「健康に悪いことは分かっているのに、やめる気配がない」――企業の禁煙支援では、そんな“禁煙岩盤層”への対応に悩むことが少なくありません。
しかし、ここで重要なのは、正論を強くぶつけることではありません。 むしろ行動科学の観点では、本人の中にある『やめたい気持ち』と『まだ吸いたい気持ち』の両方を丁寧に見える化することが、次の一歩につながりやすいと考えられています。
そこで有効なのが、「喫煙を続けることで、本人は何を得ているのか」「その一方で、何を失っているのか」を整理するアプローチです。これは単なる思いつきではなく、禁煙支援や行動変容支援で用いられてきた考え方と整合する、科学的に筋の通った方法です。
喫煙習慣は、単に「身体に悪いからやめるべき」という一言では動かないことが多い行動です。なぜなら本人の中では、喫煙が一時的な落ち着き、休憩のきっかけ、仕事の切り替え感、人付き合いの接点などとして機能している場合があるからです。
一方で、その裏側では、体力や回復力の低下、咳・息切れ、睡眠や集中の質への影響、出費、家族や周囲との距離など、見過ごされやすい“損失”も積み重なっています。
重要なのは、支援者が「だからやめるべき」と結論を押しつけることではありません。まずは本人が、喫煙によって自分は何を得ていると思っているのか、そして実際には何を失っているのかを、言葉にして並べてみることです。ここで初めて、本人の中にある“違和感”や“ズレ”が見えてきます。
これは、禁煙支援で用いられる「メリット・デメリットの整理(意思決定バランス)」という考え方と一致します。人は、頭ごなしに否定されると防御的になりますが、自分で整理して、自分で気づいたことには動きやすくなります。
このアプローチの中心にあるのは、意思決定バランス(Decisional Balance)と呼ばれる考え方です。喫煙に関する研究では、喫煙の「良い面」と「悪い面」の捉え方が、禁煙に向かう段階の違いを反映し、将来の喫煙状況の予測にも役立つことが示されてきました。
また、禁煙支援で有名な動機づけ面接(Motivational Interviewing)では、喫煙者が抱える「やめたいけれど、今は難しい」という両価性に焦点を当てます。大切なのは、正論で追い詰めることではなく、本人の価値観や言葉を引き出しながら、変化に向かう発言を少しずつ増やしていくことです。
人は、他人に説得された時よりも、自分の口で理由を語れた時の方が動きやすいものです。禁煙支援で重要なのは、外から強く押すことではなく、本人の中にある「変わる理由」を見つけやすくすることです。
さらに行動経済学では、一般に人は「得られるもの」よりも「失うもの」に強く反応しやすいとされます。そのため、「禁煙したら健康になる」という未来の利益だけでなく、喫煙を続けることで、すでに何が削られているかを見つめ直すことにも意味があります。
禁煙岩盤層と呼ばれる人ほど、これまでに何度も「やめた方がいい」と言われてきています。そのため、支援の場で再び強い説得を受けると、表面上は聞いていても、内面では反発や回避が起こりやすくなります。
こうした層に対しては、最初から「禁煙」をゴールとして迫るよりも、“今の喫煙は自分にとって本当に割に合っているのか”を一緒に整理する方が現実的です。これは、支援を受ける本人の自尊感情を守りながら、変化への入り口を作る方法でもあります。
・「落ち着く」と感じているが、実際にはニコチン切れの不快感を一時的に解消しているだけかもしれない
・「休憩になる」と感じているが、吸えない場面では逆に集中が乱れやすくなっているかもしれない
・「人間関係のきっかけ」と感じているが、家族や非喫煙者との距離が生まれているかもしれない
・「自分の自由」と感じているが、実際には“吸わないと落ち着かない”状態に行動を縛られているかもしれない
企業が禁煙支援を行う際に大切なのは、「喫煙者を追い込む施策」ではなく、「本人が考えやすくなる施策」にすることです。特に研修や個別支援では、以下のような問いが有効です。
1.タバコを吸うことで、今の自分は何を得ていると感じますか?
2.その“得られているもの”は、どのくらい長続きしますか?
3.一方で、吸い続けることで失っているものは何だと思いますか?
4.仕事、体調、睡眠、お金、家族との関係で考えると、どこに影響が出ていますか?
