EXPERT INSIGHT ─ Women's Health & Femtech

「フェムテック」で変わる!
企業が取り組むべき
女性の健康課題とその対策

女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円──
「環境」「知識」「テクノロジー」の3ステップで組織の生産性を底上げする

この記事のポイント

  • 女性特有の健康課題(PMS・更年期・不妊治療・婦人科がん)による経済損失は年間約3.4兆円(経済産業省 令和6年試算)
  • 月経随伴症だけで約5,700億円の労働損失。約8割の女性が症状を我慢して働いている
  • 令和7年度 健康経営度調査で女性の健康課題が評価項目として大幅強化──PMS低用量ピル費用補助が新設
  • 「環境整備」「リテラシー向上」「フェムテック活用」の3ステップで、明日から実装可能

「最近、パフォーマンスが安定しない女性社員がいる…」──その不調の原因は、本人のやる気の問題ではなく、ホルモンバランスの変化によるものかもしれません。

経済産業省の令和6年の試算では、女性特有の健康課題(月経随伴症・更年期症状・婦人科がん・不妊治療)による経済損失は年間約3.4兆円。月経随伴症だけでも約5,700億円の労働生産性損失が発生し、2025年の調査では約8割の女性が症状を我慢しながら働いている実態が明らかになっています。

女性従業員の健康サポートは、今や企業の成長に欠かせない「戦略」です。この記事では、企業が取り組むべき具体的な課題と、「フェムテック」を含む最新の対策を解説します。

Q. なぜ企業が「女性の健康課題」に取り組む必要があるのですか?

A. 女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円。生産性向上・人材定着に直結し、令和7年度の健康経営度調査でも評価項目が大幅強化されたためです。日本全体で取り組めば最大1.1兆円のポジティブインパクトが期待されています。

第1部:なぜ今、「女性の健康」が経営課題なのか?

女性の健康課題への取り組みは、単なる福利厚生ではありません。企業の持続的な成長に不可欠な経営課題です。

健康経営認定の評価項目が大幅強化

令和7年度の健康経営度調査では、Q48(知識提供)・Q49(行動促進)で女性特有の健康課題への取組状況を詳細に回答する設問が設置。さらにPMS低用量ピル費用補助が新設項目として追加され、Q39では「更年期症状・障害(男女問わず)」が従業員教育テーマに新規追加されました。

人材定着とD&Iの推進

特に40代以降の経験豊富な女性社員が更年期症状で離職するケースは少なくありません。更年期症状による経済損失は年間約1.9兆円、その最大の要因は離職(約1.0兆円)です。健康支援は人材流出を防ぎ、多様性のある組織づくりに直結します。

生産性の向上──最大1.1兆円のポジティブインパクト

全従業員が心身の不調なくパフォーマンスを発揮できる環境は、組織全体の生産性を底上げします。経済産業省の試算では、日本全体で女性特有の健康課題に取り組んだ場合、最大1.1兆円以上の経済効果が見込まれています。

第2部:管理職なら知っておきたい。代表的な健康課題

月経随伴症

5,700億円/年

労働損失額

更年期症状

1.9兆円/年

経済損失額

不妊治療

1.4兆円/年

経済損失額

課題① 月経随伴症状(PMS / PMDD)

腹痛や頭痛といった身体的な症状だけでなく、集中力の低下、イライラ、気分の落ち込みなど精神的な症状も業務に大きく影響します。2025年調査では約8割が症状を我慢し、月経時のパフォーマンスは平均約40%低下。年間約19日間、本来の力を発揮できていません。婦人科を受診している人はわずか9.6%にとどまります。

課題② 更年期症状

ほてり、めまい、不眠、急な発汗、関節痛、不安感など症状は非常に多様です。特に40代以降の管理職やベテラン層が直面する問題であり、パーソル総研(2024)の調査では40-50代正社員の男女とも約4割が症状を保有。要長期治療レベルでも約4割が自覚なし、上司に相談している人はわずか1割です。

