📚 全5回コラムシリーズ

第5回 健康経営推進検討会
徹底解説シリーズ

2026年3月開催の検討会で示された制度変更・最新データ・先進事例を
企業の実務目線で全5回にわたり解説します。

第1回 4つの制度変更
(総論)
第2回 エンゲージメント
と業績
第3回 中小企業
への追い風
第4回 介護と仕事
の両立
第5回(最終回) 先進企業
20社の事例
📘 コラムシリーズ 第1回 / 全5回

第5回 健康経営推進検討会で何が決まった?
── 企業が今知るべき4つの制度変更

📅 2026年5月 ✍️ ウェルネスドア合同会社

2026年3月17日、経済産業省にて第5回 健康経営推進検討会が開催されました。認定法人数が過去最高を更新する中、検討会が示した方向性は明確です。「認定を取ること」から「何にどう取り組み、どんな成果を出しているか」へ── 健康経営は「量」から「質」への大転換期を迎えています。本コラムでは、企業が今から準備すべき4つの重要な制度変更を解説します。

まず押さえたい ── 認定状況の最新数値

4,175
健康経営度調査
回答数(大規模)
前年比 +385件(+11%)
3,765
優良法人 認定数
(大規模法人部門)
上場企業の約3割が回答
23,085
優良法人 認定数
(中小規模法人部門)
前年比 +3,289件(+16.6%)

健康経営銘柄2026として28業種44社が選定されるなど、健康経営はもはや「一部の先進企業の取り組み」ではなく、企業経営の標準装備になりつつあります。その上で今回の検討会は、認定の「その先」を見据えた4つの重要な制度変更を打ち出しました。


変更① 健康経営銘柄「Premier(プレミア)」の新設

健康経営銘柄に通算10回以上選定された企業を対象に、新たな称号「健康経営銘柄Premier」が創設されます。「継続は力なり」が制度として形になりました。

📋 選定の3要件
  • 要件① 健康経営銘柄に通算10回以上選定されていること
  • 要件② 当該年に健康経営銘柄に選定されること
  • 要件③ 地域やサプライチェーンに対して健康経営の普及活動を行っていること

選定企業には専用ロゴの付与、取組動画の作成・公開、講演等での優先的な事例紹介といったメリットが用意されます。ホワイト500の認定を維持している限り、当該年以降も称号を保有できます。

💡 中小企業にとっての意味
直接的な対象は大企業ですが、注目すべきは要件③の「普及活動」です。大企業が取引先やサプライチェーンに対して健康経営の普及を求める動きが加速すれば、中小企業にとっても健康経営への取り組みが取引条件の一つになる可能性があります。

変更② テーマ別取組評価の導入

従来の総合評価に加え、企業が自らテーマを選び、取り組み内容を記載して評価を受ける新制度が導入されます。大規模法人部門から10社程度、中小規模法人部門から40社程度が選定され、ベストプラクティス事例集として公表される予定です。

選択できるテーマ

🏷️ 7つの既定テーマ + 自由設定
  • 女性の健康保持・増進に向けた取組
  • 仕事以外の事情(介護、治療、子育て等)と仕事の両立
  • 心の健康保持・増進に向けた取組
  • 運動機会の増進に向けた取組
  • 食生活改善に向けた取組
  • 年齢に配慮した職場づくり
  • 企業価値向上に繋がる健康投資

※ 上記以外にも、各社で独自のテーマを設定して記載することが可能です。

選定基準のポイント

部門 前提条件 選定数
大規模法人部門 「経営理念・方針」「評価・改善」のスコアが一定以上 10社程度
中小規模法人部門 ブライト500へ申請していること 40社程度
💡 企業が今すべきこと
この制度で重要なのは「何をやったか」だけでなく、「なぜそのテーマを選んだのか」「どのような成果が出ているのか」というストーリーです。自社の健康課題を正しく把握し、テーマを選び、施策を実行し、効果を測定する── この一連の流れを今のうちから設計しておくことが、選定への近道になります。

変更③ 中小企業への追い風 ── 補助金加点・融資優遇が大幅拡充

今回の検討会で最もインパクトが大きいのが、中小企業向け補助金における健康経営優良法人認定企業への審査加点です。対象は主要な中小企業向け補助金のほぼ全てをカバーしています。

加点対象となる補助金一覧

📌 加点措置の対象補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • IT導入補助金
  • 事業承継・M&A補助金
  • Go-Tech補助金
  • 中小企業新事業進出補助金
  • 成長加速化補助金
  • 大規模成長投資補助金
  • 省力化投資補助金
  • 持続化補助金

融資における特別利率

日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」において、健康経営優良法人認定企業には特別利率が適用されます。さらに、新たに「ネクストブライト1000」の認定企業にも優遇利率が適用されることが決まりました。

認定区分 適用利率(参考値)
基準利率(一般) 1.75%
健康経営優良法人認定 1.35%(特別利率①)
ホワイト500 / ブライト500 / ネクストブライト1000 1.10%(特別利率②)

※ 2025年2月時点・貸付期間5年以内の場合。信用リスク等に応じて所定の利率が適用されます。

小規模事業者向け特例も拡充

小規模事業者向け特例制度による認定法人数は、前年比1.9倍の269法人に増加。認定のハードルを下げることで、より多くの小規模事業者が健康経営に取り組みやすい環境が整備されています。

💡 中小企業が感じるべきこと
健康経営優良法人の認定を取得することが、「健康施策としてのメリット」だけでなく「経営・財務面での直接的なメリット」にもなる時代が本格的に到来しました。認定取得のコストと手間を「投資」として捉え直す視点が求められています。

変更④ ライフデザイン経営・プレコンセプションケアの新設問

次年度の大規模法人部門の健康経営度調査票において、「ライフデザイン経営」に関するアンケート項目が新設されます。現時点では評価項目ではなくアンケート(実態把握)ですが、将来的に評価に組み込まれる可能性が高いと見られます。

