Expert Insight — Strategy Map
経産省ガイドブック(2025年3月改訂版)準拠 ──
4STEPの記入で戦略マップが自動生成されるExcelワークシート
「健康経営に取り組んでいるが、施策がバラバラで全体像が見えない」「経営層に健康投資の意義をうまく説明できない」──
こうした課題を解決する鍵が、経済産業省も推奨する「健康経営戦略マップ」です。2025年3月にガイドブックが約10年ぶりに大幅改訂され、戦略マップの重要性はこれまで以上に高まっています。
しかし、解説記事は多くても「記入するだけで完成するテンプレート」は市場にほぼ存在しないのが現状です。本コラムでは、戦略マップの基本から作成手順までを解説するとともに、無料のExcelワークシートを提供します。
📋 本コラムで得られること
✔ 戦略マップとは何か・4層構造の仕組み
✔ 2025年改訂で変わった3つのポイント
✔ 4STEPで作る具体的な作成手順
✔ KGI・KPIの選び方と参考指標リスト
✔ 健康経営度調査(Q17)との接続方法
✔ 無料Excelテンプレート(記入例・自動生成機能付き)
SECTION 01
健康経営戦略マップとは、企業が実施する健康投資施策から、どのような道筋を経て経営目標を達成するのかという「健康投資のストーリー」を見える化するフレームワークです。
「戦略マップは、健康経営の全体像を可視化し、経営層と現場の共通言語として機能する」
── 健康経営ガイドブック(2025年3月版)
単なる「施策の一覧表」ではなく、施策→KPI→KGI→経営課題が一本のストーリーとしてつながっているかを確認・共有するための「設計図」です。経営層との対話、認定申請、人的資本開示の土台としても活用できます。
FRAMEWORK
戦略マップは、以下の4つの層で構成されます。各層が連動することで、健康経営の目的と施策が一貫した流れでつながります。
LAYER 1
経営理念・方針
健康経営を推進する根拠となる経営理念・方針。「なぜ健康経営に取り組むのか」の起点。
LAYER 2
KGI(最終目標指標)
プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、ワークエンゲージメント等の成果指標。
LAYER 3
KPI(管理指標)
意識・行動変容指標(運動習慣者率等)と施策取組状況指標(健診受診率等)の2レベル。
LAYER 4
健康投資施策
KPI改善のための具体的な施策。セミナー、健診後フォロー、ウォーキングイベント等。
戦略マップでは、この4層を左から右へ(施策→KPI→KGI→経営課題)のフローで配置し、「この施策を行えば→この指標が改善し→最終的にこの経営課題が解決される」というストーリーを一枚で可視化します。
SECTION 02
2025年3月、経済産業省協力のもと「健康経営ガイドブック」が約10年ぶりに大幅改訂されました。戦略マップに関する変更点は大きく3つあります。
変更点 ①
経営方針・理念との接続が厳格化
従来は「施策のチェックリスト」になりがちだった戦略マップが、経営理念→KGI→KPI→施策の一貫したストーリーとして構築することが求められるようになりました。「なぜ健康経営なのか」を経営戦略として説明できる設計が必須です。
変更点 ②
KGI(最終目標指標)の設定が必須に
令和7年度の健康経営度調査では、Q17 SQ1で「推進方針」「目標」「KGI」の記載が冒頭で求められるようになりました。KGIを持たない企業は、実質的に高評価を得ることが困難です。
変更点 ③
ストーリー評価と組織風土の重視
単に施策を実施したかではなく、健康投資から「意識変容・行動変容」を経て「KGI達成」に至るロジックのストーリー性が評価されます。また、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)や健康風土の醸成も新たな評価軸として追加されました。
| 項目 | 旧フォーマット | 新フォーマット(2025年版) |
|---|---|---|
| 設計思想 | 施策の羅列でOK | 経営理念→KGI→KPI→施策のストーリーが必須 |
| 目標指標 | KPIのみ | KGI(最終目標指標)の明示が必須 |
| 独自性 | 形式的に作成 | 「100社100様」の独自設計を求める |
| 評価対象 | 健康課題のみ | 人的資本経営・社会的価値・組織風土まで接続 |
| 度調査との接続 | 間接的 | Q17 SQ1で推進方針・目標・KGIを直接記載 |
💡 実務上のインパクト:旧来の戦略マップをそのまま使い回している企業は、令和7年度以降の健康経営度調査で評価が下がるリスクがあります。本テンプレートは2025年改訂版のフレームワークに完全準拠しているため、新基準への対応がそのまま可能です。
