WALKING × SOCIAL NUDGES × 健康経営

「仲間となら、頑張れる」を科学する。
ウォーキングイベント参加率を伸ばす
ソーシャル・ナッジ設計

参加者が固定化する健康イベントを、
チーム設計・見える化・称賛で「巻き込み型」に変える。
さらに継続・公平性・心理的安全性まで含めて“施策の質”を上げる。

✍️ 監修:ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学 | 📅 2026年5月 更新

📌 この記事のポイント

  • ✔ 「参加者がいつも同じ」問題は、意志ではなく設計で解ける
  • ✔ カギはチーム戦(社会的証明×相互責任)進捗の見える化称賛の回路
  • ✔ 参加率が上がっても続かないのは自然。継続設計を別途入れる
  • ✔ 「歩数競争が逆効果」にならないために、評価軸の複線化取り残さないルールが必要

なぜ、健康イベントは
「参加する人がいつも同じ」になりがちか

── 参加しない人を責める前に、設計上のボトルネックを見つける

🧱

障壁1:参加の「初速」が重い

登録、記録、アプリ連携…最初の手続きが重いほど、忙しい層・無関心層が離脱します。まずはスタートの摩擦を最小化します。

⚖️

障壁2:競争が「不公平」に見える

職種・通勤・体力差が大きいのに「歩数だけ」で競うと、運動が苦手な人ほど「どうせ勝てない」と感じやすい。評価軸を複線化します。

🧊

障壁3:称賛が「上位だけ」

上位者しか表彰されないと、その他は静かに離脱します。伸び率・継続・初参加など、称賛の入口を増やします。

🕳️

障壁4:イベント後の「着地点」がない

イベントが終わると、理由が消える。日常導線(昼休み10分、会議前後の立ち上がり等)へ小さく接続させます。

💡 참고:職場の身体活動介入は、自己モニタリング+心理社会的支援の組み合わせが歩数増加につながりやすい、という傾向が報告されています(職場介入のアンブレラレビュー)。

参加率を押し上げる
ソーシャル・ナッジ 3本柱

── 「個人の意志」ではなく「社会的な力」を設計する

PILLAR 1

チーム戦で
「相互責任」を作る

個人戦は上位層だけのゲームになりがち。部署・拠点・混成チームで平均歩数を競うと、運動が苦手な人も「自分の1,000歩が意味を持つ」状態になります。

PILLAR 2

進捗の見える化で
「社会的証明」を出す

ランキング・達成バッジ・ストーリーを社内に出す。「みんなやってる」の空気が、参加の心理的ハードルを下げます。リアルタイム性は有効です。

PILLAR 3

称賛の回路で
「継続」を支える

称賛は上位だけではなく、伸び率・継続日数・初参加などへ拡張。努力の“見返り”を分散させると離脱が減ります。

📎 実務メモ:大学職員のチーム対抗歩数競争で、平均歩数がベースラインから大きく増加した報告もあります(チーム競争+インセンティブ)。

参加率は上がった。
でも続かない。

── 継続は「別の支援」が必要。ここで差がつく

✅ 継続率を高める3つの工夫

1) 目標は「高く」ではなく「切れ目なく」

最初から8,000歩・10,000歩を掲げると、忙しい層が脱落します。「昨日より+500歩」「昼休み5分」など、再開しやすい目標を採用します。

2) 称賛は「順位」以外にも増やす

ランキングは盛り上がりますが、下位の人には逆効果にもなります。前週比・継続日数・初参加など、参加の意味を複線化します。

3) イベント後の「日常導線」を用意する

イベント後も、昼休み10分ウォーク・月1ミニチャレンジ・会議前後の立ち上がりを残す。イベントを日常の働き方へ接続します。

💡 職場の介入研究の統合レビューでは、歩数を増やしやすい要素として自己モニタリング心理社会的支援の組み合わせが示されています。イベント運用では「記録→可視化→支援」の連鎖を切らさないことが重要です。

歩数競争が逆効果になる前に。

── 忙しい人・運動が苦手な人・体力差を前提に「取り残さない」ルールへ

🔧 設計の具体策(おすすめ順)

  • 合計歩数→チーム平均歩数へ(職種差・通勤差の偏りを緩和)
  • 前週比(伸び率)を表彰(“変化した人”が報われる)
  • 継続日数にポイント(短期離脱を減らす)
  • 初参加ボーナス(途中参加を歓迎し、固定化を崩す)
  • 歩数以外の貢献枠(声かけ・共有・記録係など)

