工夫で任せることが可能です。時間制約を理由に最初から重要な業務から外すのではなく、「どうすれば任せられるか」を本人と一緒に考える姿勢が管理職には求められます。
育児と仕事の両立支援は、単なる福利厚生ではありません。
多様な人材が安心して能力を発揮できる組織文化を育み、企業の持続的成長を支える「経営戦略」です。
「管理職の意識改革を進めたい」「自社に合った両立支援の仕組みを考えたい」
ウェルネスドアでは、各企業の課題に合わせた実践的な両立支援セミナーをご提供します。
【免責事項】
本記事は、両立支援に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的・専門的な助言を行うものではありません。具体的な制度設計や個別事案への対応については、必ず社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
前回のコラムでは、男性育休の取得促進や制度設計の基礎についてお伝えしました。
制度が整い、取得率が上がってきた企業が次に直面するのは、育休からの**「復職後」**の問題です。
「時短勤務だから責任ある仕事は任せられない」と過剰に配慮してしまったり、本人が「もうキャリアアップは無理だ」と諦めてしまったり…。これでは、せっかく復職しても人材の能力を活かしきれません。
今回は、育児期間をキャリアの「停滞」ではなく「成長」の機会(=育業)と捉え直し、男女ともに活躍し続けるための具体的なマネジメント手法について解説します。
現場では、男女それぞれ異なる悩みがキャリアの障壁となっています。
「無理させられない」という上司の配慮が裏目に出て、補助的な業務ばかり割り振られる状態。本人の意欲はあるのに、昇進・昇格のルートから外れ、モチベーション低下や離職を招きます。
「育休を取ると出世に響くのでは」「同僚に迷惑をかける」という心理的安全性欠如。「取るだけ育休」になりがちで、復職後も定時退社などを言い出しにくい空気が残ります。
すれ違いを防ぐには、節目ごとの意図的なコミュニケーションが不可欠です。
「長く働く=頑張っている」という価値観のままでは、時短勤務者は永遠に正当な評価を受けられません。
育児をしていない社員への配慮も、組織運営には欠かせません。
Q. 短時間勤務の社員に、責任ある仕事を任せるのが不安です。
A. まずは本人の意思確認が最優先です。その上で、「1人で完結させる」のではなく「チームでシェアする」「ペアを組ませる」など、業務フローを見直すことで任せられる範囲は広がります。これは、組織全体の属人化解消にも繋がります。
育児と仕事の両立支援は、単なる福利厚生ではありません。
多様な人材が活躍できる組織文化を育む、最強の「経営戦略」です。
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本記事は、両立支援に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的・専門的な助言を行うものではありません。具体的な制度設計や個別事案への対応については、必ず社会保険労務士などの専門家にご相談ください。