2026年度 健康経営認定対応 | 性差に配慮した職場づくり
📊 この記事の注目データ
「生理痛で集中できないけど、言い出せない」「部下の体調が悪そうだけど、どう声をかけていいか分からない」──
職場には、男女双方に「言えない」と「聞けない」の壁が存在します。
女性特有・男性特有の健康課題による経済損失は合計年間約4.7兆円。
この膨大なコストの多くは、「制度がない」のではなく「相互理解がない」ことに起因しています。
この記事では、最新データと制度動向をもとに、男女の健康リテラシー格差を埋め、対話力を高めるための5つのステップを解説します。
♀ 女性のライフステージと健康課題
PMS・月経困難症
86.6%が仕事に影響。約46%がパフォーマンス半減。経済損失 約0.6兆円/年
妊娠・出産・不妊治療
不妊治療と仕事の両立困難で26.1%が離職・雇用形態変更
更年期症状
43.6%が退職を検討。経済損失 約1.9兆円/年
♂ 男性の見えにくい健康課題
男性更年期(LOH症候群)
テストステロン低下による疲労・意欲減退・不眠。重度でも約7割が自覚なし
メンタルヘルス
「弱音を吐けない」文化が受診を遅らせる。男性自殺率は女性の約2倍
ヘルスリテラシーの低さ
健康情報を求める・受診する傾向が女性より一貫して低い
🌐 Bridge Insight
「女性の健康支援」と「男性の健康支援」を別々に考えるのではなく、
男女それぞれに"見えにくい不調"があると認め合い、
互いに想像力を働かせられる職場をつくることが、健康経営の本質です。
女性が「言えない」3つの壁
1. 諦め:「話しても理解されない」
過去の経験から、伝えること自体を断念
2. 不利益懸念:「評価が下がる」
特に管理職女性ほど、弱みを見せられない
3. 説明の難しさ:目に見えない不調
波があり日によって違う症状の言語化が困難
男性が「聞けない」3つの壁
1. ハラスメント懸念:善意が裏目に
「体調どう?」が不適切と受け取られる恐怖
2. 知識不足:未知の症状への戸惑い
「何も知らない」ことが無関心と誤解される
3. プライバシー配慮:踏み込めない
「聞いていいのか分からない」が行動を止める
月経時に不調があっても約6割が「我慢して仕事をした」と回答(連合総研2025)。上司に相談している人はわずか約1割、同僚にも2割未満。この「沈黙のコスト」は、数字としては見えにくくとも、チーム全体の生産性とエンゲージメントを確実に蝕んでいます。
💡 専門家の視点:知ることが「想像力」に変わる
男女の健康課題の相互理解は、"やさしさ"の話にとどまりません。
それは、見えない不調を放置しないための第一歩であり、心理的安全性と生産性を高めるための経営基盤です。
「知ること」が「想像力」に変わり、「想像力」が「配慮」に変わる。
その連鎖が、組織の対話力を根本から変えます。
Risk 1
ハラスメントリスク
「生理だろ」等の悪意なき一言が法的リスクに。知識不足が無自覚なハラスメントを生む。
Risk 2
人材流出リスク
経験豊富なミドル層の離職。更年期離職は年間推計57万人。代替コストは年収の50〜200%。
Risk 3
生産性低下リスク
心理的安全性の低下 → 不調を隠す → プレゼンティーイズム → チーム全体のパフォーマンス停滞。
💡 専門家の視点:「知識が優しさに変わる」
「何から始めればいいか分からない」という声を、最も多く聞きます。
答えはシンプルです。
まず管理職が「知ること」。
そして、一人ひとりが「聴く姿勢」を持つこと。
制度は後からついてきます。
「知識が優しさに変わる」── この言葉を、
私たちは支援先の企業で何度も目にしてきました。
| 制度・動向 | ポイント |
|---|---|
| 健康経営度調査 Q48-Q49 | 女性の健康課題の知識提供+行動促進施策を評価。PMS低用量ピル費用補助が2026年新設 |
| Q21(中小規模法人) | 「性差・年代に配慮した職場づくり」が新設。女性の健康保持増進が評価項目に |
| 厚労省 問診マニュアル | 2026年1月公表。健診問診での女性の健康課題の把握→支援への導線を標準化 |
| えるぼしプラス認定 | 2026年4月〜。女性の健康支援の取組が認定の評価対象に追加 |
| 女性活躍推進法改正 | 2025年6月公布。基本原則に「女性の健康上の特性への配慮」を明記 |
国の政策は明確に「性差を踏まえた健康支援」の方向に動いています。
健康経営認定を取得している企業も、していない企業も、
「男女の健康リテラシー格差を埋める取り組み」は避けて通れないテーマになりました。
まとめ
管理職向け「男女の健康課題」研修、全社向け啓発セミナー、
健康経営認定の準備支援まで、ウェルネスドアが伴走します。
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狩野 学(かりの まなぶ)
ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間、フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。「男女の健康リテラシー格差を埋める」ことを重要テーマに掲げ、管理職研修から制度設計支援まで、データに基づく伴走型コンサルティングを提供。
【参考文献・出典】
【免責事項】本記事は健康経営に関する一般的な情報提供を目的としています。健康上の問題については、必ず医療機関や専門職にご相談ください。