※ 競争は悪ではありません。問題は「勝てる人だけが続く設計」になることです。健康経営の目的は“上位者を作る”ではなく“裾野を広げる”ことにあります。

4週間で回す「参加→継続」運用テンプレ

── 迷わないための“型”。小さく始めて改善する

やること 狙う心理
Week 0 募集は「参加が初期値」。チーム自動割当+簡単登録。目標は「今より+500歩」 摩擦削減 / デフォルト / 小さな一歩
Week 1 進捗を毎週掲示。表彰は「前週比」「初参加」「継続」。社内チャットで小さく称賛 社会的証明 / 承認 / 参加の意味づけ
Week 2 ミニイベント:昼休み10分ウォーク/階段チャレンジ。運動が苦手な人向けに“代替貢献”枠 楽しさ / 参加ハードル低下
Week 3-4 イベント後の着地点を提示:昼休み10分・会議前後立ち上がり等。次回の改善アンケート(1分) 習慣化 / 仕組み化 / フィードバック

💡 EXPERT INSIGHT

「参加率8割」より大事なこと。
健康イベントを“文化”に変える設計

私は、ウォーキングイベントの相談を受けるとき、まず「参加率」だけをゴールにしないようにしています。イベントは盛り上がっても、終わった瞬間に行動が止まれば、健康経営としては“点”で終わるからです。

健康施策の本当の勝負は、「参加しない人が減る」ことより、「参加しにくい人にも選択肢がある」状態を作れるかどうかです。忙しい人、運動が苦手な人、体力に不安がある人。職場には多様な前提があります。

だからこそ、評価軸を複線化し、称賛の入口を増やし、イベント後の“日常導線”まで用意する。これが、健康イベントを「一過性」から「文化」へ変える最短ルートだと考えています。

── ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学

📚 参考文献・根拠(主要)

  • ・Rouyard T, et al. (2025) Workplace interventions on sedentary behaviour and physical activity: umbrella review. The Lancet Public Health.(自己モニタリング+心理社会的戦略で歩数増加が大きい傾向)
  • ・Safi A, et al. (2024) Team-based competition with prize incentive increased daily steps in university employees. Frontiers in Public Health.
  • ・(2025) Effects of group communication norms on daily steps in a team-based intervention. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity.
  • ・(2026) Individual versus group-based interventions: systematic review and meta-analysis. Nature Human Behaviour.
  • ・Schaller A, et al. (2024) Physical activity interventions in workplace health promotion: scoping review of reviews. Frontiers in Public Health.

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果を保証するものではありません。個人の健康状態に応じた運動については、必ず医師・専門家にご相談ください。

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「仲間となら、頑張れる」を科学する。ウォーキングイベント参加率を8割に引き上げた“ソーシャル・ナッジ”の力

監修:ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学

この記事のポイント

  • 多くの企業が悩む「健康イベントへの参加者がいつも同じ」という課題は、人の「社会性」を活用することで解決できる。
  • 「同調効果」や「仲間意識」を利用して行動を促す“ソーシャル・ナッジ”が、参加率と継続率向上の鍵。
  • 成功の秘訣は「チーム戦」の導入。「個人の健康」を「チームの目標」に転換することで、当事者意識が芽生える。
  • 進捗の「見える化」と、経営層の積極的な参加が、従業員のモチベーションを最大化する最強の仕掛けとなる。

「全社でウォーキングイベントを企画したが、参加するのはいつも同じメンバー…」「健康セミナーを開催しても、なかなか人が集まらない…」

多くの健康経営ご担当者様が、こうした悩みに直面しています。従業員の健康を願って企画した施策が、一部の健康意識の高い層にしか届かないのは、非常にもったいないことです。

この「参加者が固定化する」という課題を解決する鍵は、人の「意志の力」に頼るのではなく、「仲間とのつながり」や「社会的な影響力」を巧みに利用する行動科学のテクニックにあります。この記事では、参加率を劇的に向上させる“ソーシャル・ナッジ”という考え方と、その具体的な実践方法を解説します。

なぜ、一人では運動を始められないのか?

