Vol.09では、転倒の3大身体要因(筋力・バランス・柔軟性)とサルコペニア→ロコモ→フレイルの3段階を解説しました。今回のVol.10では、「自分の身体がどの段階にあるのか」を実際に測定する方法を解説します。
厚生労働省がエイジフレンドリーガイドラインの別添として公開している「転倒等リスク評価セルフチェック票」の身体機能計測5項目を、やり方・判定基準・転倒リスクとの関連まで完全解説します。特別な器具は不要。職場で今日からできるセルフチェックです。
このチェック票は、Ⅰ 身体機能計測(5項目)とⅡ 質問票(9問)の2部構成で、結果をレーダーチャートに転記して「実測値(黒枠)」と「自己認識(赤枠)」のギャップを可視化します。
最も重要なのは「黒枠<赤枠」のパターン──つまり「自分が思っているより身体機能が衰えている」状態です。この状態の人は、とっさの行動時に身体が思い通りに反応せず、転倒リスクが最も高くなります。
開眼片足立ちの年齢別平均値は、65〜69歳:約80秒、70〜74歳:約71秒、75〜79歳:約57秒です(スポーツ庁 体力・運動能力調査)。しかし私のセミナーで実測すると、50代のオフィスワーカーでも15秒未満の方が約2〜3割います。デスクワーク中心の生活は、加齢以上にバランス能力を低下させている可能性があります。
スポーツ庁「体力・運動能力調査」および厚生労働省「介護予防マニュアル」のデータをもとに、年齢別の目安をまとめました。
私のセミナーでは、この5項目のうち特に「開眼片足立ち」と「2ステップテスト」を必ず実施しています。現場で効果的に実施するためのコツを3つ共有します。
「転倒に気をつけましょう」という注意喚起は、Vol.01で述べた通り効果が限定的です。しかし「あなたの片足立ちは12秒で、同世代平均の40秒を大きく下回っています」と伝えると、行動が変わります。
体力チェックの最大の価値は、「自分の身体を数値で知ること」が、運動を始める最も強い動機になるという点です。次回Vol.11では、この体力チェックの結果をもとに、「1日3分でできる転倒予防エクササイズ」を具体的に解説します。
次回 Vol.11 では、「1日3分でできる転倒予防エクササイズ ── デスクワーカー編」を解説します。スクワット2種+バランストレーニングで、今日の体力チェック結果を改善するための具体的なメニューをお伝えします。
フィットネス・健康分野で約18年の経験を持ち、2018年より法人向け健康経営支援を開始。転倒予防セミナーの企画・登壇を多数の企業・健保組合で担当。厚生労働省の転倒等リスク評価セルフチェック票を活用した体力測定型プログラムや、正常性バイアスの解除をテーマにした科学的アプローチを得意とする。情報誌『エルダー』(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構、2024年1月号)にて健康経営に関するインタビュー掲載。