EXPERT INSIGHT ─ Women's Health & Nutrition
健診で「貧血なし」でも安心できない──
日本人女性の約4割が鉄欠乏状態。
「鉄の貯金」を増やす食事改善3つの鉄則を専門家が解説
「しっかり寝ているはずなのに、朝からぐったり…」「立ち上がるとクラっとすることがある」「理由もなく気分が落ち込み、仕事に集中できない」
そんなつらい不調、単なる「疲れ」や「気力不足」のせいだと思い込んでいませんか?実はその裏に、多くの女性、特に月経のある世代を悩ませる「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」が潜んでいるかもしれません。
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、日本人女性の鉄摂取量はほぼすべての年代で推奨量を下回っており、20〜40代女性の約4割が鉄欠乏状態にあるとされています。会社の健康診断では「貧血は問題なし」と言われた方でも、この「隠れ貧血」に該当するケースは少なくありません。
この記事では、専門家の視点からその正体と、日々の食事でできる改善アプローチを徹底解説します。
Q. 健康診断で貧血は正常なのに、だるさが続くのはなぜですか?
A. 体内の貯蔵鉄である「フェリチン」が不足する「隠れ貧血」の可能性があります。健康診断で測るヘモグロビン(血中の鉄)が正常でも、鉄の貯金(フェリチン)が枯渇していると、疲れやだるさ、めまい、集中力低下など様々な不調が現れます。フェリチン値は通常の健診項目に含まれないため、自覚がないまま鉄不足が進行していることが多いのです。
一般的な健康診断で測定する「貧血」は、血液中のヘモグロビンの値を基準にしています。ヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担う、いわば「今すぐ使える鉄」です。
一方、「隠れ貧血」で問題となるのは「フェリチン」という物質です。フェリチンは、体内に貯蔵されている「予備の鉄」、いわば「鉄の貯金」です。健康診断でヘモグロビン値が正常でも、この「鉄の貯金(フェリチン)」が底をつきかけている状態が「隠れ貧血」なのです。
お金に例えると…
ヘモグロビン = 財布の中の現金
フェリチン = 銀行口座の預金
財布に現金(ヘモグロビン)があっても、預金(フェリチン)がゼロなら、急な出費に対応できず常に不安な状態ですよね。身体も同じで、「鉄の貯金」が少ないと様々な不調が現れ始めるのです。
| 貧血(顕在性) | 隠れ貧血(潜在性鉄欠乏) | |
|---|---|---|
| ヘモグロビン | 低い | 正常 |
| フェリチン | 低い | 低い |
| 健診での発見 | 発見されやすい | 見逃されやすい |
| 自覚症状 | 息切れ・動悸が顕著 | だるさ・集中力低下・気分の落ち込み |
女性は月経による定期的な出血(毎月約30〜60mgの鉄を喪失)、妊娠・出産による鉄需要の急増、過度なダイエットによる摂取不足などにより、この「鉄の貯金」が減りやすい傾向にあります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、月経のある女性の鉄推奨量は1日10.5mgですが、実際の平均摂取量は6.5〜7.5mg程度と大きく不足しています。
もしかして「隠れ貧血」?セルフチェックリスト
当てはまる項目が多いほど、鉄不足の可能性があります。
(医学的な診断ではありません。気になる方は医療機関にご相談ください)
Q. 鉄分を効率よく摂るには、何を食べれば良いですか?
A. まずは吸収率の高い「ヘム鉄」を多く含む、牛肉の赤身やカツオ、レバーなどを意識的に摂りましょう。また、ほうれん草などの「非ヘム鉄」は、ビタミンC(パプリカなど)や動物性たんぱく質と組み合わせることで吸収率がアップします。
鉄不足を解消するには、毎日の食事が基本です。効率よく鉄分を補給するための3つのルールを覚えましょう。
鉄則1|吸収率の高い「ヘム鉄」を積極的に摂る
鉄分には、動物性食品に含まれ吸収率の高い「ヘム鉄」(吸収率15〜25%)と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」(吸収率2〜5%)があります。まずは効率よく吸収されるヘム鉄を意識的に食事に取り入れましょう。
| 食品 | 1食分の目安 | 鉄含有量 |
|---|---|---|
| 豚レバー | 60g | 7.8mg |
| 鶏レバー | 60g | 5.4mg |
| 牛肉(赤身もも) | 100g | 2.7mg |
| カツオ(刺身) | 80g(5切れ) | 1.5mg |
| あさり(水煮缶) | 50g | 15.0mg |
※日本食品標準成分表(八訂)より算出
鉄則2|「非ヘム鉄」は"吸収率アップ"の工夫をする
ほうれん草や小松菜、大豆製品などに含まれる非ヘム鉄は、単体では吸収率が低いですが、ある栄養素と組み合わせることで吸収率が最大6倍にアップします。
鉄則3|鉄の吸収を「邪魔するもの」に注意する
せっかく鉄分を摂っても、吸収を阻害する食品と一緒に摂ると効果が大幅に減少します。
朝食
納豆ごはん+小松菜の味噌汁+オレンジ1/2個
(大豆の非ヘム鉄+ビタミンCで吸収UP)
昼食
牛赤身肉のステーキ+ブロッコリー+トマト
(ヘム鉄の王道+ビタミンCの付け合わせ)
夕食
あさりと豆腐の味噌汁+カツオのたたき+ほうれん草のレモン和え
(ヘム鉄+非ヘム鉄の組み合わせ)
専門家からのアドバイス
食事での改善は基本ですが、フェリチン値が極端に低い場合(12ng/mL未満が鉄欠乏の目安)、食事だけで回復させるには数か月〜半年以上かかることがあります。
つらい症状が続く場合は、必ず医療機関を受診し、フェリチン値の測定を依頼してください。医師の診断のもと、適切な鉄剤の服用や、原因疾患(子宮筋腫による過多月経など)の治療が必要になることもあります。
また、鉄分の自己判断での過剰摂取は肝臓に負担をかけることがあるため、サプリメントの使用は必ず医師に相談してから始めましょう。
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執筆・監修:狩野 学(かりの まなぶ)
ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。
【主な情報源】
【免責事項】本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。鉄分の自己判断での過剰摂取は健康を害する可能性もありますので、サプリメントの使用などについては必ず医師にご相談ください。