📖 ライフデザイン経営とは

社員がキャリアとライフを両立し、充実したライフデザインを実現できる環境を提供することで、人材の能力を最大限に引き出し、企業価値向上につなげる経営の在り方。育児・介護・治療との両立支援、キャリアとライフに関する計画の機会提供、管理職向け研修など、多岐にわたる施策が想定されています。

プレコンセプションケアの浸透状況

プレコンセプションケア(将来の妊娠に備えた健康管理)の認知度は、大規模法人部門では「内容を知っている・聞いたことがある」企業が64.5%に達し、取組を実施している法人は全体の17.8%となっています。一方、中小規模法人部門での認知率は13.7%にとどまっています。

💡 企業への示唆
健康経営の対象領域が、従来の「生活習慣病予防」「メンタルヘルス」から、「ライフステージ全体を通じた支援」へと拡大しています。介護、不妊治療、更年期、キャリアデザインなど、従業員の人生全体に寄り添う施策が求められる時代に入りました。

まとめ ── 企業が今から始めるべき3つのアクション

① 自社の「強みテーマ」を明確にする
テーマ別評価の導入により、「何でもまんべんなく」ではなく「自社の強みを深掘りする」健康経営が評価される時代になります。まずは自社の健康課題を棚卸しし、最も成果を出せるテーマを1つ選びましょう。

② 効果測定の仕組みを整える
「やりました」では評価されません。施策の前後で何が変わったのかを定量的に示せる仕組み(事前・事後アンケート、健診データの経年比較等)を今のうちに整えておきましょう。

③ 中小企業は認定取得を「経営戦略」として検討する
補助金加点や融資優遇の拡充により、健康経営優良法人認定の経済的メリットは過去最大になっています。「健康施策の一環」ではなく「経営戦略の一環」として認定取得を検討する価値があります。

次回(第2回)では、今回の検討会で報告された「エンゲージメントと企業業績の因果関係」に関する2,502社の大規模研究データを詳しく解説します。健康経営を「コスト」ではなく「投資」として経営層に説明する際の、強力なエビデンスです。

次回 ▶ 第2回
エンゲージメントと業績の因果関係 ── 2,502社の分析が示すデータ
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出典・参考資料
  • 経済産業省「第5回 健康経営推進検討会 事務局資料(今年度の認定状況と今後の方向性について)」(2026年3月17日)
  • 健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「令和7年度健康経営優良法人認定の分析及びご報告」
  • 順天堂大学 矢野裕一朗教授ら「日本企業における企業施策・健康管理施策と従業員エンゲージメントの関連」
  • 健康長寿産業連合会「健康経営先進企業事例集2026」
📗 コラムシリーズ 第2回 / 全5回

エンゲージメントと業績の因果関係
── 2,502社の分析が示すデータ

📅 2026年5月 ✍️ ウェルネスドア合同会社

「健康経営に投資して、本当にリターンはあるのか?」── 経営層からのこの問いに、明確な答えを出す研究データが第5回検討会で報告されました。順天堂大学・矢野裕一朗教授らによる日本企業2,502社・正規従業員約629万人を対象とした大規模分析です。本コラムでは、このデータを「経営層への説明」にそのまま使える形で解説します。

研究の概要 ── 何を、どう調べたのか

この研究は、経済産業省が毎年実施する健康経営度調査の2022年度・2023年度データを活用し、従業員エンゲージメント、企業施策、健康状態、そして企業業績の関連性を多変量ロジスティック回帰分析で検証したものです。

📊 研究の基本情報
分析対象 日本企業 2,502社
対象従業員 正規従業員 約629万人(女性27.6%)、非正規従業員 約273万人(女性64.4%)
平均年齢 41.0 ± 3.6歳
平均勤続年数 13.9 ± 4.8年
データ出典 経済産業省 健康経営度調査(2022〜2023年度)
研究機関 順天堂大学医学部 総合診療科学講座(矢野裕一朗教授ら)

エンゲージメントの評価には「仕事への満足度」と「働きがい」の2項目を使用。いずれかまたは両方の企業平均スコアが上位四分位に属する企業を「エンゲージメントが高い企業」と定義しています。


最重要発見 ── エンゲージメントが高い企業は業績が良い

まず、最も注目すべき結論から。この研究は、従業員エンゲージメントが高い企業ほど、収益性・営業利益率が高いことを、日本企業の大規模データで初めて統計的に実証しました。

高エンゲージメント企業の
高収益の可能性
1.65
調整オッズ比 p<0.001
高エンゲージメント企業の
高営業利益の可能性
1.40
調整オッズ比 p=0.002
💡 この数字が意味すること
エンゲージメントが高い企業は、そうでない企業と比べて「高収益である可能性が1.65倍」「高営業利益である可能性が1.40倍」です。これは上場・非上場、業種、平均勤続年数、平均年齢を統計的に調整した上での数値であり、企業の属性に関わらず、エンゲージメントと業績の間に有意な正の関連があることを示しています。

何がエンゲージメントを高めるのか ── 企業施策編

では、どのような企業施策がエンゲージメントの向上に関連しているのでしょうか。研究では、ワークスタイルマネジメント(11施策)と従業員コミュニケーション(6施策)について分析しています。

ワークスタイルマネジメント

11の施策のうち、エンゲージメントと統計的に有意な正の関連を示したのは以下の2つです。

施策 調整オッズ比 p値 関連
時間外労働時間の削減を管理職の評価項目に設定 1.45 0.008 ✔ 正
時間単位での年次有給休暇の取得を可能にしている 1.29 0.008 ✔ 正

注目すべきは、フレックスタイム制度や勤務間インターバル制度など、よく知られた「働き方改革」施策では有意な関連が見られなかった点です。管理職への責任の明確化と、柔軟な休暇取得の仕組みが、より本質的にエンゲージメントに影響するということを示唆しています。