そもそも、なぜ多くの人は「健康のために運動した方が良い」と頭では分かっていても、行動に移せないのでしょうか。それは、人間の脳が現状を維持しようとする「現状維持バイアス」という強い習性を持っているからです。新しい行動を始めるには、この強力な慣性に打ち勝つための、大きなエネルギーが必要になります。

しかし、このエネルギーを個人の「やる気」や「意志の力」だけに求めると、三日坊主に終わってしまいます。そこで登場するのが「ソーシャル・ナッジ」、つまり**社会的な繋がりを利用して、そっと後押しする仕掛け**です。「みんながやっているから、自分もやってみよう」「仲間に迷惑をかけられないから、頑張ろう」という心理が、行動へのハードルを下げ、継続のモチベーションとなるのです。

参加率8割超え!成功企業が実践する3つの仕掛け

「健康経営優良法人」に認定されている企業の中には、このソーシャル・ナッジを巧みに活用し、高い参加率を実現している事例が数多くあります。

仕掛け1:「個人戦」から「チーム戦」へ。ゲーミフィケーションの導入

最も効果的なのは、部署や支店、あるいは有志で結成したチーム対抗戦にすることです。個人の歩数をチームの平均歩数で競う形にすれば、「運動が得意な人だけが活躍する」という状況を避けられます。自分の頑張りがチームのスコアに貢献する、という意識が「自分ごと化」を促し、普段は運動に関心がない層をも巻き込む力になります。「足を引っ張りたくない」という気持ちが、継続的な参加への動機付けとなるのです。

仕掛け2:「頑張り」の見える化と「称賛」のサイクル

チームのランキングや個人の達成状況を、社内報やイントラネットの掲示板などで定期的に発表しましょう。「〇〇部、現在トップ!」「△△さん、10万歩達成おめでとう!」といった具体的な称賛は、参加者の承認欲求を満たし、モチベーションを高めます。また、「あの部署が頑張っているなら、うちも負けられない」という健全な競争意識も生まれます。デジタルツールを使えば、リアルタイムで順位が変動する様子を見せることもでき、イベントをさらに盛り上げることができます。

仕掛け3:経営層を巻き込む“最強のナッジ”

社長や役員が自らチームを作って参加し、イベントの進捗について積極的に発信することは、従業員に対する何より強力なメッセージとなります。「経営層が本気で推奨している」という姿勢が伝わることで、施策の重要性が社内に浸透し、「参加しないと損かも」という雰囲気が醸成されます。朝礼や会議の場で「私も毎日歩いています」と一言触れるだけでも、従業員の意識は大きく変わるでしょう。

「やらされ感」を「一体感」に変えるデザイン

健康施策の成功は、従業員一人ひとりの意志の力に依存するのではなく、組織全体で「自然と参加したくなる」楽しい雰囲気をいかにデザインできるかにかかっています。
ウェルネスドアは、行動科学に基づいたイベント設計や、従業員のエンゲージメントを高めるコミュニケーション戦略の策定を通じて、貴社の健康経営を成功に導きます。

【主な情報源】
・経済産業省「健康経営度調査結果(result2024.xlsx)」
・経済産業省「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定法人取り組み事例集」

健康経営コラム 第2弾

参加率は上がった。でも続かない。ウォーキングイベントを“一過性”で終わらせない3つの工夫

監修:ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学

この記事のポイント

  • ウォーキングイベントは「参加率」が上がっても、その後の継続設計が弱いと一過性で終わりやすい。
  • 継続の鍵は、高い目標よりも、続けやすい目標設計にある。
  • 順位だけの競争ではなく、称賛・前週比・継続日数など複数の評価軸を持たせることで、離脱を防ぎやすくなる。
  • イベントの成功を本当の健康行動に変えるには、日常業務の中に動く導線を組み込むことが重要。

前回のコラムでは、「仲間となら頑張れる」という人の社会性を活かした“ソーシャル・ナッジ”の考え方をご紹介しました。チーム戦や進捗の見える化、経営層の参加は、健康イベントへの参加率を高めるうえで非常に有効です。

しかし、現場ではもう一つ大きな壁があります。それが、「最初は盛り上がったのに、続かない」という問題です。イベント初週は社内で話題になっても、日常業務が忙しくなるにつれ、記録が止まり、参加者が減り、結果的に“やる人だけが最後まで残る施策”になってしまうことは少なくありません。

健康経営の本来の目的は、一時的な参加者数を増やすことではなく、従業員の行動変容を職場の中に少しずつ定着させることにあります。今回は、ウォーキングイベントを一過性で終わらせず、継続につなげるための具体策を解説します。

なぜ、イベントは盛り上がっても定着しないのか?