SECTION 03
無料テンプレートでは、以下の4STEPの質問に記入していくだけで戦略マップの原案が自動的に整理されます。各STEPの考え方とポイントを解説します。
STEP 1
経営課題の整理
戦略マップの右端に位置する「なぜ健康経営に取り組むのか」を明確にするステップです。経営理念の中から健康経営に関連する要素を抽出し、解決したい経営課題を最大3つまで整理します。
📝 記入項目
① 経営理念(抜粋)── 自社の理念から健康経営に関連する部分
② 健康経営に関連する方針 ── 推進の柱となる方針
③ 推進する背景・目的 ── 「なぜ今」取り組むのか
④ 経営課題(最大3つ)── 健康経営で解決したい課題
⑤ 健康経営との関連性 ── 上記の課題がなぜ健康経営で解決できるのか
💡 ポイント:「従業員の健康増進」は手段であって経営課題ではありません。「離職率の低下」「生産性向上」「採用力強化」「医療費適正化」「エンゲージメント向上」など、経営成果の言葉で書くことが重要です。
STEP 2
健康課題の特定
自社の従業員が抱える健康課題を特定し、STEP1の経営課題との紐付けを行います。テンプレートでは10分類のドロップダウンから選択でき、データ根拠も記入できます。
📊 健康課題の10分類(テンプレートのドロップダウン)
① メンタルヘルス
② 生活習慣病リスク
③ 運動不足・体力低下
④ 食生活の乱れ
⑤ 睡眠の質低下
⑥ 喫煙
⑦ 女性特有の健康課題
⑧ 高年齢従業員の健康
⑨ 長時間労働
⑩ その他(自由記述)
💡 ポイント:健診データ、ストレスチェック結果、医療費データなどの客観的データを根拠として記入すると、戦略マップの説得力が大幅に向上します。「健診有所見率62%」「高ストレス者率18%」のように数値で記載しましょう。
STEP 3
KGI・KPIの設定
戦略マップの中核を担うステップです。最終目標指標(KGI)と、その達成に向けた管理指標(KPI)を設定します。テンプレートでは参考指標リストからドロップダウンで選択でき、独自指標の直接入力も可能です。
🎯 KGI → KPI L1 → KPI L2 の3層構造
KGI達成のために、従業員の行動変容(L1)を促し、そのために施策の取組状況(L2)を管理する、という論理構造です。
KGI(最終目標)
プレゼンティーイズム
アブセンティーイズム
ワークエンゲージメント
離職率 / 医療費
KPI L1(行動変容)
運動習慣者率
喫煙率
睡眠休養者率
高ストレス者率
適正体重維持者率
健康リテラシー
KPI L2(施策取組)
定期健診受診率
SC受検率
特定保健指導実施率
セミナー参加率
産業医面談実施率
有給休暇取得率
💡 ポイント:KGIは1〜3個に絞るのが効果的です。多すぎると焦点がぼやけ、経営層への説明力が落ちます。「現状値→目標値→達成期限」をセットで設定しましょう。テンプレートではこの3項目が自動的に戦略マップに反映されます。
STEP 4
施策設計(健康投資)
STEP2で特定した健康課題を解決し、STEP3のKPIを改善するための具体的な施策を設計します。テンプレートではSTEP2・STEP3の入力内容がドロップダウンに自動連携するため、施策と課題・KPIの紐付けがワンクリックで完了します。
📝 施策ごとの記入項目
① 施策名 ── 何を行うか
② 対象の健康課題 ── STEP2から自動ドロップダウンで選択
③ 対応するKPI ── STEP3から自動ドロップダウンで選択
④ 実施時期・頻度 ── いつ、どのくらいの頻度で
⑤ 予算区分 ── 社内人件費 / 外部委託 / 設備投資 / 福利厚生費 / その他
⑥ 担当部署・担当者 ── 誰が責任を持つか
💡 ポイント:1つの施策が複数のKPIに効果を持つことは珍しくありません(例:ウォーキングイベントは「運動習慣者率」と「ストレス軽減」の両方に寄与)。最も直接的なKPIを1つ選んで紐付けると、戦略マップが読みやすくなります。
STEP 5 — AUTO
戦略マップの自動生成
STEP1〜4の記入が終わると、「戦略マップ」シートに内容が自動的に統合されます。手作業での転記は不要です。
AUTO-GENERATED STRATEGY MAP
施策(STEP4) → KPI L2 → KPI L1 → KGI → 経営課題(STEP1) ───────────── ── ─────────── ── ─────────── ── ──────────── ── ───────────── ストレス研修 → SC受検率 → 高ストレス → プレゼン → 離職率低下 ウォーキング → セミナー → 運動習慣 → アブセン → 生産性向上 禁煙支援 → 保健指導 → 喫煙率 → WE向上 → 採用力強化 … … … … …
✅ 自動反映される内容
・施策名(最大12件)