5.今すぐやめるかどうかは別として、タバコとの付き合い方を少し見直すとしたら、何から始められそうですか?
ポイントは、答えを誘導しすぎないことです。支援者が期待する答えを言わせるのではなく、本人の中にある本音を引き出し、整理することが目的です。
その結果、「今はやめるつもりはない」という人であっても、本数の見直し、吸わない時間帯をつくる、禁煙外来やニコチン代替療法の情報を受け取ってみるなど、小さな一歩につながることがあります。
禁煙岩盤層への支援では、支援者が一方的に正しい答えを伝えるだけでは、かえって抵抗を強めてしまうことがあります。
だからこそ、「喫煙を続けることで何を得ているのか」「その代わりに何を失っているのか」を本人の視点で整理することに価値があります。これは、相手を責める方法ではなく、相手が自分の行動を自分で見直せるようにする方法です。
禁煙支援の本質は、単に「やめなさい」と伝えることではありません。本人が“変わる理由”を自分の言葉で見つけられる状態をつくることこそが、行動変容の第一歩になります。
ウェルネスドアでは、単なる健康情報の提供ではなく、
“本人の行動につながる支援設計”を重視した禁煙セミナー・健康支援をご提供しています。
健康経営、世界禁煙デー施策、保険者向け支援、職場研修のご相談も可能です。
【免責事項】
本記事は、禁煙支援や行動科学に関する一般的な情報提供を目的としています。喫煙状況、依存の程度、既往歴、精神的ストレス、治療歴などにより、適切な支援方法は異なります。禁煙治療や健康上の不安がある場合は、医療機関や専門職へご相談ください。
【主な情報源】
・厚生労働省「禁煙支援マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/index.html
・厚生労働省「禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/addition.html
・国立がん研究センター がん対策研究所「動機づけ面接法を禁煙支援に活かそう」
https://pod.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/project/kinen-nurse/behavsci3.html
・Cochrane「動機づけ面接は禁煙に有効か?」
https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD006936_does-motivational-interviewing-help-people-quit-smoking
・Velicer WF, DiClemente CC, Prochaska JO, Brandenburg N. Decisional balance measure for assessing and predicting smoking status. Journal of Personality and Social Psychology. 1985.
https://doi.org/10.1037/0022-3514.48.5.1279
・Tversky A, Kahneman D. Loss Aversion in Riskless Choice: A Reference-Dependent Model. Quarterly Journal of Economics. 1991.
https://www.jstor.org/stable/2937956
※本コラムは、2026年3月25日時点で確認できる公開情報に基づいて作成しています。
禁煙支援というと、「身体に悪いのだから、すぐやめるべき」と強く伝えることが有効だと思われがちです。
しかし実際には、強い正論や押しつけが、かえって相手の反発を招き、行動変容から遠ざけてしまうことがあります。特に、これまで何度も禁煙を勧められてきた“禁煙岩盤層”では、その傾向がより強くなりやすいと考えられます。
そこで重要になるのが、「正しいことを強く言う」ことよりも、「相手が自分で考えやすくなる関わり方をする」ことです。このコラムでは、禁煙支援で反発を減らしやすい声かけの考え方を、行動科学の視点からわかりやすく整理します。
喫煙者の中には、たばこの害をまったく知らない人は多くありません。むしろ、「身体に悪いことは分かっている」「家族にも言われている」「本当はやめた方がいいと思っている」という人は少なくありません。
それでも行動が変わらないのは、知識が足りないからではなく、依存、習慣、ストレス対処、環境、人間関係、失敗経験などが複雑に絡んでいるからです。そこに対して、「やめるべきです」と正面から迫るだけでは、本人は責められたように感じ、かえって身構えてしまうことがあります。