従業員コミュニケーション

6つのコミュニケーション施策のうち、有意な正の関連を示したのは1つだけでした。

施策 調整オッズ比 p値 関連
社内ブログ・SNSやチャットアプリ等のコミュニケーション促進ツールを提供 1.32 0.025 ✔ 正
フリーアドレスオフィス等の職場環境整備 1.01 0.903
社員旅行や家族交流会等のイベント 0.98 0.848
ボランティア・地域祭り等への組織的関与 0.92 0.450
💡 興味深い示唆
社員旅行やボランティア活動などの「一時的なイベント」は有意な関連を示さず、日常的に使えるデジタルコミュニケーションツールの方が、エンゲージメント向上に効果的であることが示されました。「年に1回の大きなイベント」より「毎日の小さなつながり」の方が重要ということです。

何がエンゲージメントを高めるのか ── 従業員の健康状態編

この研究のもう一つの重要な発見は、従業員の健康状態がエンゲージメントに直接影響するということです。健康診断結果から得られたデータの分析結果を見てみましょう。

健康指標 調整オッズ比 p値 エンゲージメントとの関連
運動習慣者比率
週2回・1回30分以上の運動
1.02 0.006 ⬆ 正の関連
睡眠による十分な休養
十分な休養が取れている人の割合
1.03 <0.001 ⬆ 正の関連
適正体重維持者率
BMI 18.5〜25未満
1.02 0.046 ⬆ 正の関連
喫煙率 0.98 0.002 ⬇ 負の関連
飲酒習慣者率 1.01 0.177 有意差なし
血糖リスク者率 0.93 0.058 有意差なし

ここで明確に浮かび上がるのは、「運動」「睡眠」「適正体重」という3つの生活習慣がエンゲージメントと正の関連を示し、「喫煙」が負の関連を示したという構図です。

🏃
運動習慣
⬆ エンゲージメント向上
😴
十分な睡眠
⬆ エンゲージメント向上
⚖️
適正体重
⬆ エンゲージメント向上
🚬
喫煙
⬇ エンゲージメント低下

意外な発見 ── 有給休暇の取得日数が多いほどエンゲージメントが低い?

この研究で最も議論を呼びそうなのが、労働時間と有給休暇に関するデータです。

指標 調整オッズ比 p値
平均月間総実労働時間 0.99 0.006
平均年次有給休暇取得日数 0.92 <0.001

長時間労働がエンゲージメントに悪影響を与えることは直感的に理解できますが、有給休暇の取得日数が多いほどエンゲージメントが低いという結果は意外に感じるかもしれません。

🔍 研究者による考察

研究者らは、この結果について2つの解釈を示しています。

解釈① 頻繁な休暇取得が、ワークライフバランスの良好な結果ではなく、職場への愛着の欠如や逃避願望を反映している可能性

解釈② エンゲージメントが高い従業員は仕事への強い意欲があり、自発的に休暇取得日数が少なくなる可能性

いずれにしても、「有給休暇を取らせればエンゲージメントが上がる」という単純な図式ではないことが示されています。重要なのは休暇の「量」ではなく「質」、そして休暇を取りたくなる職場環境そのものであると言えるでしょう。


全体像 ── 健康→エンゲージメント→業績の因果構造

この研究から見えてくる全体像を整理すると、以下のような因果構造が浮かび上がります。

企業施策
管理職評価・時間単位有休
コミュニケーションツール
従業員の健康改善
運動・睡眠・適正体重
禁煙
エンゲージメント向上
仕事への満足度
働きがい
企業業績の向上
高収益 1.65倍
高営業利益 1.40倍

つまり、健康経営は「福利厚生」ではなく「業績を向上させる経営戦略」であることが、日本企業2,502社のデータで裏付けられたのです。


実務への活用 ── このデータを経営層にどう説明するか

最後に、このデータを社内で活用する際のポイントを整理します。

① 「健康投資のROI」を語れる
「エンゲージメントが高い企業は高収益の可能性が1.65倍」── この一言が、経営層への最も強力なメッセージです。健康経営は「コスト」ではなく「リターンのある投資」だと数字で示せます。

② 施策の優先順位をつけられる
「まずは運動・睡眠・禁煙から」という明確な優先順位が、データに基づいて説明できます。限られた予算で最大の効果を出すための根拠になります。

③ 「制度より文化」の視点を持てる
フレックスタイムや社員旅行よりも、管理職の評価制度や日常のコミュニケーションツールが効果的。「制度を作る」だけでなく「文化を育てる」ことの重要性を説明できます。

④ 健康経営度調査のテーマ別評価に活用できる
第1回で解説した「テーマ別取組評価」において、自社の施策が「なぜ有効なのか」を学術的エビデンスで補強できます。

次回(第3回)では、「中小企業への裾野拡大」をテーマに、補助金加点・融資優遇の具体的な活用方法や、中小企業が健康経営で実感しているメリットの最新データを詳しく解説します。

次回 ▶ 第3回
中小企業に追い風 ── 補助金加点・融資優遇の活用ガイド
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出典・参考資料
  • 大橋瑞紀, 鐘江宏, 北岡かおり, 岡田邦夫, 藤本敦也, 高瀬堅吉, 宮﨑智之, 矢野裕一朗「日本企業における企業施策・健康管理施策と従業員エンゲージメントの関連」順天堂大学医学部 総合診療科学講座
  • 経済産業省 健康経営度調査(2022〜2023年度)データ
  • 経済産業省「第5回 健康経営推進検討会 参考資料2-1, 2-2」(2026年3月17日)
📙 コラムシリーズ 第3回 / 全5回