・KPI L2 / L1(各最大6件)
・KGI(指標名+現状値→目標値)
・経営課題(最大3件)+推進方針
・優先健康課題+経営理念
🖨 活用方法
・経営層へのプレゼン資料として印刷
・健康経営度調査票Q17の回答素材
・認定申請書の添付資料
・人的資本開示の参照資料
・産業医・保健師との方針共有
REFERENCE
テンプレートのSTEP3シートに搭載されている参考指標リスト(17項目)です。ドロップダウンから選択でき、独自指標の直接入力も可能です。
🎯 KGI(最終目標指標)── 5候補
| 指標名 | 説明 |
|---|---|
| プレゼンティーイズム | 健康問題による業務パフォーマンス低下の度合い(SPQ、WFun等で測定) |
| アブセンティーイズム | 傷病による欠勤日数・休職率 |
| ワークエンゲージメント | 仕事に対する活力・熱意・没頭の度合い(ユトレヒト尺度等) |
| 離職率 | 自己都合退職者の割合(経年変化) |
| 医療費 | 一人当たり医療費の推移 |
📈 KPI レベル1(意識・行動変容指標)── 6候補
| 指標名 | 説明 |
|---|---|
| 適正体重維持者率 | BMI 18.5〜25の従業員割合 |
| 運動習慣者率 | 週2回以上・1回30分以上の運動を行う者の割合 |
| 睡眠で十分な休養が取れている者の割合 | 睡眠の質に関する自己評価 |
| 喫煙率 | 現在喫煙している従業員の割合 |
| 高ストレス者率 | ストレスチェックで高ストレスと判定された者の割合 |
| 健康リテラシー | 健康情報の理解・活用に関する自己評価スコア |
📊 KPI レベル2(施策取組状況指標)── 6候補
| 指標名 | 説明 |
|---|---|
| 定期健診受診率 | 法定健診の受診率(目標:実質100%) |
| ストレスチェック受検率 | ストレスチェック受検者の割合 |
| 特定保健指導実施率 | 特定保健指導対象者の実施率 |
| 健康セミナー参加率 | 健康関連セミナー・研修の参加率 |
| 産業医面談実施率 | 長時間労働者等への産業医面談実施率 |
| 有給休暇取得率 | 年次有給休暇の取得率 |
📌 テンプレートでの活用方法:STEP3の入力欄でドロップダウンをクリックすると、上記の指標候補が表示されます。選択するだけで入力完了。もちろん、自社独自の指標を直接入力することも可能です。選択した指標は、戦略マップシートに自動的に反映されます。
SECTION 04
戦略マップは単独の社内資料ではなく、健康経営度調査票の回答を直接支える実務ツールでもあります。特に令和7年度の調査では、Q17 SQ1で「推進方針」「目標」「KGI」の自由記述が冒頭で求められるようになりました。
📝 Q17 SQ1 で問われる内容
「貴社の健康経営の推進方針(健康宣言等)と、その方針に基づく具体的な目標(KGI等)を記入してください。」
※ 令和7年度 健康経営度調査票(大規模法人部門)より要旨
戦略マップ → 調査票への活用ポイント3つ
1
推進方針 → Q17冒頭
STEP1の「健康経営に関連する方針」がそのままQ17 SQ1の推進方針の記入に使えます。
2
KGI → Q17の目標
STEP3のKGI(指標名+現状値→目標値)を転記するだけで、目標の記入が完了します。
3
施策 → Q18以降の下書き
STEP4の施策一覧は、Q18以降の施策回答の下書きとしてそのまま活用できます。
💡 つまり:戦略マップを先に作成しておけば、健康経営度調査の回答作業が大幅に効率化されます。特にQ17は自由記述のため、戦略マップという「設計図」があるかないかで回答の質と速度が大きく変わります。
SECTION 05
多くの企業が陥りがちな失敗パターンと、その具体的な対策をまとめました。
施策の羅列になっていて「ストーリー」がない
「セミナーをやった」「健診受診率を上げた」と施策を並べるだけでは、経営層に「だから何?」と言われてしまいます。
✅ 対策:4層構造で「なぜ(経営課題)→ 何を目指す(KGI)→ 何を測る(KPI)→ 何をやる(施策)」を逆順で設計すると、ストーリーが自然に生まれます。テンプレートはこの順序でガイドします。
KGIとKPIの区別が曖昧
「健診受診率100%」をKGIに設定するケースが散見されますが、これは施策取組状況(KPI L2)であり、最終目標指標ではありません。
✅ 対策:KGI=経営成果(プレゼンティーイズム、離職率等)、KPI L1=行動変容(運動習慣者率等)、KPI L2=施策取組(健診受診率等)と3層を明確に分離しましょう。テンプレートでは入力欄が分かれているため、混同を防げます。
現状値・目標値がない(定性的すぎる)
「従業員の健康意識を向上させる」だけでは、達成したかどうか判断できません。定性的な目標は評価されにくくなります。