相手にとって耳の痛い内容であっても、受け止めやすい形で伝えられれば考える余地が生まれます。反対に、正しい内容でも、命令・説教・評価のように伝わると、相手は自分を守るために反発しやすくなります。
禁煙支援では、このような反応を減らすために、相手の自律性や価値観を尊重しながら関わることが重視されます。特に「今すぐ禁煙しなさい」という言い方は、本人の中にある“まだ変わりたくない理由”を強めてしまうことがあります。
国立がん研究センターの禁煙支援解説では、禁煙支援において知っておきたい人の性質として、「正したい反射」や「心理的防衛」が挙げられています。支援者は「それは間違いだから直したい」と反射的に思いやすい一方、受け手は強い説得を受けるほど防御的になりやすい、という考え方です。
そのため、禁煙支援では、相手を論破することよりも、相手の中にある両価性(やめたい気持ちと、やめたくない気持ち)を丁寧に扱うことが重要とされています。
禁煙指導者研修の研究では、警告・説得・忠告を中心とした権威的な面接では、行動変容の重要度や自信度が上がりにくく、逆に動機づけ面接的な関わりでは、重要度や自信度が上昇しました。さらに、動機づけ面接的な関わりの後に権威的な関わりを受けると、重要度や自信度が低下したという結果も報告されています。
こうした知見は、「禁煙支援では、何を伝えるか」だけでなく、「どう関わるか」そのものが結果に影響することを示しています。
一方で、動機づけ面接そのものの禁煙アウトカムに関するエビデンスは一様ではなく、レビューでは低確実性とされる部分もあります。そのため実務上は、“必ず禁煙成功率を大きく上げる魔法の話法”としてではなく、“反発を減らし、本人の準備性を高めるための有力な関わり方”として活用するのが適切です。
反発を減らすためには、相手を追い込まないことが大切です。禁煙支援では、次のような関わり方が基本になります。
1.開かれた質問を使う
「なぜやめないのですか?」ではなく、「タバコについて今はどんなふうに考えていますか?」のように、相手が自由に話せる問いにします。
2.共感・聞き返しを入れる
「ストレスが強いと、吸いたくなる感じがあるのですね」と、まず相手の体験を受け止めます。
3.許可を得て情報提供する
「もしよければ、禁煙外来や貼り薬のことを少しお伝えしてもいいですか?」のように、押しつけずに伝えます。
4.小さな変化を一緒に探す
「いきなり完全禁煙でなくても、まずは吸わない時間帯をつくるとしたらどうでしょう」と、取り組みやすい一歩に落とします。
厚生労働省の禁煙支援マニュアルでも、短時間支援や標準的支援の実践、フィードバック文例集、お役立ちセリフ集、喫煙者用ワークシートなどが示されており、禁煙支援が“ただ注意すること”ではなく、会話の設計が重要な支援であることが分かります。
・「タバコは身体に悪いんだから、もうやめましょう」
・「それだけ言われてまだやめないのは問題ですよ」
・「家族のためにも今すぐ禁煙すべきです」
・「やる気があるなら、もうやめられるはずです」
・「タバコについては、今どんなふうに考えておられますか?」
・「やめたい気持ちもある一方で、今は難しい感じもあるのですね」
・「もし差し支えなければ、少し情報をお伝えしてもいいですか?」
・「今すぐ完全にやめるかどうかは別として、付き合い方を少し見直すとしたら何ができそうですか?」
国立がん研究センターの解説でも、特に「禁煙」という言葉そのものが心理的防衛を生みやすい場合があるため、「タバコとの付き合い方を見直す」「1日だけ試してみる」「タバコを休む練習をしてみる」といった表現が紹介されています。
重要なのは、言葉をやわらかくすることだけではありません。相手の選択権を奪わず、考える余地を残すことが、反発を減らす本質です。
企業で禁煙施策を進める際にありがちなのが、「健康に悪い」「医療費が増える」「生産性に影響する」といった正論を前面に出しすぎることです。これらは大切な視点ですが、それだけでは喫煙者の心は動きにくいことがあります。
そこで有効なのが、“禁煙を強く迫る場”ではなく、“本人が自分の状況を整理できる場”として研修や面談を設計することです。たとえば、喫煙のメリットとデメリットを書き出してみる、吸いたくなる場面を可視化する、少しだけ吸わない時間を試す、禁煙外来の情報を選択肢として紹介する、といった支援です。
1.タバコは今の自分にとって、どんな役割を持っていますか?
2.その役割は、他の方法で少し置き換えられそうでしょうか?
3.やめたい気持ちが少しでもあるとしたら、どんな理由がありますか?
4.吸い続けることで困っていることはありますか?
5.今すぐ禁煙ではなくても、まず一歩だけ変えるなら何ができそうですか?
