経営者・CFO・CHRO必読
健康経営銘柄44社・認定26,850社──過去最高を更新。
認定企業の売上増加率は非認定の1.5倍、ROI中央値6.0倍。
健康投資が企業価値に変換されるメカニズムを
バリューチェーンで可視化する。
監修:ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学 | 2026年6月 更新
健康経営KPI 50選を見る 無料相談・お問い合わせKEY METRICS ── 健康経営の経営効果を示す6つの数字
44社
健康経営銘柄2026
28業種から選定
1.5倍
認定企業の売上増加率
vs 非認定(帝国データバンク)
6.0倍
健康投資の
ROI中央値
26,850社
健康経営優良法人2026
過去最高の認定数
77.9%
プレゼンティーイズム
が占める健康関連コスト
TOPIX
超過
低PBR×銘柄企業の
株価パフォーマンス
「健康経営に取り組みたいが、経営会議で"それは福利厚生では?"と言われてしまう」──そんな声を、何度も聞いてきました。
答えは明確です。健康経営は「コスト」ではなく「投資」であり、その効果は売上・利益・株価・採用力にまで波及することが、多数のエビデンスで示されています。
健康経営優良法人の認定数は26,850社(2026年)に達し、健康経営銘柄には28業種44社が選定されました。2026年度には通算10回以上選定企業を顕彰するPremier制度も新設。もはや健康経営は「やるかやらないか」ではなく、「どれだけ質を高められるか」の競争フェーズに入っています。
本コラムでは、健康経営が企業価値を高めるメカニズムをバリューチェーンで可視化し、売上効果・株価効果・採用効果を最新データで裏付けます。
SECTION 01
健康投資が企業価値に変換されるプロセスは、以下のバリューチェーンで表されます。
💰
健康投資
セミナー・運動指導
環境整備・検診強化
👥
人的資本の蓄積
心身の健康・リテラシー
信頼・心理的安全性
📈
パフォーマンス向上
プレゼンティーイズム改善
離職率低下・生産性UP
🏆
企業価値向上
売上・利益・株価
採用力・ブランド
ガイドブック2025が示す新概念──3つの資本
2025年3月、健康経営優良法人認定事務局は約10年ぶりに健康経営ガイドブックを改訂。健康投資が効果を生む要素として3つの資本を定義しました。
・人的資本:従業員の心身の健康、ヘルスリテラシー、スキル
・社会関係資本:組織内の信頼、コミュニケーション、心理的安全性
・企業の健康風土:上記2つを強化する「触媒」としての組織文化
健康経営の進化ステージ
1.0
健診・ストレスチェック
「やっている」レベル
2.0
戦略マップ+PDCA
「質を高めている」レベル
3.0
ROI+情報開示
「成果で語れる」レベル
SECTION 02
帝国データバンク調査 ── 認定企業 vs 非認定企業
認定企業
3.7%
売上高増加率(中央値)
非認定企業
2.4%
売上高増加率(中央値)
認定企業は非認定の約1.5倍の売上成長率
認定企業が実感している効果(複数回答)
・従業員満足度向上 48.8%
・組織活性化 37.5%
・応募・採用増加 34.3%
・生産性向上 22.4%
プレゼンティーイズム ── 最大の「見えない損失」
出勤しているがパフォーマンスが低下している状態。健康関連コストの77.9%を占め、1人あたり年間約56万円の損失。
23.9%
腰痛・肩こり
8.5%
うつ・不安
7.8%
花粉症
ROI試算例(1,000人企業)
プレゼンティーイズムを5%改善した場合:56万円 × 5% × 1,000人 = 年間約2,800万円の生産性回復。中央値のROI 6.0倍は、健康投資が優れた経営投資であることを示しています。
SECTION 03
健康経営銘柄2026
・経産省×東証が28業種から44社を選定
・Premier制度を2026年度から新設:通算10回以上選定企業を顕彰
・要件:①通算10回以上 ②当該年選定 ③普及活動を実施
・該当9社:花王、TOTO、テルモ、SCSK、アシックス、丸井G、コニカミノルタ、大和証券G本社、大日本印刷
株価パフォーマンス検証
・銘柄企業のROEはTOPIXをやや上回る水準
・低PBR×健康経営銘柄:過去5年間でTOPIXを上回る傾向
・銘柄発表当日のアナウンス効果:+0.15%(統計的に有意)
・解釈:「健康経営は株価を直接押し上げる」のではなく、中長期的な企業価値の"下支え"として機能
ESG投資との接続
・健康経営はESGの「S(社会)」項目で投資家から評価
・GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人):ESG要素と企業価値の関係を定量分析(2025年6月報告)
・人的資本開示(2023年3月〜有価証券報告書で義務化)との連動
・統合報告書に健康経営データを掲載する企業が増加中
SECTION 04
2.5%
銘柄企業の離職率
(全国平均11%の約1/4)
54.5%
20代が健康経営認定に
「賛成」と回答
93万円
1人あたり採用コスト
(マイナビ2024)
離職率が全国平均の約1/4である銘柄企業の例は、健康経営が「人材を惹きつけ、引き留める力」を持つことを示しています。1人の離職を防ぐだけで93万円以上の採用コストが節約でき、さらに教育・引き継ぎ・生産性低下のコストまで含めれば、その数倍の効果があります。
中小企業向けインセンティブ