中小企業に追い風
── 補助金加点・融資優遇の完全活用ガイド

📅 2026年5月 ✍️ ウェルネスドア合同会社

「健康経営は大企業の話でしょ?」── そう思っていませんか。第5回検討会では、中小企業にとっての経済的メリットが過去最大規模に拡充されたことが報告されました。主要補助金のほぼ全てで審査加点、融資では最大0.65%の金利優遇、小規模事業者向けの認定特例も1.9倍に拡大。本コラムでは、中小企業の経営者・担当者が「明日から何をすればいいのか」がわかるよう、具体的なメリットと活用ステップを解説します。

まず数字で見る ── 中小企業の健康経営は急拡大している

中小規模法人部門の健康経営優良法人認定数は、年々大幅に増加しています。

23,085
中小規模法人部門
認定法人数
前年比 +3,289(+16.6%)
269
小規模事業者向け特例
認定法人数
前年比 1.9倍
88.6%
認定企業の
「メリットを実感」率
日本経済新聞社調査

特に注目すべきは、認定企業の88.6%が「健康経営優良法人認定によるメリットを実感している」と回答している点です。「取ったはいいけど意味がなかった」ではなく、大多数の企業が実際に効果を感じています。


メリット① 主要補助金のほぼ全てで審査加点

中小企業にとって最も直接的なメリットが、補助金の審査における加点措置です。健康経営優良法人の認定を受けているだけで、補助金審査において加点が得られます。

加点対象の補助金一覧と概要

補助金名 主な用途 補助上限額(目安)
ものづくり補助金 革新的サービス開発・設備投資 750万〜5,000万円
IT導入補助金 ITツール導入(会計・勤怠・EC等) 〜450万円
事業承継・M&A補助金 事業承継・M&Aに伴う費用 〜600万円
持続化補助金 販路開拓・業務効率化 〜200万円
省力化投資補助金 人手不足対応の設備導入 〜1,500万円
Go-Tech補助金 基盤技術の高度化研究開発 〜9,750万円
成長加速化補助金 成長分野への事業転換 〜5,000万円
大規模成長投資補助金 大規模設備投資・拠点整備 〜50億円
中小企業新事業進出補助金 新分野展開・業態転換 〜9,000万円
💡 加点の意味
補助金の採択は「審査点」の上位から決まります。健康経営優良法人の加点は、他の加点項目(経営革新計画の承認、賃上げ実績等)と重複して加算されるため、複数の加点を積み重ねることで採択率を大幅に引き上げることが可能です。「あと数点で採択だったのに…」を防ぐための保険として、極めて有効な手段です。

メリット② 融資で最大0.65%の金利優遇

日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」において、健康経営優良法人認定企業には特別利率が適用されます。

💰 金利優遇の3段階
一般
基準利率
1.75%
認定企業
健康経営優良法人認定
特別利率① 適用
1.35%
▼ 0.40%引下げ
上位認定
ブライト500 / ネクストブライト1000
特別利率② 適用
1.10%
▼ 0.65%引下げ

※ 2025年2月時点・貸付期間5年以内の場合。信用リスク等に応じて所定の利率が適用されます。融資限度額は2億7千万円。

金利差で見る具体的なコスト削減効果

「0.65%の差」が実際にどれくらいのインパクトなのか、具体的な数字で見てみましょう。

借入額 返済期間 一般(1.75%)
総利息
上位認定(1.10%)
総利息
削減額
3,000万円 5年 約136万円 約85万円 約51万円
5,000万円 5年 約227万円 約142万円 約85万円
1億円 5年 約454万円 約284万円 約170万円
💡 認定取得のコストと比較すると
健康経営優良法人の認定申請費用は中小規模法人部門で88,000円(税込)です。仮に5,000万円の融資を受ける場合、金利優遇だけで約85万円のコスト削減。認定費用の約10倍のリターンが金利優遇だけで得られる計算です。さらに補助金の加点メリットを加えれば、投資対効果は極めて高いと言えます。

新カテゴリ「ネクストブライト1000」とは

今回の検討会で新たに報告されたのが、「ネクストブライト1000」という新カテゴリです。

STEP 1
健康経営優良法人
中小規模法人部門の基本認定。23,085法人が取得済み。
融資:特別利率① 1.35%
STEP 2 ★ NEW
ネクストブライト1000
優良法人認定企業のうち上位1,000法人。ブライト500の次の目標。
融資:特別利率② 1.10%
STEP 3
ブライト500
中小規模法人部門の最上位500法人。テーマ別評価にも申請可能。
融資:特別利率② 1.10%

ネクストブライト1000の新設により、中小企業の健康経営は3段階のステップアップ構造になりました。まず優良法人認定を取得し、次にネクストブライト1000を目指し、最終的にブライト500を目標とする── という明確な成長ロードマップが描けるようになっています。

特に重要なのは、ネクストブライト1000でもブライト500と同じ融資優遇(特別利率②)が受けられる点です。上位1,000社に入れば、最上位のブライト500と同等の金利メリットを享受できます。


小規模事業者にもチャンス ── 認定特例の拡充

「うちは従業員10人程度の小さな会社だから…」という声にも応える制度が整備されています。小規模事業者向けの認定特例制度は、前年比1.9倍の269法人が認定を受けるなど、急速に広がっています。

📋 小規模事業者向け特例のポイント
  • 通常の認定基準から一部要件が緩和されている
  • 産業医や保健師がいなくても取り組める設計
  • 加入保険者(協会けんぽ等)の健康宣言への参加から始められる
  • 認定を受ければ補助金加点・融資優遇は通常の認定企業と同じメリット

認定企業は何を実感しているのか ── 最新調査データ

健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)が実施した調査によると、認定企業が実感しているメリットは多岐にわたります。

中小規模法人部門で実感されているメリット TOP5

1
企業イメージ・ブランドの向上
60.5%
2
従業員の健康意識の変化
50.3%
3
採用活動での優位性
28.3%
4
従業員のモチベーション・エンゲージメントの向上
25.7%
5
取引先や金融機関からの評価向上
18.9%

