健康施策を毎年実施している企業は少なくありません。しかし、施策が「点」のまま終わっているケースと、「線」としてつながっているケースでは、年数を重ねるほどに大きな差が出てきます。私は、その差を生んでいるのが年間施策設計という考え方だと捉えています。
健康施策の相談を受けていると、「今年も健康セミナーをやることは決まっています」という企業は多くあります。予算も確保されている。実施時期もおおよそ見えている。上長の承認も得られている。
それでも、どの課題に対して、何のテーマを設定するのかが、直前まで決まっていないというケースは少なくありません。
これは、担当者の怠慢ではないと私は思っています。むしろ、「何をやるか」を考える手がかりが社内に十分に整理されていないことが多いのです。
過去の施策の振り返りが共有されていない。健診結果がデータとしてはあるが、施策の方向性と紐づいていない。前任者から引き継いだが、なぜそのテーマだったのかの背景が残っていない。
こうした状態では、毎年「何をやろうか」をゼロから考え始めることになります。そして、時間がないなかで「去年と同じでいいか」「とりあえず流行りのテーマで」となりやすい。これが、単発施策を繰り返す構造の正体だと私は考えています。
一方で、施策が毎年しっかりとつながっている企業には、いくつかの共通点があります。
まず、健診結果からテーマを選定し、実施し、評価するというサイクルが回っていること。健康診断の結果が出揃ったタイミングで、自社の従業員にどんな健康課題が多いのかを確認し、そこからテーマの方向性を決めていく。実施後には、参加者の反応や満足度だけでなく、「次にどうつなげるか」まで振り返る。
もうひとつの特徴は、前年度の施策と、今年度の施策に連結性があることです。去年「食事と栄養」をテーマにしたなら、今年は「運動習慣」に展開する。あるいは、同じテーマでも対象者を変えたり、切り口を深めたりして、施策を進化させている。
こうした企業では、前年度中に、次年度の施策プランについて問い合わせが届くこともあります。「来年度はこういう方向で考えたいのですが」という相談が、年度の後半に届くのです。これは、担当者が年間を通じて施策を「線」として捉えている証拠だと感じます。
施策の相談を受けたとき、私がいきなりテーマの提案から始めることはほとんどありません。最初に確認するのは、従業員の属性です。
具体的には、男女比、年齢構成比、主な職種、勤務形態(日勤か交代勤務か、デスクワークか現場作業か)、そして会社として現在どんな健康課題をトピックスとして取り上げているか。
これらが見えてくると、「どのテーマが刺さるか」ではなく、「どのテーマが、この従業員構成にとって意味があるか」が整理しやすくなります。
同じ「食事セミナー」でも、対象者の属性によって伝えるべきメッセージは大きく変わります。だからこそ、テーマの前に属性の整理が必要だと私は考えています。
従業員の属性を把握したら、次にやるべきことは、自社の健康課題を表す「キーワード」を整理することです。
健康経営の施策設計は、漠然と「健康のために何かやりたい」から始めると、テーマが広がりすぎて焦点が定まりません。逆に、自社の課題を具体的なキーワードで言語化できれば、テーマの方向性は自然と見えてきます。
| キーワード | 関連する健診項目 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 血中脂質異常 | 総コレステロール、LDL、中性脂肪 | 食事・栄養改善、運動習慣 |
| 血圧リスク | 収縮期血圧・拡張期血圧 | 減塩、運動、ストレス管理 |
| 血糖値リスク | 空腹時血糖、HbA1c | 食事改善、運動習慣、生活リズム |
| 肝機能異常 | AST、ALT、γ-GTP | 飲酒習慣の見直し、食事改善 |
| 肥満(BMI) | BMI 25以上の割合 | 食事・運動の複合的アプローチ |
| 腎機能異常 | eGFR、尿蛋白 | 減塩、水分摂取、生活習慣全般 |
| キーワード | 把握の方法 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 運動習慣がない | 問診「週2回以上の運動を1年以上継続」 | 運動セミナー、ウォーキング施策 |