✅ 対策:健診データ・ストレスチェック結果・医療費データから数値化しましょう。「高ストレス者率18%→10%(2027年度目標)」のように、現状値→目標値→期限をセットで記載します。テンプレートではこの3項目が入力欄として用意されています。
作って終わり(PDCAが回らない)
戦略マップを一度作成した後、そのまま引き出しにしまってしまうケースは少なくありません。環境変化や施策の効果を反映しなければ、形骸化します。
✅ 対策:STEP4の「評価時期」を必ず設定し、年次で見逆すサイクルを組み込みましょう。健康経営度調査の結果が返却されたタイミングが最適な見直し時期です。テンプレートは自由に編集・更新できます。
担当者1人で抱え込む
戦略マップは本来、経営層・人事・産業保健スタッフが共同で設計するものです。担当者1人で作ると、組織の合意が得られず実行力が弱まります。
✅ 対策:STEP4の「担当部署・担当者」を明記し、経営層の承認を得て組織的に推進する体制を作りましょう。戦略マップシートは印刷して経営会議に持ち込むことを想定した横フロー・ランドスケープ設計です。
SECTION 06
テンプレートには架空企業のフル記入例が搭載されています。「どう書けばいいのか」のゴールイメージとしてご活用ください。
🏭 サンプル企業プロフィール
社名:株式会社ヘルステック・ジャパン(架空)
業種:製造業
従業員数:320名
拠点:東京本社+地方工場2拠点
状況:離職率悪化・メンタル休職増加
目標:2027年 健康経営優良法人認定
| STEP | 記入例のハイライト |
|---|---|
|
STEP1 経営課題 |
理念:「人が資本」— 従業員の心身の健康を守り、持続可能な成長を実現する 課題①:メンタル不調による休職者の増加と離職率の悪化 課題②:プレゼンティーイズムによる生産性の低下 課題③:健康経営の取り組みが採用広報に活かせていない |
|
STEP2 健康課題 |
最優先:メンタルヘルス(高ストレス者率18%、全国平均10%を大幅超過) 次点:生活習慣病リスク(健診有所見率62%、BMI25以上が38%) |
|
STEP3 KGI・KPI |
KGI:プレゼンティーイズム 78%→85%、アブセンティーイズム 4.2日→2.0日 KPI L1:高ストレス者率 18%→10%、運動習慣者率 15%→30% KPI L2:定期健診受診率 95%→100%、SC受検率 88%→95% |
|
STEP4 施策 |
ストレスマネジメント研修(全社・年2回)/ ラインケア研修(管理職)/ ウォーキングチャレンジ / 睡眠改善セミナー / 食生活改善セミナー / 特定保健指導の積極勧奨 |
📌 この記入例はテンプレート内の「記入例(サンプル)」シートに完全版が収録されています。ダウンロードしてExcelで開くと、全項目の記入内容をそのまま確認できます。自社の記入時の参考としてご活用ください。
PRACTICAL MEMO
まず30分で始める3ステップ
A
記入例を眺める
テンプレートをDLして「記入例(サンプル)」シートを開く。完成形のイメージを掴む。
目安:5分
B
STEP1だけ記入する
経営理念と経営課題3つを書いてみる。完璧でなくてOK。まず手を動かす。
目安:15分
C
進捗を確認する
使い方ガイドの進捗サマリーで「📝 入力中」を確認。残り37項目のゴールが見える。
目安:10分
SUPPORT
戦略マップの策定に
サポートが必要な場合は
まずはテンプレートで作成を始めてみてください。
「自社の健康課題の整理が難しい」「KGI・KPIの設定に自信がない」
「経営層への説明資料を一緒に作りたい」——
そうした場面で、外部パートナーとしてお手伝いできます。
オンライン相談対応 | 全国対応
参考文献・出典
・経済産業省「健康経営ガイドブック」(2025年3月改訂版)
・経済産業省「健康投資管理会計ガイドライン」
・ACTION!健康経営(健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト)
・令和7年度 健康経営度調査票(大規模法人部門・中小規模法人部門)
・経済産業省「健康経営の推進について」各種公開資料
免責事項
・本コラムの内容は執筆時点の公開情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。
・認定要件・調査票の最新情報は、経済産業省および ACTION!健康経営 の公式サイトでご確認ください。
・本コラムおよび無料テンプレートの利用により生じた損害について、ウェルネスドア合同会社は責任を負いかねます。
・テンプレートの著作権はウェルネスドア合同会社に帰属します。自社利用目的での使用は無料ですが、再配布・商用転載は禁止します。