特筆すべきは、「採用活動での優位性」が28.3%に達している点です。人手不足が深刻化する中小企業にとって、健康経営優良法人の認定は「求人票に書ける差別化要素」として機能しています。


自治体・金融機関のインセンティブも急増中

国の制度だけではありません。地方自治体や金融機関による独自のインセンティブも急増しています。

🏛️ 広がるインセンティブの種類
  • 自治体の公共調達での加点:入札参加時に健康経営認定企業を優遇する自治体が増加
  • 地方銀行・信用金庫の金利優遇:地域金融機関による独自の融資優遇制度
  • 保険料の割引:健康経営認定企業向けの団体保険や福利厚生サービスの割引
  • 表彰・PR支援:自治体独自の表彰制度や、認定企業を紹介するWebサイトへの掲載

検討会資料では、こうしたインセンティブが今後さらに拡充される方向性が示されており、健康経営の認定が「持っていて当たり前」の時代が近づいていると言えます。


まとめ ── 中小企業が今から始める5つのステップ

STEP 1 ── 加入保険者の「健康宣言」に参加する
協会けんぽ等が実施する「健康宣言」への参加が、認定の第一歩です。Webサイトから申し込めるケースがほとんどで、費用は無料です。

STEP 2 ── 自社の健康課題を「見える化」する
健診受診率、有所見率、ストレスチェックの結果など、既存のデータを整理しましょう。特別な投資は不要です。今あるデータを活用することから始められます。

STEP 3 ── できることから施策を実施する
大規模なプログラムは不要です。「健康に関する情報発信」「ラジオ体操の実施」「健診100%受診の推進」など、小さな取り組みの積み重ねが評価されます。

STEP 4 ── 健康経営優良法人の認定を申請する
毎年8〜10月頃が申請期間です。調査票への記入は、日頃の取り組みを整理して書き出すイメージ。初回は手間に感じるかもしれませんが、2年目以降は更新作業が中心になります。

STEP 5 ── メリットを経営に活かす
認定取得後は、補助金への応募、融資の相談、採用活動でのPR、取引先への説明など、あらゆる場面で活用しましょう。ネクストブライト1000、ブライト500と段階的にステップアップしていくことで、メリットはさらに拡大します。

次回(第4回)では、検討会で特に注目された「介護と仕事の両立」── ワーキングケアラー問題を取り上げます。先進企業18社・約9.7万人の調査から見えた「静かな人材危機」の実態と、企業が今から備えるべきことを解説します。

次回 ▶ 第4回
介護と仕事の両立 ── 9.7万人調査が明かす「静かな人材危機」
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出典・参考資料
  • 経済産業省「第5回 健康経営推進検討会 事務局資料(今年度の認定状況と今後の方向性について)」(2026年3月17日)
  • 健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「令和7年度健康経営優良法人認定の分析及びご報告」
  • 日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金」制度概要
  • 中小企業庁 各種補助金公募要領
📕 コラムシリーズ 第4回 / 全5回

介護と仕事の両立
── 9.7万人調査が明かす「静かな人材危機」

📅 2026年5月 ✍️ ウェルネスドア合同会社

「介護離職」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、その実態がどこまで深刻なのかを、データで把握している企業はごくわずかです。第5回検討会で報告された健康経営先進企業18社・約9.7万人を対象とした調査は、多くの企業にとって衝撃的な数字を突きつけました。本コラムでは、「静かな人材危機」の実態と、企業が今から備えるべきことを解説します。

衝撃の4つの数字 ── 先進企業ですらこの現実

まず、この調査で明らかになった数字を見てください。調査対象は「健康経営先進企業」── つまり、健康経営に積極的に取り組んでいる企業18社です。一般的な企業の状況は、これよりさらに厳しい可能性があります。

現在介護を担う従業員
約13人に1人
7.6%
5年以内に介護の
可能性がある従業員
約3人に1人
35.2%
介護休業の
取得率
ほぼ利用されず
0.10%
男女差
ほぼなし
男性7.4%
女性8.2%
⚠️ この数字が意味すること
従業員100人の会社であれば、現在すでに約8人が介護を担っており、5年以内にさらに約35人が介護に直面する可能性があります。しかもその大半は、会社に相談していません。介護は「一部の人の問題」ではなく、組織全体のリスクなのです。

なぜ「静かな」危機なのか ── 介護が見えない3つの理由

育児と異なり、介護は「いつ始まるか予測できない」「始まったことを周囲に言いにくい」という特性があります。調査データからは、介護が職場で見えにくい構造的な理由が浮かび上がります。

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理由① 申告しない

介護をしていることを会社に伝えていない従業員が多数。「評価に影響するのでは」「迷惑をかけたくない」という心理が申告を阻んでいます。介護休業取得率0.10%という数字が、この実態を端的に表しています。

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理由② 把握できていない

多くの企業は従業員の介護状況を体系的に把握していません。健診データのように定期的に収集する仕組みがないため、問題が顕在化するのは「離職届が出されたとき」になりがちです。

理由③ 突然始まる

育児は出産予定日がわかりますが、介護は親の急な入院や認知症の発症で突然始まります。準備期間がないまま、従業員は仕事と介護の両立を迫られます。


年代別に見る ── 介護リスクは「管理職世代」に集中する

介護の問題が経営にとって特に深刻なのは、介護を担う年代と、企業の中核を担う年代が重なるという点です。

年代 現在介護中の割合 5年以内に介護の
可能性がある割合
組織での一般的な役割
20代 低い 低い 若手社員
30代 低い 増加傾向 中堅・リーダー
40代 急増 非常に高い 課長・マネージャー
50代 最も高い 最も高い 部長・経営幹部
60代 高い 高い 役員・顧問・嘱託
💡 経営への影響
40〜50代は多くの企業で管理職・経営幹部層にあたります。この層が介護によってパフォーマンスを低下させたり、離職したりすることは、単なる「人員の欠員」ではなく組織のマネジメント機能そのものの毀損を意味します。代替人材の確保も容易ではなく、影響は長期にわたります。

