健康施策を検討するとき、企業では「次はどんなテーマがいいか」という発想になりやすいものです。 しかし実際には、テーマそのものは悪くなくても、施策として動きにくいケースが少なくありません。 私はその理由を、テーマ不足ではなく「設計不足」にあると考えています。 誰に、何を、どのような形で届けるのか。会社として何を解決したいのか。受け手にとって現実的で親切な提案になっているのか。 こうした整理がないままテーマだけを追いかけても、健康施策は動きにくいままです。
健康施策の相談を受けていると、「テーマ自体は悪くないのに、これでは動きにくい」と感じることがあります。 その多くは、研修や施策の目的が曖昧で、参加対象者に対してどんな健康課題や働き方由来の問題を解決したいのかが、十分に整理されていない状態です。
特に、世の中の流行や最新トレンドを追いすぎたテーマ設定は注意が必要です。 一見すると参加率が上がりそうに見えても、それが自社の従業員に本当に必要な内容と噛み合っていなければ、 ただの情報提供で終わってしまい、時間やコストをかけた施策としては動きにくくなります。
つまり、健康施策は「何のテーマがいいか」だけで決まるわけではなく、 そのテーマが会社の方向性や従業員の健康課題と結びついているかどうかで、動き方が大きく変わります。
施策がうまく動きそうだと感じる相談には共通点があります。 それは、会社の労働環境や職種に最適化された健康課題に対して、 何を解決したいのかが明確であることです。
たとえば、健康診断の結果が出揃ったタイミングで、 自社内に多い健康課題の方向性に対して、タイムリーな情報発信や施策を設計するケースは非常に動きやすいです。 その会社の状況に対して、今このテーマをやる意味がはっきりしているからです。
施策が動く会社は、テーマの新しさではなく、 「自社の現状にとって、いま何が必要か」を判断基準にしています。
健康施策を考えるとき、私が最初に整理すべきだと考えているのは、 参加者に最適化された健康課題にフィットしているかどうかです。 それと同時に、発信側からの押し付けになっていないかも非常に重要です。
会社や管理者側が発信したいメッセージだけで内容を固めるのではなく、 従業員側のニーズ調査や現場感を踏まえて、その両方がバランスよく融合しているかどうかを見ます。
健康施策は、会社として伝えたいことと、受け手が本当に必要としていることが重なったときに、 初めて“動く形”になりやすいと考えています。
企業担当者は「何のテーマがいいか」に意識が向きやすいのですが、 私はそこに少し違和感を持つことがあります。 本来先に考えるべきなのは、会社として何を解決したいのか、 従業員のどんな健康課題に向き合うべきなのか、という点だからです。
流行やトレンドを取り入れることで参加率が上がりそうに見えることもあります。 しかし、それだけではSNSやテレビの情報発信と大きく変わらなくなってしまいます。 企業がわざわざ時間とコストをかけて健康施策を実施する意味は、 自社に最適化された課題に向き合い、行動変容につながる形に整理することにあるはずです。
健康経営の文脈に沿った施策項目を、一度の研修で全部網羅しようとするケースは少なくありません。 ですが、ひとつのカテゴリーの中でも様々な方向から情報を詰め込みすぎると、 かえって専門家の言葉に迷いが生じたり、ひとつの情報を丁寧に深掘りできなくなったりします。
その結果、事業者や受講者に対して、意図しないメッセージや極端なメッセージが伝わりやすくなり、 専門的な発信としての信頼性を保ちにくくなることがあります。
私は、1回の研修や1本のコンテンツで伝えるメッセージは、できるだけ絞るべきだと考えています。 健康施策の価値は、情報量ではなく「何を一番届けるのか」が明確であることにあるからです。
私が考える「受け手にとって親切な健康施策」とは、 ライフスタイル、働き方、所得水準、地域性、社会的背景まで含めて、 その人たちに最適化された具体的で現実的な提案になっているものです。
たとえば、コンビニ食でバランスのよい食事を考える研修をするとしても、 理想だけを追い求めると、実際には一食あたりのコストが高くなりすぎて継続できないことがあります。 そうなると、専門家としては正しい提案でも、受け手にとっては現実的でないアドバイスになります。
大切なのは、どこは妥協できて、どこは譲れないのか、 どこに気をつけると全体のバランスが整うのかを見極めることです。 100点を求めるのではなく、その企業や従業員にとって続けられる形を設計することが重要です。
健康研修や動画制作の仕事では、さまざまな産業・職種の方に向けた設計を行います。 そこで重要なのは、参加対象者がどのような働き方をしていて、 どんなストレスがあり、どんな生活習慣を送っているかを、専門家がきちんと把握していることです。
たとえば、同じ会社でも、本社勤務のオフィスワーカーと、製造現場で働く方とでは、 同じテーマでも現実的に受け取れるアドバイスは変わります。 ある人には実行可能でも、別の人には現実的ではないということが起きます。
だからこそ私は、依頼主の産業・職種・働き方・生活背景まで含めて理解したうえで、 専門家と一緒に設計することが、噛み合う施策には欠かせないと考えています。
健康施策がマンネリ化したり、何をやればよいか分からなくなったとき、 つい最新の健康情報やメディアのトレンドに目が向きがちです。 しかし、本当に必要なのは、流行に振り回されることではなく、 自社の従業員に最適化された施策は何かを現場ベースで考えることです。
私は、良い話を聞いたで終わるのではなく、 「これならできそうだ」「これならやってみたい」と思える、 行動変容につながる動く形まで落とし込むことが大事だと考えています。
健康施策は、正しさだけではなく、実行可能性で考える。 その設計ができて初めて、テーマは施策として動き始めます。
ウェルネスドア合同会社 代表/健康経営実装アドバイザー。 約18年間、フィットネス・スポーツ領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康サービスを本格展開。 現在は、健康経営コンサルティング、健康セミナー、動画・eラーニング、OEM・協業支援などを通じて、 企業・団体の健康課題を“実装可能な施策”へ翻訳する支援を行っています。
参加率を上げたい、マンネリ化を見直したい、流行ではなく自社に合う施策を考えたい―― そうした健康施策のご相談は、テーマ選びより前の整理から始めることで、動きやすくなります。