| 朝食の欠食 | 問診「週3回以上朝食を抜く」 | 食事セミナー、食育 |
| 睡眠の質が低い | 問診「睡眠で十分な休養が取れていない」 | 睡眠セミナー、生活リズム改善 |
| 飲酒量が多い | 問診「毎日飲酒」「1日2合以上」 | 飲酒セミナー、肝機能改善 |
| 喫煙率が高い | 問診「現在喫煙している」 | 禁煙支援、禁煙セミナー |
| キーワード | 把握の方法 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 高ストレス者が多い | ストレスチェック集団分析 | メンタルヘルス研修、ラインケア |
| 長時間労働 | 勤怠データ(月平均残業時間) | 働き方改善、タイムマネジメント |
| 休職・欠勤が多い | 勤怠データ(アブセンティーイズム) | 復職支援、職場環境改善 |
| 出勤しても集中できない | アンケート(プレゼンティーイズム) | 睡眠、肩こり・腰痛対策、メンタル |
| 仕事への活力が低い | アンケート(ワーク・エンゲイジメント) | エンゲージメント向上、運動習慣 |
キーワードが整理できたら、次に考えたいのがKGI(最終目標)とKPI(中間指標)です。健康施策は「やって終わり」になりやすい領域だからこそ、評価できる形にしておくことが重要です。
3つであれば、追いかけられます。10も20も設定すると「集計」が仕事になり、施策そのものが進まなくなります。
ウェルネスドア合同会社 代表/健康経営実装アドバイザー。約18年間、フィットネス・スポーツ領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康サービスを本格展開。現在は、健康経営コンサルティング、健康セミナー、動画・eラーニング、OEM・協業支援などを通じて、企業・団体の健康課題を"実装可能な施策"へ翻訳する支援を行っています。
「毎年同じようなテーマになってしまう」「健診データを施策に活かしたい」「来年度に向けて計画的に進めたい」――そうしたお悩みは、テーマ選びより前の整理から始めることで、動きやすくなります。
健康施策を毎年実施している企業は少なくありません。しかし、施策が「点」のまま終わっているケースと、「線」としてつながっているケースでは、年数を重ねるほどに大きな差が出てきます。私は、その差を生んでいるのが年間施策設計という考え方だと捉えています。
健康施策の相談を受けていると、「今年も健康セミナーをやることは決まっています」という企業は多くあります。予算も確保されている。実施時期もおおよそ見えている。上長の承認も得られている。
それでも、どの課題に対して、何のテーマを設定するのかが、直前まで決まっていないというケースは少なくありません。
これは、担当者の怠慢ではないと私は思っています。むしろ、「何をやるか」を考える手がかりが社内に十分に整理されていないことが多いのです。
過去の施策の振り返りが共有されていない。健診結果がデータとしてはあるが、施策の方向性と紐づいていない。前任者から引き継いだが、なぜそのテーマだったのかの背景が残っていない。
こうした状態では、毎年「何をやろうか」をゼロから考え始めることになります。そして、時間がないなかで「去年と同じでいいか」「とりあえず流行りのテーマで」となりやすい。これが、単発施策を繰り返す構造の正体だと私は考えています。
一方で、施策が毎年しっかりとつながっている企業には、いくつかの共通点があります。
まず、健診結果からテーマを選定し、実施し、評価するというサイクルが回っていること。健康診断の結果が出揃ったタイミングで、自社の従業員にどんな健康課題が多いのかを確認し、そこからテーマの方向性を決めていく。実施後には、参加者の反応や満足度だけでなく、「次にどうつなげるか」まで振り返る。
もうひとつの特徴は、前年度の施策と、今年度の施策に連結性があることです。去年「食事と栄養」をテーマにしたなら、今年は「運動習慣」に展開する。あるいは、同じテーマでも対象者を変えたり、切り口を深めたりして、施策を進化させている。
こうした企業では、前年度中に、次年度の施策プランについて問い合わせが届くこともあります。「来年度はこういう方向で考えたいのですが」という相談が、年度の後半に届くのです。これは、担当者が年間を通じて施策を「線」として捉えている証拠だと感じます。