育児と介護 ── 「両立支援」の本質的な違い

多くの企業は育児との両立支援には積極的に取り組んでいますが、介護との両立支援は手薄なのが実情です。その背景には、育児と介護の根本的な違いがあります。

比較項目 育児 介護
開始時期 予測可能(出産予定日) 予測困難(突然始まる)
期間 ある程度見通せる 終わりが見えない(平均5年以上)
状態の変化 成長とともに手が離れる 徐々に悪化する可能性が高い
該当する年代 20〜30代が中心 40〜50代(管理職層)が中心
性別差 女性に偏りがち 男女ほぼ同率(男性7.4% / 女性8.2%)
周囲への申告 比較的しやすい 言い出しにくい(取得率0.10%)
社会的な認知 制度・文化ともに整備が進んでいる 制度はあるが文化的な理解は不十分

特に注目すべきは性別差がほぼないという点です。育児は女性に偏りがちな構造がありますが、介護は男性も女性もほぼ同率で直面します。つまり、介護との両立支援は全従業員を対象とした施策として設計する必要があります。


介護離職の「見えないコスト」を可視化する

介護離職が発生した場合、企業が負担するコストは「退職者の給与分が浮く」という単純な話ではありません。

💰 管理職1名が介護離職した場合の影響(試算例)
採用コスト(人材紹介会社経由) 年収の30〜35%
≒ 250〜350万円
後任の育成・立ち上がり期間 6ヶ月〜1年
チームの生産性低下 3〜6ヶ月間
顧客・取引先への影響 定量化困難(関係性の損失)
組織知識・ノウハウの流出 定量化困難(不可逆的損失)
推定総コスト 年収の1.5〜2倍
≒ 1,000〜2,000万円

もし管理職が3人介護離職すれば、その影響は3,000〜6,000万円規模に達する可能性があります。一方、両立支援の仕組みを整えるための投資は、これよりはるかに少額で済みます。介護離職の予防は、コスト削減の観点からも合理的な経営判断です。


テーマ別評価制度との接続 ── 「介護との両立」は有力テーマ

第1回で解説した「テーマ別取組評価」の7つの既定テーマの中に、「仕事以外の事情(介護、治療、子育て等)と仕事の両立」が含まれています。

🎯 「介護との両立」をテーマに選ぶメリット
  • 社会的注目度が高い ── 2025年の育児・介護休業法改正もあり、国全体のテーマとして注目されている
  • まだ取り組んでいる企業が少ない ── 先行者メリットが大きく、事例として選ばれやすい
  • 全従業員に関わるテーマ ── 男女問わず対象となるため、施策の対象範囲が広い
  • 経営への直接的インパクトを示しやすい ── 離職防止効果を定量的に語れる

広がる「ライフデザイン経営」の視点 ── 介護だけでなく、人生全体を支える

第1回でも触れた通り、次年度の健康経営度調査票には「ライフデザイン経営」に関する新設問が加わります。介護との両立支援は、このライフデザイン経営の中核をなすテーマです。

ライフデザイン経営が包含する「仕事以外の事情」は、介護だけではありません。

👶
育児
🏥
介護
← 今回の焦点
💊
治療との両立
🌸
更年期
🤰
不妊治療

これらのライフイベントに共通するのは、「本人のパフォーマンスや意欲とは無関係に、仕事に影響を及ぼす」という点です。従来の「健康管理」の枠を超えて、従業員の人生全体を支える視点が、今後の健康経営では不可欠になります。


企業が今から始められる5つの取り組み

大規模な制度改革は必要ありません。まずは以下の5つから、できることを始めましょう。

① 実態を把握する ── 匿名アンケートの実施
まずは自社の介護状況を把握することが第一歩です。匿名のアンケートで「現在介護をしているか」「5年以内に介護が必要になる可能性があるか」を聞くだけで、経営層の危機意識が変わります。

② 情報を届ける ── 「介護の準備」セミナーの実施
介護が始まる前の「備え」として、介護保険制度の基礎知識、地域包括支援センターの活用法、介護サービスの種類などを学ぶ機会を提供します。「知っているだけで、いざというときの行動が変わる」── これが予防の本質です。

③ 相談窓口を設ける ── 言い出せる環境づくり
介護の相談は、直属の上司には言いにくいものです。人事部門や外部相談窓口(EAP)に「介護の相談もできる」ことを明示し、定期的にリマインドすることが重要です。

④ 柔軟な働き方を整える ── 制度の「使いやすさ」を重視
介護休業だけでなく、時差出勤、時短勤務、在宅勤務、時間単位の有給休暇など、柔軟な働き方の選択肢を複数用意します。第2回で紹介した通り、「時間単位の有給休暇」はエンゲージメント向上にも有意な効果があります。

⑤ 管理職の理解を深める ── 研修と意識改革
部下から介護の相談を受けたとき、適切に対応できる管理職はどれくらいいるでしょうか。管理職向けの研修で「介護を抱える部下のマネジメント」を学ぶ機会を設けることが、組織文化の転換につながります。


まとめ ── 「介護は福利厚生」から「介護は人的資本のリスクマネジメント」へ

今回の調査データが示す最も重要なメッセージは、介護との両立支援は「優しい会社のオプション」ではなく「経営を守るための必須施策」であるということです。

従業員の約3人に1人が5年以内に介護に直面する可能性がある中で、何も準備をしないことは、「管理職の3割が突然パフォーマンスを落とすリスク」を放置しているのと同じです。

健康経営のテーマ別評価においても、介護との両立はまだ取り組んでいる企業が少ない「ブルーオーシャン」です。今から取り組みを始め、実績とデータを積み上げておくことが、他社との差別化につながります。

次回(第5回・最終回)では、健康経営先進企業20社の具体的な取り組み事例を紹介します。「他社はどんな施策をしているのか」「自社に取り入れられるアイデアはあるか」── 実務に直結するヒントをお届けします。

次回 ▶ 第5回(最終回)
先進企業20社の事例に学ぶ ── 明日から使える健康経営の実践ヒント
介護と仕事の両立支援、何から始めますか?