理由の一つは、多くの健康イベントが「始めるきっかけ」には強くても、「続ける仕組み」までは十分に設計されていないことです。人は新しいことを始める際には後押しが必要ですが、続ける段階では別の支援が必要になります。

たとえば、最初から歩数の多さだけで評価される仕組みだと、もともと運動習慣のある人ほど有利になります。すると、忙しい人、体力に自信がない人、運動が苦手な人は、「自分には向いていない」と感じやすくなります。参加率は上がっても、継続率が下がれば、健康施策としての裨益範囲は限定的です。

ポイント

成功の分かれ道は、「盛り上がる企画」よりも「続けやすい設計」ができているかどうかです。

継続率を高める工夫1:目標を“高く”ではなく“切れ目なく”設計する

健康施策では、つい「1日8,000歩」「月間○万歩達成」といった高めの数値目標を掲げたくなります。しかし、継続率を重視するなら、最初に必要なのはハードルを下げることです。

たとえば、

  • 昨日より500歩多く歩く
  • エレベーターを1回だけ階段に変える
  • 昼休みに5分だけ歩く
  • まずは週3日、記録だけは続ける

といった「できる人だけが達成できる目標」ではなく、多くの人が途中参加しやすく、失敗しても再開しやすい目標にすることが重要です。完璧を目指させるより、切れ目なく続けられることを重視する方が、結果として習慣化に近づきます。

継続率を高める工夫2:順位だけでなく、“称賛”の回路をつくる

ランキングはイベントを盛り上げる一方で、下位にいる人にとってはモチベーションを下げる原因にもなります。特に、もともと歩数が伸びにくい人ほど、「頑張っても上位に行けない」と感じやすくなります。

そこでおすすめなのが、順位以外の評価軸を増やすことです。たとえば、

  • 先週より歩数が伸びた人
  • 記録を毎日続けた人
  • チーム内で声掛けをした人
  • 初参加ながら最後まで残った人

といった視点で、社内報やイントラネット、朝礼などで称賛する仕組みを入れると、参加者は「勝てるかどうか」だけでなく、「続けること自体に意味がある」と感じやすくなります。競争だけではなく、承認のサイクルを組み込むことが継続率向上に有効です。

継続率を高める工夫3:イベント後の“日常導線”をつくる

イベントが終わった瞬間に健康行動も止まってしまうのは、イベント中にしか動く理由がなかったからです。継続につなげるには、イベント後も小さく続けられる導線を業務の中に組み込んでおく必要があります。

具体的には、

  • 昼休みの5分ウォークを習慣化する
  • 月1回だけ部署対抗のミニチャレンジを行う
  • 会議前後に立ち上がる時間を設ける
  • イベント参加者の体験談を共有する
  • 短時間のストレッチ動画や運動コンテンツを配信する

こうした「イベント後の着地点」があると、従業員の行動は“特別な期間だけの取組”ではなく、“日常の働き方の一部”へと変わっていきます。

続けやすい設計が、健康経営の成果を変える

健康イベントの成功は、初回の参加率だけで決まりません。真に価値があるのは、そのイベントが従業員の行動や職場文化に少しずつ残っていくことです。

「何人参加したか」だけでなく、「何人が続けられたか」「参加しづらい人も巻き込めたか」という視点で施策を見直すことで、健康経営の質は大きく変わります。

健康施策を「一過性」で終わらせないために

ウェルネスドアでは、健康イベントの企画だけでなく、
その後の継続率を高めるコミュニケーション設計や、短時間で取り組みやすい実践コンテンツの整備、
研修・動画・e-learningを組み合わせた行動変容支援も行っています。

【主な情報源】
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
・WHO「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」
・スポーツ庁「令和6年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」
※記事内では、一般的な職場の健康施策設計の観点から内容を再構成しています。

健康経営コラム 第3弾

歩数競争が逆効果になることも? ウォーキングイベントで“しんどい人”を置き去りにしない設計

監修:ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学

この記事のポイント

  • ウォーキングイベントの競争要素は有効だが、設計次第では運動が苦手な人の離脱を招くことがある。
  • 大切なのは、「勝てる人が頑張る企画」ではなく、「多様な人が参加し続けられる企画」にすること。
  • 合計歩数だけでなく、平均歩数・前週比・継続日数・初参加ボーナスなどを取り入れると、参加しやすさが高まる。
  • 健康経営の観点では、競争の演出以上に、誰一人取り残さない設計こそが重要になる。

ウォーキングイベントを企画する際、チーム戦やランキングは非常に便利な仕掛けです。前回ご紹介したように、仲間とのつながりや“見られている感覚”は、行動の後押しとして大きな力を持ちます。

一方で、その仕掛けが強すぎると、別の課題が生まれることがあります。たとえば、もともと歩く習慣のある人ばかりが上位に入り、運動が苦手な人や忙しい人が「どうせ勝てない」と感じて離脱してしまうケースです。

健康施策の本来の目的は、上位者をつくることではなく、普段あまり健康行動に取り組めていない層も含めて、少しずつ動きやすくすることにあります。今回は、競争のよさを残しながら、置き去りにされる人を減らす設計について考えます。

なぜ、歩数競争は時に逆効果になるのか?