施策の相談を受けたとき、私がいきなりテーマの提案から始めることはほとんどありません。最初に確認するのは、従業員の属性です。
具体的には、男女比、年齢構成比、主な職種、勤務形態(日勤か交代勤務か、デスクワークか現場作業か)、そして会社として現在どんな健康課題をトピックスとして取り上げているか。
これらが見えてくると、「どのテーマが刺さるか」ではなく、「どのテーマが、この従業員構成にとって意味があるか」が整理しやすくなります。
同じ「食事セミナー」でも、対象者の属性によって伝えるべきメッセージは大きく変わります。だからこそ、テーマの前に属性の整理が必要だと私は考えています。
従業員の属性を把握したら、次にやるべきことは、自社の健康課題を表す「キーワード」を整理することです。
健康経営の施策設計は、漠然と「健康のために何かやりたい」から始めると、テーマが広がりすぎて焦点が定まりません。逆に、自社の課題を具体的なキーワードで言語化できれば、テーマの方向性は自然と見えてきます。
| キーワード | 関連する健診項目 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 血中脂質異常 | 総コレステロール、LDL、中性脂肪 | 食事・栄養改善、運動習慣 |
| 血圧リスク | 収縮期血圧・拡張期血圧 | 減塩、運動、ストレス管理 |
| 血糖値リスク | 空腹時血糖、HbA1c | 食事改善、運動習慣、生活リズム |
| 肝機能異常 | AST、ALT、γ-GTP | 飲酒習慣の見直し、食事改善 |
| 肥満(BMI) | BMI 25以上の割合 | 食事・運動の複合的アプローチ |
| 腎機能異常 | eGFR、尿蛋白 | 減塩、水分摂取、生活習慣全般 |
| キーワード | 把握の方法 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 運動習慣がない | 問診「週2回以上の運動を1年以上継続」 | 運動セミナー、ウォーキング施策 |
| 朝食の欠食 | 問診「週3回以上朝食を抜く」 | 食事セミナー、食育 |
| 睡眠の質が低い | 問診「睡眠で十分な休養が取れていない」 | 睡眠セミナー、生活リズム改善 |
| 飲酒量が多い | 問診「毎日飲酒」「1日2合以上」 | 飲酒セミナー、肝機能改善 |
| 喫煙率が高い | 問診「現在喫煙している」 | 禁煙支援、禁煙セミナー |
| キーワード | 把握の方法 | 施策テーマの方向性 |
|---|---|---|
| 高ストレス者が多い | ストレスチェック集団分析 | メンタルヘルス研修、ラインケア |
| 長時間労働 | 勤怠データ(月平均残業時間) | 働き方改善、タイムマネジメント |
| 休職・欠勤が多い | 勤怠データ(アブセンティーイズム) | 復職支援、職場環境改善 |
| 出勤しても集中できない | アンケート(プレゼンティーイズム) | 睡眠、肩こり・腰痛対策、メンタル |
| 仕事への活力が低い | アンケート(ワーク・エンゲイジメント) | エンゲージメント向上、運動習慣 |
キーワードが整理できたら、次に考えたいのがKGI(最終目標)とKPI(中間指標)です。健康施策は「やって終わり」になりやすい領域だからこそ、評価できる形にしておくことが重要です。
3つであれば、追いかけられます。10も20も設定すると「集計」が仕事になり、施策そのものが進まなくなります。
ウェルネスドア合同会社 代表/健康経営実装アドバイザー。約18年間、フィットネス・スポーツ領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康サービスを本格展開。現在は、健康経営コンサルティング、健康セミナー、動画・eラーニング、OEM・協業支援などを通じて、企業・団体の健康課題を"実装可能な施策"へ翻訳する支援を行っています。
「毎年同じようなテーマになってしまう」「健診データを施策に活かしたい」「来年度に向けて計画的に進めたい」――そうしたお悩みは、テーマ選びより前の整理から始めることで、動きやすくなります。