「最近、女性部下のパフォーマンスに波があるように感じる…」
「体調が悪そうだが、何と声をかければいいか分からない」
多くの男性管理職が、このような悩みを抱えています。一方で、男性側も「セクハラと誤解されたくない」「プライベートな問題にどこまで踏み込んでいいのか…」といった理由から、積極的に関わることに強い"ためらい"を感じているのが実情です。
この「言えない・聞けない」というコミュニケーションの壁は、男女どちらか一方の問題ではありません。この記事では、壁の正体を解き明かし、男女双方が歩み寄り、企業がそれを支援するための具体的な方法を専門家の視点から解説します。
まず認識すべきは、女性特有の健康課題がもたらす影響は、決して「個人の問題」で済まされないという事実です。
経済産業省の調査によれば、月経随伴症状(PMSなど)による生産性の低下や欠勤などがもたらす労働損失は、年間で約4,911億円にも上ると試算されています。また、更年期症状を理由に、管理職への昇進を辞退したり、離職を考えたりする40代・50代の女性も少なくありません。
経験豊富な人材のパフォーマンス低下や離職は、代替のきかない大きな損失です。これは、組織として対策を講じるべき、紛れもない**「経営課題」**なのです。
男性側の「無理解」と、女性側が相談を諦めてしまう「すれ違い」は、静かに、しかし確実に組織を蝕むリスクとなります。
「気の持ちようだ」「自己管理が足りない」といった悪意のない一言が、意図せずパワーハラスメントと受け取られる危険性があります。知識不足からくる不適切な言動は、法的なリスクにも直結します。
「この上司・この職場ではキャリアを続けられない」という諦めは、優秀な女性従業員のエンゲージメントを著しく低下させ、離職につながります。特に経験豊富なミドル層の離職は、組織にとって計り知れない損失です。
個人の不調だけでなく、「体調について安心して相談できない」という職場全体の雰囲気は、心理的安全性を低下させます。その結果、チーム内のコミュニケーションが停滞し、組織全体の創造性や生産性を阻害するのです。
この問題の根源には、男女それぞれの立場から生じる、構造的な「壁」が存在します。
この根深い壁を乗り越えるには、個人の歩み寄りと、それを支える企業の仕組みづくりが不可欠です。
【男性管理職へ】まずは知識を学ぶことに加え、「体調は仕事のパフォーマンスに影響するから、必要な配慮は一緒に考えたい」という、**マネジメントとしてのスタンス**を明確に伝えましょう。「何かサポートできることはある?」とオープンに問いかける姿勢が、信頼関係の第一歩です。
【女性社員へ】男性側の「関わりづらさ」を理解した上で、「PMSによる頭痛で集中しづらいため、可能であれば1時間在宅勤務に切り替えたい」など、**「状態」と「希望する配慮」をセットで**具体的に伝えてみる工夫が、円滑なコミュニケーションを助けます。
個人の努力任せには限界があります。企業は、安心して対話できる「土壌」を整備する責任があります。
女性の健康課題への理解は、単なる「優しさ」ではありません。
それは、男女間の相互理解を促し、すべての従業員が能力を最大限に発揮するための**「戦略的マネジメント」**です。
「何から始めればいいかわからない」「管理職の意識改革を進めたい」
ウェルネスドアでは、男女合同で学べる健康リテラシー研修や、心理的安全性を高めるマネジメント研修をご提供しています。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の状況における法的助言や問題解決を保証するものではありません。個別の事案については、必要に応じて弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
【主な情報源】
・経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」
前回のコラムでは、男女間の「健康リテラシー格差」がもたらす数千億円規模の労働損失と、その背景にある「言えない・聞けない」心理的な壁についてお伝えしました。
「知識が必要なのは分かった。でも、実際に部下が辛そうな時、どう声をかけるのが正解なのか?」
多くの管理職が抱くこの疑問の答えは、病名を聞き出すことでも、無理に休ませることでもありません。今回は、部下のプライバシーを守りつつ、チームの生産性を最大化するための**「具体的マネジメントスキル」**を解説します。
管理職が陥りやすい罠に「ベネボレント・セクシズム(慈悲的性差別)」があります。「体調が悪いなら、今度の大きなプロジェクトからは外しておこう」といった、善意に基づく配慮が、本人のキャリア形成を阻害してしまう現象です。
重要なのは、上司が勝手に「できない」と決めつけないことです。**「期待していること」と「サポートする意思」をセットで伝える**姿勢が、部下の心理的安全性を高めます。
部下の顔色が優れない時、どのようなステップで対話を進めるべきか。具体的なフレーズと共に見ていきましょう。
「最近、少し疲れているように見えて心配しているよ」と、あくまで自分の感じた事実を伝えます。原因(生理?更年期?)を推測するのは厳禁です。
「仕事を進める上で、何か負担になっていることや、今のスケジュールで調整が必要なことはあるかな?」と、**業務にフォーカスして**問いかけます。