このような問いは、相手の本音や価値観を引き出しやすく、支援する側も“押しつけ”に陥りにくくなります。禁煙岩盤層への対応ほど、相手を変えようと急がない姿勢が重要になります。
禁煙支援では、強く言えば相手が動くとは限りません。むしろ、“正しさ”を押しつけすぎるほど、相手は防御的になり、自分の行動を守ろうとしやすくなります。
だからこそ、禁煙岩盤層への支援では、「禁煙しなさい」と言う前に、相手の話を聞き、両価性を認め、本人の言葉で変化の理由を見つけてもらうことが大切です。
行動を長続きさせるのは、外からの圧力よりも、本人の中で生まれた納得です。禁煙支援の質は、伝える知識の量だけでなく、相手が安心して本音を話せる関わり方ができるかどうかで大きく変わります。
ウェルネスドアでは、単に喫煙の害を伝えるだけではなく、
“本人の行動につながりやすい関わり方”を重視した禁煙セミナー・健康支援をご提供しています。
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【免責事項】
本記事は、禁煙支援や行動科学に関する一般的な情報提供を目的としています。喫煙状況、依存の程度、既往歴、精神的ストレス、治療歴、職場環境などにより、適切な支援方法は異なります。禁煙治療や健康上の不安がある場合は、医療機関や専門職へご相談ください。
【主な情報源】
・国立がん研究センター がん対策研究所「動機づけ面接法を禁煙支援に活かそう」
https://pod.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/project/kinen-nurse/behavsci3.html
・厚生労働省「禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/addition.html
・厚生労働省「禁煙支援マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/index.html
・加濃正人ほか「禁煙指導者研修における動機づけ面接法の『2つのやり方練習』の有用性について」
http://www.nosmoke55.jp/gakkaisi/201006/gakkaisi1006_79.pdf
・大野佳子ほか「動機づけ面接法が禁煙の開始・継続に及ぼした影響およびスーパービジョンの役割」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstc/18/3/18_70/_article/-char/ja
・Cochrane「動機づけ面接は禁煙に有効か?」
https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD006936_does-motivational-interviewing-help-people-quit-smoking
※本コラムは、2026年3月25日時点で確認できる公開情報に基づいて作成しています。
禁煙支援というと、「やめるなら、きっぱりゼロにしないと意味がない」と考えられがちです。もちろん、最終的な目標として禁煙を目指すことは重要です。
しかし、これまで何度も禁煙を勧められても動かなかった“禁煙岩盤層”に対して、最初から完全禁煙だけを求めると、かえってハードルが高くなり、「自分には無理だ」と感じさせてしまうことがあります。
そこで大切なのが、“今すぐ完全禁煙するか、しないか”の二択ではなく、まずは小さな一歩を見つけることです。 行動科学の視点では、人は大きな変化をいきなり起こすよりも、自分にとって現実的な変化から始める方が、次の行動につながりやすいと考えられています。
禁煙支援では、「やめる意思がないように見える人」にどう関わるかが難しい課題です。ですが実際には、まったく何も感じていないわけではなく、 「本当はやめた方がいいと思う」「でも今は難しい」という両価性を抱えている人が少なくありません。
このような状態の人に、最初から大きな変化を求めると、本人の中では 「そんなことは分かっている」「でも今は無理」「だから自分はダメだ」 という流れが起きやすくなります。 結果として、禁煙の話題そのものを避けたくなったり、支援を受けること自体に距離を置いてしまうことがあります。
禁煙岩盤層に必要なのは、最初から「完全にやめる覚悟」を迫ることではありません。 まずは、今より少しだけ変えるとしたら何ができそうかを一緒に見つけることが、行動変容の入口になります。
これは甘い対応ではありません。むしろ、行動変容を一段ずつ進めていくための、非常に現実的な支援の考え方です。
行動変容理論では、人が健康行動を変える過程は、 無関心期 → 関心期 → 準備期 → 実行期 → 維持期 のように段階的に進むと考えられています。
つまり、今まだ「禁煙する」と決めていない人に対して、いきなり実行期レベルの行動を求めても、かみ合いにくいのです。 その人に必要なのは、まず無関心期から関心期へ、あるいは関心期から準備期へと、一段階進むことかもしれません。
禁煙支援では、最初の目標を「完全禁煙」だけに置くのではなく、 関心を持つ、情報を受け取る、試しに変えてみるといった段階的な変化も前進として捉えることが重要です。