・補助金加点:ものづくり補助金・IT導入補助金・事業再構築補助金等でほぼ全対象
・融資優遇:日本政策金融公庫の特別利率(基準利率−0.25%)
・自治体優遇:横浜市・大阪市など、独自の認証制度+入札加点を導入
・保険料割引:損保・生保各社が健康経営認定企業向けの団体保険割引を拡大
EXPERT INSIGHT
健康経営の効果を「従業員が元気になる」レベルで語っている企業と、「プレゼンティーイズムが5%改善し、年間2,800万円の生産性が回復した」と語れる企業では、経営会議での説得力が全く違います。
データで語れるかどうか──それが、健康経営が「コスト」に見えるか「投資」に見えるかの分水嶺です。
── ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学
SECTION 05
2026年度の健康経営制度は、経産省の第5回推進検討会の方針に基づき、3つの方向性で進化します。
🔎
可視化と質の向上
テーマ別取組評価
ベストプラクティス公表
PDCAの厳格化
🌎
新市場の創出
国際展開・PHR活用
ヘルスケア産業育成
アジア健康構想
👥
社会への浸透・定着
ステークホルダー全体
ライフデザイン経営
CSV経営との接続
2026年度の具体的変更点
・テーマ別取組評価:7つの既定テーマ+最大3つの自由設定テーマ
・大規模10社・中小40社をベストプラクティスとして公表
・中小規模の必須選択項目:15問中7問 → 17問中8問に引き上げ
・Premier制度:通算10回以上の銘柄選定企業を新たに顕彰
・ライフデザイン経営に関する新設問(現段階はアンケート)
・パフォーマンス指標(プレゼンティーイズム等)の成果開示が上位認定の鍵
なぜ「成果開示」が重要なのか
株主・投資家・求職者は、「どんな施策をしているか」ではなく「その施策で何が変わったか」を知りたがっています。プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、離職率、エンゲージメントスコアなどの成果指標を開示できる企業が、次の認定・銘柄選定で優位に立ちます。
EXPERT INSIGHT
健康経営は「福利厚生の延長」から「人的資本経営の土台」へと明確に位置づけが変わりました。
ガイドブック2025が示す新概念──「人的資本」「社会関係資本」「健康風土」──は、健康投資が単なる医療費削減ではなく、組織の競争力そのものを高める投資であることを意味しています。この認識の転換ができた企業だけが、次の10年を勝ち残ります。
── ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学
FAQ
Q. 健康経営のROIはどのように算出するのですか?
代表的な方法は「プレゼンティーイズム損失額の改善分 ÷ 健康投資額」です。厚労省の東大1項目版で測定し、年間の損失改善額を算出します。ガイドブック2025では「健康投資管理会計」のフレームワークが整理されています。
Q. 中小企業でも健康経営のROIは期待できますか?
はい。中小企業では1人の離職や長期休業の影響が大きいため、少人数でもROIが高くなりやすい傾向があります。また、認定取得による補助金加点・融資優遇・保険料割引などの「間接的ROI」も大きな効果をもたらします。
Q. 健康経営銘柄に選定されると株価は上がりますか?
野村證券の検証(2026年3月)では、発表当日に+0.15%のアナウンス効果が確認されています。ただし「健康経営=即座に株価上昇」ではなく、中長期的に企業価値を下支えする要因と解釈するのが適切です。
Q. 経営層を説得するにはどのデータが効果的ですか?
①自社のプレゼンティーイズム損失額の試算、②帝国データバンクの売上成長率比較(1.5倍)、③離職防止による採用コスト削減試算、④補助金・融資優遇の金額──この4つを組み合わせると、最も説得力のあるビジネスケースが構築できます。
SUMMARY
・健康投資は「コスト」ではなく、ROI 6.0倍の「戦略的投資」
・認定企業の売上増加率は非認定の約1.5倍(帝国データバンク)
・低PBR×健康経営銘柄はTOPIXを上回る傾向(野村證券)
・銘柄企業の離職率は全国平均の約1/4(2.5% vs 11%)
・2026年度は成果開示・テーマ別評価・Premier制度が分水嶺
・健康経営は「人的資本経営の土台」(ガイドブック2025)
参考文献・根拠
・経済産業省「健康経営銘柄2026選定企業紹介レポート」(44社・Premier制度新設)
・野村證券「健康経営銘柄のパフォーマンス検証」(2026年3月)
・帝国データバンク「健康経営に対する企業の取り組み状況」(売上増加率1.5倍)
・健康経営ガイドブック2025(認定事務局 / 3つの資本・健康投資管理会計)
・大和総研「2026年度の健康経営の注目点」
・東京海上ディーアール「ガイドブック2025のポイント」
・ACTION!健康経営ポータルサイト(認定数26,850社)
・GPIF「ESG活動報告」(2025年6月)
・横浜市立大学「健康経営のROI」(中央値6.0倍)
・マイナビ「就職モニター調査」(2024年 / 採用コスト93万円)
・厚生労働省保険局「コラボヘルスガイドライン」(プレゼンティーイズム77.9%)
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の経営・投資判断を代替するものではありません。具体的な判断は専門家にご相談ください。