EXPERT INSIGHT ─ Diet & Nutrition

2025年度〜2029年度 適用

食事摂取基準 2025年版
完全ガイド
── 7つの改定ポイントと
明日から職場で活かす食事改善のヒント

「食事摂取基準」は管理栄養士だけのものではありません。
2025年版の改定内容はすべての働く人の食生活に直結する変更を多く含んでいます。

📊 この記事のポイント

  • 厚生労働省が5年ぶりに改定、2025〜2029年度に適用
  • 骨粗鬆症が新たに追加 ── 「メタボ予防」から「生活機能の維持」へ
  • ビタミンD目安量が8.5 → 9.0 μg/日に引き上げ
  • 食物繊維の目標量を年齢区分ごとに再整理
  • 鉄の耐容上限量が撤廃、ビタミンB12は目安量に変更
  • 企業の健康経営・食生活改善施策への活用ポイントも解説

「食事摂取基準」と聞くと、管理栄養士や医療従事者のための専門資料というイメージがあるかもしれません。しかし、2025年版の改定内容はすべての働く人の食生活に直結する変更を多く含んでいます。

骨粗鬆症の追加、ビタミンDの引き上げ、食物繊維目標量の見直し──。この記事では、改定のポイントを7つに整理し、「結局どう食べればいいの?」という疑問に答えます。企業の健康経営・食育施策へ活かすヒントも、あわせてお届けします。

第1章:そもそも「日本人の食事摂取基準」とは?

「日本人の食事摂取基準」は、健康増進法に基づき厚生労働省が策定する公的な食事ガイドラインです。国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防を目的に、エネルギー及び34種類の栄養素について、摂取量の基準値を示しています。

  • 策定周期:5年ごとに改定(2020年版 → 2025年版)
  • 2025年版の位置づけ:2024年10月に策定検討会報告書が公表、2025年4月から適用開始
  • 対象栄養素:エネルギー+たんぱく質・脂質・炭水化物+ビタミン13種+ミネラル13種 = 合計34種類+エネルギー
  • 政策連動:健康日本21(第三次)の方針を踏まえ、生活習慣病の発症予防・重症化予防に加え、「生活機能の維持・向上」の視点が強化

一般の方にとっては「毎日の食事でどの栄養素をどれくらい摂ればいいか」を知るための最も信頼性の高い「ものさし」です。

第2章:【2025年版】押さえるべき7つの改定ポイント

2020年版からの主な変更点を、7つのポイントに整理しました。

1骨粗鬆症が「対象疾患」に新たに追加

2020年版の対象疾患は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・CKD(慢性腎臓病)の4疾患でした。2025年版では骨粗鬆症が5つ目の対象疾患として追加されました。

なぜ重要? 高齢化社会の進展に伴い、骨折→要介護のリスクがクローズアップされています。食事摂取基準が「メタボ予防」だけでなく「骨の健康=生活機能の維持」を明確に射程に入れた、大きな転換点です。

2ビタミンDの目安量が引き上げ

18歳以上のビタミンD目安量が 8.5 μg/日 → 9.0 μg/日 に引き上げられました。

改定の背景:骨密度維持に重要な血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の参考値が整理されました。日本人は日照不足や魚離れにより慢性的に不足しやすいとされています。
食品例:サケ・サンマなどの魚類、卵黄、きのこ類、+適度な日光浴(1日15〜30分)

3食物繊維の目標量を年齢区分ごとに再整理

成人の食物繊維目標量が年齢区分ごとにきめ細かく設定されました。

年齢区分 2020年版
(男/女 g/日)
2025年版
(男/女 g/日)
18〜29歳 21以上 / 18以上 21以上 / 18以上
30〜49歳 21以上 / 18以上 22以上 / 18以上
50〜64歳 21以上 / 18以上 22以上 / 18以上
65〜74歳 20以上 / 17以上 20以上 / 17以上
75歳以上 20以上 / 17以上 20以上 / 17以上

現実とのギャップ:国民健康・栄養調査(令和元年)による実際の摂取中央値は約13〜15g/日。目標量に対して5〜8g不足している状況です。

4鉄の耐容上限量が撤廃

食事からの鉄摂取では健康障害の報告が見当たらないとの判断から、耐容上限量(UL)が撤廃されました。

⚠ 注意:あくまで「通常の食品からの摂取」が対象。サプリメントや鉄剤での過剰摂取には引き続き注意が必要です。

5ビタミンB1の策定根拠を変更

従来の尿中排泄量に基づく方法から、赤血球中のトランスケトラーゼ活性を指標とする方法に変更。生体指標(バイオマーカー)を活用した、より科学的根拠に基づいた基準値となりました。

6ビタミンB12が「目安量」に変更

2020年版では「推定平均必要量(EAR)・推奨量(RDA)」が設定されていましたが、科学的根拠の再評価により「目安量(AI)」に変更されました。

7身体活動レベルの表記・数値を一部変更

表記が「Ⅰ(低い)・Ⅱ(ふつう)・Ⅲ(高い)」から「低い」「ふつう」「高い」のシンプルな日本語表記に変更。

数値変更:65〜74歳:低い 1.45→1.50、高い 1.95→1.90/75歳以上:ふつう 1.65→1.70。高齢者のエネルギー必要量の推定に影響するため、給食管理や栄養指導で確認が必要です。

💡 専門家の視点:基準は「ものさし」であり、「ルール」ではない

食事摂取基準は「毎日1g単位で守らなければならないルール」ではありません。自分の食生活を振り返り、不足しやすい栄養素や偏りに気づくための「ものさし」です。法人支援の中で、健康セミナーで最も反響が大きいのが食生活のテーマ。「知っていたつもり」が「実は違った」に変わる瞬間に、行動変容が始まります。