競争は、参加初期のモチベーションにはなります。しかし、差が開きすぎると「自分は向いていない」「頑張っても意味がない」と感じやすくなります。特に、運動経験、業務量、通勤条件、体力、ライフスタイルには個人差があるため、単純な歩数だけで優劣を決める設計は偏りを生みやすくなります。

また、勝敗だけを強く打ち出すと、健康施策でありながら「楽しめる人だけの企画」に見えてしまうことがあります。これでは、健康に無関心な層や、参加への心理的ハードルが高い人にこそ届いてほしい施策が、逆に届かなくなってしまいます。

視点を変える

健康施策で本当に重要なのは、「最も歩いた人」を称えることではなく、「より多くの人が参加し続けられる状態」をつくることです。

工夫1:合計歩数だけでなく、“参加しやすい指標”を入れる

最も分かりやすい改善策は、評価の軸を増やすことです。たとえば、チームの合計歩数だけで競うのではなく、次のような指標を組み合わせると、参加ハードルを下げやすくなります。

  • チーム平均歩数で競う
  • 前週比の伸び率を評価する
  • 継続日数にポイントをつける
  • 初参加者がいるチームにボーナスをつける
  • 途中参加も歓迎し、追いつけるルールにする

こうした工夫によって、「歩数の絶対値が高い人だけが有利」という構図を和らげることができます。特に、平均値や改善率を取り入れると、運動が得意な人だけでなく、これから始める人も参加しやすくなります。

工夫2:“勝つこと”以外にも、参加の意味をつくる

競争を否定する必要はありません。ただし、それだけに頼らないことが大切です。たとえば、

  • 「毎日記録したで賞」
  • 「前回より頑張ったで賞」
  • 「チームを盛り上げたで賞」
  • 「初参加チャレンジ賞」

のように、参加の意味を複線化すると、「上位に入れないから意味がない」という感覚を和らげられます。特に職場の健康施策では、個人の努力だけでなく、周囲への声掛けやチームへの貢献も評価される仕組みのほうが、組織文化として定着しやすくなります。

工夫3:“参加できない人”を前提にした設計にする

健康イベントの設計で見落とされがちなのが、「参加しづらい事情がある人」の存在です。業務で外出が多い人、育児や介護で時間の余裕が少ない人、体調や体力に不安がある人、そもそも健康施策に強い関心がない人など、職場には多様な背景を持つ従業員がいます。

だからこそ、最初から“参加しやすさの幅”を持たせておくことが重要です。たとえば、

  • 歩数以外にストレッチや体操も選べるようにする
  • チームへの貢献方法を複数用意する
  • 1日だけのスポット参加も歓迎する
  • 「できなかった人」を責めない雰囲気を徹底する

この設計があるだけで、健康施策は“健康意識の高い人向けの企画”から、“みんなが少し関われる取組”へと変わっていきます。

誰一人取り残さない設計が、施策の質を高める

健康経営において重要なのは、「一部の積極層が盛り上がること」ではなく、「これまで参加しにくかった人にも選択肢があること」です。イベントの参加率や盛り上がりだけを見ると見落としがちですが、置き去りにされる人が少ないほど、施策の価値は高まります。

ウォーキングイベントは、設計次第で“競争”にも“支援”にもなります。だからこそ、勝敗の演出だけでなく、継続しやすさ・参加しやすさ・心理的安全性まで含めて見直すことが大切です。

「参加しやすさ」まで設計できる健康施策へ

ウェルネスドアでは、健康イベントの企画だけでなく、
無関心層・忙しい層・運動が苦手な層も含めて取り残しにくい制度設計や、
職場に合わせた参加導線づくり、実践コンテンツの企画支援も行っています。

【主な情報源】
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
・WHO「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」
・スポーツ庁「令和6年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」
※記事内では、一般的な職場の健康施策設計の観点から内容を再構成しています。