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出典・参考資料
  • 健康長寿産業連合会「ワーキングケアラーに関する調査」健康経営先進企業18社・約9.7万人対象(第5回検討会 参考資料3-2)
  • 健康長寿産業連合会「健康経営先進企業事例集2026」(第5回検討会 参考資料3-1)
  • 経済産業省「第5回 健康経営推進検討会 事務局資料」(2026年3月17日)
  • 厚生労働省「令和4年就業構造基本調査」介護離職に関するデータ
📘 コラムシリーズ 第5回(最終回)/ 全5回

先進企業20社の事例に学ぶ
── 明日から使える健康経営の実践ヒント

📅 2026年5月 ✍️ ウェルネスドア合同会社

「制度は理解した。データも見た。で、具体的に何をすればいいの?」── シリーズ最終回では、この問いに答えます。第5回検討会で報告された健康長寿産業連合会「健康経営先進企業事例集2026」から、実際に成果を出している企業の取り組みを分析し、自社に取り入れるための実践ヒントを整理します。

事例集の概要 ── どんな企業が、何を語っているのか

「健康経営先進企業事例集2026」は、健康長寿産業連合会が健康経営に先進的に取り組む企業20社を取材し、その具体的な施策と成果をまとめたものです。

📊 事例集の特徴
  • 対象企業:大企業から中堅企業まで、業種も製造・金融・IT・小売と多様
  • 記載内容:施策の背景・具体的な取り組み内容・成果指標(KPI)・今後の展望
  • 共通する視点:経営トップのコミットメント、データに基づくPDCA、外部リソースの活用

以下では、事例集から読み取れる5つの共通パターンを抽出し、それぞれの実践方法を解説します。


パターン① 経営トップが「自分の言葉」で語る

事例集に掲載された企業に共通する最も顕著な特徴は、経営トップ自身が健康経営の意義を明確に語っていることです。「人事部がやっていること」ではなく「経営戦略の柱」として位置づけている企業が成果を出しています。

🏢 先進企業に見られる取り組み例
  • 社長メッセージとして「健康経営宣言」を社内外に発信
  • 経営会議の定例アジェンダに従業員の健康データを組み込み
  • 中期経営計画に健康経営のKPIを明記
  • トップ自ら健康イベント(ウォーキング大会等)に参加
💡 自社への取り入れ方
大企業のような大規模な宣言は不要です。社長がミーティングや社内報で「なぜ健康経営に取り組むのか」を自分の言葉で語るだけで、従業員の受け止め方は大きく変わります。テーマ別評価の「経営理念・方針」の評価項目にも直結するポイントです。

パターン② 「データ→課題→施策→効果測定」のPDCAを回す

成果を出している企業は例外なく、データに基づいて課題を特定し、施策を実行し、効果を測定するサイクルを回しています。「なんとなく健康イベントをやっている」企業との差はここにあります。

STEP 1
データで現状把握
健診結果・ストレスチェック
アンケート・勤怠データ
STEP 2
課題を特定
優先テーマの決定
ターゲット層の明確化
STEP 3
施策を実行
セミナー・研修・環境整備
アプリ・ツールの導入
STEP 4
効果を測定
事前・事後の比較
KPIの達成度確認

先進企業が活用しているデータの種類

データの種類 把握できること 活用先の例
定期健康診断結果 有所見率、BMI分布、血圧・血糖リスク者率 重点テーマの決定、経年変化の追跡
ストレスチェック 高ストレス者率、部署別の傾向 メンタルヘルス施策のターゲティング
生活習慣アンケート 運動・睡眠・食事・喫煙の実態 セミナーテーマの選定、施策前後の比較
勤怠データ 残業時間、有給取得率、休職率 ワークスタイル施策の効果検証
エンゲージメント調査 仕事満足度、働きがい、職場の信頼感 施策全体の成果指標、経営層への報告
💡 自社への取り入れ方
特別なシステムは不要です。定期健診の結果を経年で比較するだけでも、十分な「データドリブン」の出発点になります。第2回で紹介した通り、運動習慣者比率・睡眠充足率・適正体重維持率・喫煙率の4指標は、エンゲージメントとの関連が実証されています。この4つを毎年追跡するだけで、効果的なPDCAが回せます。

パターン③ 「参加しやすさ」を徹底的に設計する

どんなに良い施策でも、参加されなければ意味がありません。先進企業に共通するのは、「参加のハードルを下げる工夫」に最も力を入れていることです。

時間のハードルを下げる
  • 就業時間内にセミナーを実施
  • 30分〜45分の短時間プログラム
  • 録画配信で好きな時間に視聴可能
📍
場所のハードルを下げる
  • オンラインと対面のハイブリッド開催
  • 各拠点への出張セミナー
  • 交代勤務者向けの複数回開催
🎯
心理的ハードルを下げる
  • 体験型・参加型プログラムの導入
  • チーム対抗のウォーキングチャレンジ
  • インセンティブ(ポイント付与等)の活用
💡 自社への取り入れ方
「健康に興味がない人」こそ本来のターゲットです。先進企業は「意識が高い人向け」の施策から「全員が自然と参加できる」施策へとシフトしています。例えば、昼休みに10分間のストレッチを実施するだけでも、「わざわざ申し込む」必要がなくなり、参加率は大きく変わります。

パターン④ 健康保険組合・外部パートナーとの連携

先進企業の多くは、自社単独ではなく健康保険組合や外部の専門パートナーと連携して施策を推進しています。

🤝 連携の具体例
健康保険組合との「コラボヘルス」

健診データの共有・分析を健保組合と共同で実施。特定保健指導の実施率向上、重症化予防プログラムの共同運営、データヘルス計画との連動など、企業と健保が一体となって取り組む「コラボヘルス」が成果を上げています。