第3章:今日からできる、食事改善の実践ヒント

改定内容を踏まえて、「結局、何をどう変えればいいのか?」を5つの切り口でまとめました。

🌾

食物繊維を+5g

白米→雑穀米に変える、味噌汁にきのこ・わかめを足す、もう1品に豆・海藻の小鉢を追加。コンビニならもずく酢ごぼうサラダが手軽です。

☀️

ビタミンD = 魚+日光

週3回はサケ・サバ・サンマなどの魚を主菜に。きのこ類も日常的に。加えて、1日15〜30分の日光浴で体内合成を促進。

🍖

たんぱく質は毎食確保

毎食、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを1品確保。特に朝食でたんぱく質が不足しがち。ヨーグルト・卵・納豆がお手軽です。

🦴

骨の健康 = トリプル対策

カルシウム+ビタミンD+適度な運動の3点セット。牛乳・小魚でカルシウム、魚・きのこでビタミンD、ウォーキングや筋トレで骨に刺激を。

🧓

高齢者は「あっさり」だけで済ませない

食欲が落ちやすい高齢者は、少量でもたんぱく質を意識して摂ることが重要です。おかずが減りやすい昼食に卵焼き・豆腐・チーズをプラスする工夫が効果的。低体重(BMI 20未満)はフレイルや骨折のリスクを高めます。

第4章:企業の健康経営に、食事摂取基準をどう活かすか

健康経営優良法人の認定項目には「食生活の改善に向けた取り組み」が含まれています。食事摂取基準の改定内容を反映することで、施策の質と説得力が向上します。

活用シーン 具体的なアクション例
食育セミナー 「2025年版で何が変わった?」をテーマに、管理栄養士監修の全社セミナーを開催。コンビニランチでの実践例も紹介
社食・自販機の改善 食物繊維・ビタミンDを意識したメニューをハイライト。カロリー表示に加え「食物繊維●g」の見える化
健診結果と連動 骨密度検査、脂質異常の有所見者に、食事摂取基準を根拠とした食事アドバイスを個別フィードバック
食事チャレンジイベント 「1週間で食物繊維+5gチャレンジ」「朝食にたんぱく質を摂ろうウィーク」など、短期間・低コストで実施可能

食生活改善とプレゼンティーイズムの関係:朝食欠食は午前中のパフォーマンス低下に直結し、偏った食事は倦怠感・集中力低下の原因になります。食事改善はプレゼンティーイズムの改善に最も低コストで取り組める施策の一つです。

💡 専門家の視点:「何を食べるか」より「何を足すか」

「何を食べればいいか」ではなく「今の食事に何を足すか」。この問いの転換が、忙しいビジネスパーソンの行動変容の鍵です。当社では、コンビニランチでも実践できる栄養バランスの取り方など、現実的なアプローチを重視した食事セミナーを提供しています。制限ではなく「選び方」を変える。それが継続の秘訣です。

よくある質問(FAQ)

Q. 基準を全部守れないと意味がありませんか?

いいえ。食事摂取基準は「習慣的な摂取量の目安」であり、1日ごとに厳密に守るものではありません。1週間〜数週間単位で「だいたいこの範囲」を意識することが大切です。

Q. サプリメントで補えばよいのでしょうか?

基本は食事から摂取することが原則です。ただし、ビタミンDなど食事だけでは不足しやすい栄養素については、医師や管理栄養士に相談の上でサプリメントを活用することも選択肢の一つです。

Q. 持病がある人も、この基準をそのまま使ってよいですか?

食事摂取基準は健康な人および生活習慣病の予防を目的として策定されています。糖尿病、腎臓病、高血圧などで食事療法を行っている方は、主治医や管理栄養士の指示が優先されます。

まとめ:2025年版 食事摂取基準の重要ポイント

  1. 骨粗鬆症が対象疾患に追加 → 「メタボ予防」から「生活機能の維持・向上」へ
  2. ビタミンD目安量引き上げ(8.5→9.0μg/日)→ 魚+日光浴を意識
  3. 食物繊維の目標量を年齢別に再整理 → 現実の摂取量は5〜8g不足
  4. 鉄の耐容上限量を撤廃 → 食事からの摂取は安全、サプリは注意
  5. ビタミンB1はバイオマーカー基準に、ビタミンB12は目安量に変更
  6. 身体活動レベルの表記・数値を一部修正
  7. 企業の食育施策に反映させることで、健康経営の質が向上

食事は毎日のことだからこそ、「ちょっとした知識」が行動を変え、長期的な健康を支えます。この記事が、あなたの食生活と、職場の健康施策を見直すきっかけになれば幸いです。

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執筆・監修:狩野 学(かりの まなぶ)

ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。食生活改善セミナー、運動施策、ストレスケアまで一気通貫で支援。

【参考文献・出典】

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月)
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
  • 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
  • 桒原晶子ほか「日本人の食事摂取基準(2025年版)の概要と食事摂取基準における今後の課題」栄養学雑誌, 2025.
  • Reynolds A, et al. "Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses." The Lancet, 2019; 393(10170):434-445.
  • WHO "Guideline: sugars intake for adults and children." 2015. / WHO "Healthy diet fact sheet." 2020.
  • 経済産業省「健康経営ガイドブック」2025年3月改訂版
  • ACTION! 健康経営 ポータルサイト「健康経営優良法人2026 認定要件」

【免責事項】本記事は栄養・健康に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の健康上の問題や食事療法については、必ず医師・管理栄養士にご相談ください。