「今日の午後はリモートに切り替えることもできるし、明日のMTGを延期することもできる。どうするのが一番進めやすい?」と、サポートの選択肢を提示します。
対話スキルと同時に必要なのが、相談を「制度」でバックアップすることです。
女性の健康課題を「特別なこと」として扱うのではなく、一人のプロフェッショナルがパフォーマンスを維持するための「当然の調整項目」として捉える。
そのフラットな視点こそが、優秀な人材を惹きつけ、離さない魅力ある職場を作ります。
「自社の現状に合わせたセミナーを実施したい」「制度設計のアドバイスが欲しい」
ウェルネスドアは、貴社の状況に寄り添い、実効性のある女性の健康経営をサポートします。
【参考文献・出典】
・日本経済団体連合会「2021年度 福利厚生費調査結果報告」
・厚生労働省「働く女性の健康応援サイト」
第1弾では、更年期や女性特有の健康課題が離職や生産性低下につながる経営課題であることを扱いました。第2弾では、「言えない・聞けない」を乗り越えるための声かけや制度設計の考え方を整理しました。
しかし、現場で本当に差が出るのはその次です。 部下から体調の相談を受けたあと、上司や人事がどう動くかによって、 「安心して働き続けられる職場」になるのか、 それとも「結局、誰にも頼れない職場」になるのかが分かれます。
今回は、相談を受けた後の対応を属人的な“気遣い”で終わらせず、再現性のあるマネジメントとして機能させるための実務ポイントを整理します。
女性特有の健康課題への対応がうまくいかない職場では、「本人から話はあった」「一度配慮した」「でも結局、状況が変わらなかった」ということがよく起こります。
その背景には、次のようなパターンがあります。
更年期症状は、疲労感、睡眠障害、肩こり・腰痛、イライラ、不安感、集中しづらさなど幅広く、日によって波が出やすいのが特徴です。そのため、単発の配慮ではなく、 一定期間のマネジメント設計が必要になります。
面談で重要なのは、病名や月経周期などの詳細を聞き出すことではありません。 管理職が押さえるべきなのは、仕事を進めるうえで必要な情報です。
ここで大切なのは、「体調の事情」ではなく「業務上の調整事項」として扱うことです。そうすることで、本人のプライバシーを守りながら、必要な配慮を現実的に設計しやすくなります。
女性特有の健康課題への配慮は必要ですが、運用を誤ると「特別扱い」「不公平感」「本人のキャリア意欲の低下」につながることがあります。そこで有効なのが、次の3原則です。
特に注意したいのは、「体調が心配だから、この案件は外しておく」という善意の判断です。本人にとっては、重要な経験機会や評価機会を失うことにもなり得ます。 配慮は“キャリアを守るための調整”であって、“機会を奪うこと”ではない という視点が重要です。
厚生労働省は、更年期症状がつらい場合、我慢せず早めに婦人科へつながることを勧めています。更年期障害の治療には、ホルモン補充療法(HRT)、漢方、必要に応じた薬物療法やカウンセリングなどの選択肢があります。
ただし、本人が「どこに相談すればよいか分からない」状態では、情報提供だけでは足りません。企業としては、 相談先と受診先を“行きやすい導線”として用意しておくこと が重要です。
2026年1月、厚生労働省は、女性特有の健康課題(月経困難症、PMS、更年期障害等)に関する問診を健康診断で活用し、事業者の健康管理支援につなげる実施マニュアルを公表しました。
今後は、本人からの申し出だけに頼るのではなく、 健診・産業保健・相談窓口を通じて早めに支援へつなげる設計 が、より実務的な選択肢になっていくと考えられます。
支援を機能させる最後のポイントは、一度決めた配慮を、そのまま放置しないことです。
更年期や月経由来の不調は、症状の波や生活状況の変化によって、必要な配慮が変わります。だからこそ、 1回の面談で終わりではなく、短いスパンでの再確認が有効です。
この“見直しの前提”があるだけで、配慮は「特別扱い」ではなく、業務マネジメントの一部として扱いやすくなります。そして本人にとっても、「我慢し続ける」「言い続けなければならない」という負担が減っていきます。
女性特有の健康課題への対応は、上司の“気遣い力”だけに任せると、どうしてもばらつきが出ます。
だからこそ、面談・調整・連携・見直しの流れを、組織として再現できる形にしておくことが大切です。
「管理職向けの実践研修をしたい」「人事・産業保健と現場の接続を整理したい」
ウェルネスドアでは、女性の健康リテラシー研修から、管理職向けの対応実務セミナーまで、貴社の状況に合わせてご提案しています。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療、個別の法的判断を代替するものではありません。心身の不調や個別の労務対応については、医療機関や専門家にご相談ください。
【主な情報源】
・厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト(更年期)」
・厚生労働省科学研究費補助金 分担研究報告書「更年期症状に対して職場が取り組むべき支援や配慮に関する文献調査」
・厚生労働省「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」
・日本産科婦人科学会/日本女性医学学会関連ガイドライン情報