外部専門家の活用

健康セミナーの講師派遣、運動プログラムの企画・実施、メンタルヘルス研修の外部委託など。社内に専門人材がいなくても、外部パートナーの力を借りることで質の高い施策を展開できます。

デジタルツール・アプリの導入

歩数記録アプリ、食事管理ツール、睡眠記録アプリなどを全社導入し、日常的な健康行動を促進。第2回で紹介した通り、「日常的なデジタルツール」はエンゲージメント向上にも有意な効果があります。

💡 自社への取り入れ方
「全部自社でやろうとしない」ことが重要です。加入している健保組合にまず相談する、専門の外部パートナーに企画を任せる── この2つだけで、施策の質と範囲は大幅に広がります。特に中小企業にとっては、外部リソースの活用が成否を分けるポイントです。

パターン⑤ 「成果を可視化」して社内外に発信する

先進企業は、健康経営の成果を数字で可視化し、積極的に社内外に発信しています。これが施策の継続と拡大を支える原動力になっています。

発信先 発信内容の例 期待される効果
経営層 健康投資額と効果(離職率低下、プレゼンティーズム改善等) 予算確保・経営戦略への組み込み
従業員 施策の参加率、健康指標の改善推移、アンケート結果 参加意欲の向上・健康意識の醸成
投資家・取引先 統合報告書での健康経営KPI開示、認定ロゴの活用 企業価値・ESG評価の向上
求職者 採用サイトでの健康経営の取り組み紹介 採用競争力の強化
💡 自社への取り入れ方
まずは「セミナー参加者の満足度」「参加前後の意識変化」など、簡単に取れるデータから始めましょう。「セミナー参加者の95%が『役に立った』と回答」── このような数字が1つあるだけで、次の施策の社内承認は格段に取りやすくなります。

テーマ別 施策アイデアマップ ── 事例から抽出した実践リスト

事例集と本シリーズの内容を総合し、テーマ別評価の7テーマに対応する具体的な施策アイデアを整理しました。自社のテーマ選びと施策立案にお役立てください。

テーマ 施策アイデア 効果測定の指標例
女性の健康 女性特有の健康課題セミナー、更年期相談窓口、婦人科検診の補助拡充 婦人科検診受診率、相談窓口利用数、女性管理職の離職率
仕事との両立 介護準備セミナー、治療と仕事の両立支援制度、柔軟な勤務制度の整備 介護離職者数、両立支援制度の利用率、介護アンケート結果
メンタルヘルス ストレスマネジメント研修、ラインケア研修、EAP相談窓口の周知強化 高ストレス者率、メンタル不調による休職率、EAP利用数
運動機会の増進 出張フィットネス、ウォーキングチャレンジ、階段利用促進キャンペーン 運動習慣者比率、平均歩数、イベント参加率
食生活改善 食事栄養セミナー、社食メニュー改善、コンビニランチ選び方講座 BMI適正率、野菜摂取量、朝食欠食率
年齢配慮の職場 ロコモ予防プログラム、シニア向け体力測定会、エルゴノミクス研修 体力測定結果の推移、労災件数、シニア層の就業継続率
健康投資ROI 健康投資効果の可視化レポート、プレゼンティーズム測定、ROI試算 健康投資額対効果比、アブセンティーズム率、エンゲージメントスコア

シリーズ総まとめ ── 第5回検討会が示す「これからの健康経営」

全5回にわたってお届けしてきた本シリーズの要点を、最後に振り返ります。

第1回 4つの制度変更

Premier新設、テーマ別評価導入、中小企業向け優遇拡充、ライフデザイン経営の新設問。健康経営は「量」から「質」へ大転換。

第2回 エンゲージメントと業績

2,502社の分析で実証。エンゲージメントが高い企業は高収益の可能性1.65倍。運動・睡眠・適正体重がカギ。

第3回 中小企業への追い風

主要補助金のほぼ全てで加点、融資は最大0.65%優遇、ネクストブライト1000の新設。認定取得は「経営戦略」。

第4回 介護と仕事の両立

9.7万人調査で判明した「静かな人材危機」。5年以内に3人に1人が介護に直面。介護支援は人的資本のリスクマネジメント。

第5回 先進企業20社の事例(本記事)

トップのコミットメント、データドリブンなPDCA、参加しやすさの設計、外部連携、成果の可視化。5つのパターンが成功企業の共通項。


最後に ── 「完璧な準備」より「小さな一歩」を

5回にわたる本シリーズでお伝えしたかったのは、健康経営は「特別な企業がやる特別なこと」ではないということです。

制度は年々充実し、データによるエビデンスも蓄積され、先進企業の事例も公開されています。あとは、始めるだけです。

最初から完璧な計画は必要ありません。

  • まず健診データを見直す
  • 1つテーマを決めてセミナーを実施する
  • 参加者にアンケートを取って効果を記録する

この3つだけで、テーマ別評価に記載できる「取り組み実績」が生まれます。小さな一歩が、組織を変える大きな力になります。

その一歩を、ウェルネスドアと一緒に。

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「何から始めればいいかわからない」── そのご相談が、最初の一歩です。

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出典・参考資料(本シリーズ全体)
  • 経済産業省「第5回 健康経営推進検討会 事務局資料(今年度の認定状況と今後の方向性について)」(2026年3月17日)
  • 健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「令和7年度健康経営優良法人認定の分析及びご報告」
  • 順天堂大学 矢野裕一朗教授ら「日本企業における企業施策・健康管理施策と従業員エンゲージメントの関連」
  • 健康長寿産業連合会「健康経営先進企業事例集2026」(第5回検討会 参考資料3-1)
  • 健康長寿産業連合会「ワーキングケアラーに関する調査」(第5回検討会 参考資料3-2)
  • 日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金」制度概要