また、WHOなどで用いられる短時間支援の考え方では、禁煙の準備が十分でない人に対して、 Relevance(自分との関連)、 Risks(リスク)、 Rewards(報酬)、 Roadblocks(障壁)、 Repetition(繰り返し) を整理しながら、禁煙への動機づけを高めていく方法が示されています。
ここでも共通しているのは、今すぐ一気に変えることよりも、 本人が次の段階へ進めるように支えることです。
小さな一歩とは、必ずしも「本数を減らす」だけではありません。 本人が「これならやれそう」と思える行動であれば、それは立派な入口になりえます。
・朝一番の1本を、少しだけ遅らせてみる
・「仕事の合間に必ず吸う」を見直し、1回だけ別の休憩行動に変えてみる
・吸いたくなる場面や時間帯を、自分で記録してみる
・「吸わない場所」を一つ決めてみる
・禁煙外来や補助薬の情報を、受け取るだけ受け取ってみる
・「今の自分にとって禁煙がどのくらい重要か」を、0〜10点で考えてみる
ポイントは、本人の自己効力感を傷つけないことです。 「どうせできない」と感じている人にとって、最初の成功体験はとても重要です。 たとえ小さなことでも、「やってみたら少しできた」という感覚は、次の行動の土台になります。
企業の禁煙施策では、「禁煙宣言」や「完全禁煙キャンペーン」のように、最終目標を前面に出した取り組みが目立つことがあります。 もちろん、その方向性は重要です。 ただし、禁煙岩盤層に対しては、それだけでは届きにくいことがあります。
そこで有効なのが、“今すぐ完全禁煙しない人でも参加しやすい支援設計”です。 例えば、セミナー後にすぐ禁煙外来受診を求めるのではなく、 まずは情報を受け取る、セルフチェックをする、吸いたくなる場面を見直すといった、 前段階の行動も支援対象に含めることです。
1.セミナーでまず「自分との関係」を考えてもらう
2.希望者には禁煙外来・補助薬・相談先の情報を案内する
3.「今月はここだけ変えてみる」という小さな目標を設定してもらう
4.事後フォローで、できたことを振り返り、次の一歩を考える
このように、支援の間口を広げることで、「禁煙する気はないから関係ない」と感じている人にも届きやすくなります。 結果として、企業全体としての禁煙支援施策の実効性も高めやすくなります。
禁煙岩盤層への支援では、「完全禁煙だけが正しいゴール」と考えすぎると、かえって支援の入り口を狭めてしまうことがあります。
もちろん、最終的には禁煙を目指すことが望ましいでしょう。 ですが、その最初の一歩は、もっと小さくて構いません。 むしろ、本人にとって現実的で、少し手が届く行動から始めることが、 長い目で見ると最も確かな前進になることがあります。
禁煙支援の本質は、「すぐやめさせること」ではなく、 本人が自分で変われる状態を少しずつつくっていくことです。 禁煙岩盤層ほど、その“少しずつ”を大切にした支援設計が求められます。
ウェルネスドアでは、禁煙セミナーを単なる知識提供で終わらせず、
「本人が動ける入口をどうつくるか」まで含めて支援設計を行っています。
健康経営、世界禁煙デー施策、保険者向け支援、職場研修のご相談も可能です。
【免責事項】
本記事は、禁煙支援や行動科学に関する一般的な情報提供を目的としています。喫煙状況、依存の程度、既往歴、精神的ストレス、治療歴、生活環境などにより、適切な支援方法は異なります。禁煙治療や健康上の不安がある場合は、医療機関や専門職へご相談ください。
【主な情報源】
・国立がん研究センター「動機づけ面接法を禁煙支援に活かそう」
https://pod.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/project/kinen-nurse/behavsci3.html
・WHO「Toolkit for delivering the 5A’s and 5R’s brief tobacco interventions in primary care」
https://www.who.int/publications/i/item/toolkit-for-delivering-5as-and-5rs-brief-tobacco-interventions-in-primary-care
・厚生労働省「禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/addition.html
・大野佳子ほか「動機づけ面接法が禁煙の開始・継続に及ぼした影響およびスーパービジョンの役割」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstc/18/3/18_70/_article/-char/ja
・Prochaska JO, Goldstein MG. Process of Smoking Cessation: Implications for Clinicians. Clinics in Chest Medicine. 1991.
※本コラムは、公開時点で確認できる一般公開情報に基づいて作成しています。