EXPERT INSIGHT ─ Gender Health Literacy
男女の健康課題による経済損失は合計年間約4.6兆円──
その多くは「制度がない」のではなく「相互理解がない」ことに起因する
「生理痛で集中できないけど、言い出せない」「部下の体調が悪そうだけど、どう声をかけていいか分からない」──職場には、男女双方に「言えない」と「聞けない」の壁が存在します。
女性特有・男性特有の健康課題による経済損失は合計年間約4.6兆円。この膨大なコストの多くは、「制度がない」のではなく「相互理解がない」ことに起因しています。この記事では、最新データと制度動向をもとに、男女の健康リテラシー格差を埋め、対話力を高めるための5つのステップを解説します。
女性のライフステージと健康課題
PMS・月経困難症
約8割が症状を我慢。パフォーマンス約40%低下。労働損失 約5,700億円/年
妊娠・出産・不妊治療
正規雇用でも約2割が離職。経済損失 最大1.4兆円/年
更年期症状
40-50代の約4割が保有。経済損失 約1.9兆円/年
男性の見えにくい健康課題
男性更年期(LOH症候群)
テストステロン低下による疲労・意欲減退・不眠。重度でも約7割が自覚なし。損失 約1.2兆円/年
メンタルヘルス
「弱音を吐けない」文化が受診を遅らせる。男性自殺率は女性の約2倍
ヘルスリテラシーの低さ
健康情報を求める・受診する傾向が女性より一貫して低い
「女性の健康支援」と「男性の健康支援」を別々に考えるのではなく、
男女それぞれに"見えにくい不調"があると認め合い、
互いに想像力を働かせられる職場をつくることが、健康経営の本質です。
女性が「言えない」3つの壁
1. 諦め:「話しても理解されない」
過去の経験から、伝えること自体を断念
2. 不利益懸念:「評価が下がる」
特に管理職女性ほど、弱みを見せられない
3. 説明の難しさ:目に見えない不調
波があり日によって違う症状の言語化が困難
男性が「聞けない」3つの壁
1. ハラスメント懸念:善意が裏目に
「体調どう?」が不適切と受け取られる恐怖
2. 知識不足:未知の症状への戸惑い
「何も知らない」ことが無関心と誤解される
3. プライバシー配慮:踏み込めない
「聞いていいのか分からない」が行動を止める
2025年調査では月経時に不調があっても約8割が「我慢して仕事をした」と回答。上司に相談している人はわずか約1割、同僚にも2割未満。この「沈黙のコスト」は、数字としては見えにくくとも、チーム全体の生産性とエンゲージメントを確実に蝕んでいます。
専門家の視点:知ることが「想像力」に変わる
男女の健康課題の相互理解は、"やさしさ"の話にとどまりません。それは、見えない不調を放置しないための第一歩であり、心理的安全性と生産性を高めるための経営基盤です。
「知ること」が「想像力」に変わり、「想像力」が「配慮」に変わる。その連鎖が、組織の対話力を根本から変えます。
Risk 1:ハラスメントリスク
「生理だろ」等の悪意なき一言が法的リスクに。知識不足が無自覚なハラスメントを生む。
Risk 2:人材流出リスク
経験豊富なミドル層の離職。更年期離職の代替コストは年収の50〜200%。離職による損失は約1.0兆円。
Risk 3:生産性低下リスク
心理的安全性の低下 → 不調を隠す → プレゼンティーイズム → チーム全体のパフォーマンス停滞。
STEP 1|知る──全社リテラシー研修
STEP 2|聴く──オープンクエスチョンの文化
STEP 3|整える──制度を「使いやすく」する
STEP 4|つなげる──相談窓口と受診導線
STEP 5|届ける──令和7年度 健康経営認定への対応
専門家の視点:「知識が優しさに変わる」
「何から始めればいいか分からない」という声を、最も多く聞きます。答えはシンプルです。
まず管理職が「知ること」。そして、一人ひとりが「聴く姿勢」を持つこと。
制度は後からついてきます。「知識が優しさに変わる」──この言葉を、私たちは支援先の企業で何度も目にしてきました。
| 制度・動向 | ポイント |
|---|---|
| 健康経営度調査 Q48-Q49 | 女性の健康課題の知識提供+行動促進施策を評価。PMS低用量ピル費用補助が令和7年度新設 |
| Q38/Q39(従業員・管理職教育) | 「更年期症状・障害(男女問わず)」「性差に配慮した職場環境づくり」が新規追加 |
| 厚労省 問診マニュアル | 2026年1月公表。健診問診での女性の健康課題の把握→支援への導線を標準化 |
| えるぼしプラス認定 | 2026年4月〜。女性の健康支援の取組が認定の評価対象に追加 |
| 女性活躍推進法改正 | 2025年6月公布。基本原則に「女性の健康上の特性への配慮」を明記 |
国の政策は明確に「性差を踏まえた健康支援」の方向に動いています。
健康経営認定を取得している企業も、していない企業も、
「男女の健康リテラシー格差を埋める取り組み」は避けて通れないテーマになりました。
まとめ
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管理職向け「男女の健康課題」研修、全社向け啓発セミナー、
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執筆・監修:狩野 学(かりの まなぶ)
ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間、フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。「男女の健康リテラシー格差を埋める」ことを重要テーマに掲げ、管理職研修から制度設計支援まで、データに基づく伴走型コンサルティングを提供。
【参考文献・出典】
【免責事項】本記事は健康経営に関する一般的な情報提供を目的としています。健康上の問題については、必ず医療機関や専門職にご相談ください。