課題③ 不妊治療と仕事の両立

正規雇用の女性でも約2割が離職。経済損失は最大年間1.4兆円にのぼります。予測不能な通院スケジュール、「言えない」孤独感、職場の無理解という3つの壁が、経験豊富な人材のキャリア断絶を招いています。

Q. 最近よく聞く「フェムテック」とは何ですか?

A. 「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことです。体調記録アプリ、オンライン婦人科相談、ウェアラブルデバイスなどがあり、企業が福利厚生として導入するケースが急増しています。経済産業省も「フェムテック等サポートサービス実証事業」を通じて企業導入を後押ししています。

第3部:明日からできる!3ステップの対策

経済産業省は、企業の支援策を「理解促進」→「働き方の調整」→「積極投資」の3段階に整理しています。いきなり制度を作るのではなく、まず「理解」から始めることが成功の鍵です。

STEP 1:ソフト(知識)を共有する──すべての出発点

最も重要かつ最初に取り組むべきは、正しい知識を全従業員で共有することです。当事者だけでなく、特に男性管理職や同僚が症状について理解することで、ハラスメントを防ぎ、適切な配慮ができるようになります。

  • 専門家による全従業員向けリテラシー向上セミナーの実施(経産省も「特に男性への理解促進が重要」と明記)
  • 管理職向け研修で「性差に配慮した職場環境づくり」を学ぶ(令和7年度調査Q38の新設項目に対応)
  • PMSが「甘え」ではなくホルモン変動に起因する「疾患」であることを科学的に理解する場の提供

STEP 2:ハード(環境・制度)を整える

理解が浸透したら、次は「使いやすい制度」を整備します。

  • フレックスタイム・リモートワーク:急な体調変化や通院に対応。「生理2日目は満員電車が辛くて休んでいた人が、在宅なら働ける」ケースは多い
  • 時間単位有給休暇:「半休を取るほどではない」数時間の不調・通院に最適
  • 休養室・仮眠室:体調が辛い時に一時退避できるスペースの確保
  • 相談窓口(EAP)の設置と周知:プライバシー保護を明示し、匿名性の高い仕組みが利用率向上の鍵

STEP 3:テクノロジー(フェムテック)を活用する

「フェムテック」を福利厚生として導入・補助することで、従業員が気軽に自身の健康と向き合うきっかけを作れます。

  • 体調記録・月経管理アプリ:自身のサイクルを可視化し、不調の予測と対策が可能に
  • オンライン婦人科相談サービス:通院のハードルを下げ、婦人科受診率(現状わずか9.6%)の向上に貢献
  • PMS低用量ピル費用補助:令和7年度 健康経営度調査Q49に新設。先行導入で認定評価にも直結
  • 更年期症状チェックツール:「自分が更年期だと自覚していない」約4割の当事者の気づきを促進

まとめ

女性の健康課題への対策は、一部の従業員のためのものではありません。それは、職場全体の心理的安全性を高め、誰もが最高のパフォーマンスを発揮できる環境をつくる、未来への投資です。

「知識の共有」で理解を広げ、「環境・制度」で支え、「フェムテック」で後押しする。
この3ステップが、組織の生産性を底上げし、最大1.1兆円のポジティブインパクトを生み出します。

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執筆・監修:狩野 学(かりの まなぶ)

ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。

【主な情報源】

  • 経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)
  • 経済産業省「健康経営度調査 調査票(令和7年度版)」
  • 経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業」
  • あすか製薬「働く女性を対象とした月経随伴症状のセルフケアに関する実態調査」(2025年)
  • パーソル総合研究所「更年期の仕事と健康に関する定量調査」(2024年12月)
  • 厚生労働省「令和3年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」

【免責事項】本記事の内容は、公開日時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的としています。記事内で言及した症状や健康課題については、必要に応じて専門の医療機関にご相談ください。