「時間やコストをかけて育てた若手社員が、数年で辞めてしまう…」
多くの経営者や人事担当者が、このような悩みを抱えています。「最近の若手は忍耐力がない」と片付けてしまうのは簡単ですが、問題の本質はそこにはありません。
デロイトが世界44カ国・23,000人以上を対象に実施した「2026 Gen Z and Millennial Survey」によれば、Z世代がキャリアで最も重視するのは「学習・成長機会」「ワークライフバランス」「心身の健康」の3つ。管理職を目指すと答えたZ世代は、わずか6%に過ぎません。彼らは出世よりも、「ウェルビーイング(Well-being)」──身体的・精神的・社会的に良好な状態──を重視しているのです。
この記事では、国内外の最新調査データを網羅的に分析し、Z世代に選ばれ、長く活躍してもらうための「ウェルビーイング経営」を解説します。
まず、日本における若手離職の実態を最新データで確認しましょう。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 大卒・3年以内離職率 | 33.8% | 厚労省(令和4年3月卒) |
| 大卒・1年以内離職率 | 12.1% | 厚労省(令和4年3月卒) |
| 高卒・3年以内離職率 | 37.9% | 厚労省(令和4年3月卒) |
| 20~24歳の年間離職率 | 28.9% | 厚労省 雇用動向調査(令和5年) |
| 新入社員「辞めたいと思った」割合 | 34.0% | マイナビ転職(2025年) |
大卒の3人に1人が3年以内に辞めている──これは一部の企業だけの問題ではなく、日本全体の構造的課題です。さらに令和6年の雇用動向調査では、20~24歳の離職率は全世代平均(14.2%)の約2倍となっています。
では、Z世代は何を理由に辞め、何があれば残るのでしょうか。国内外の最新調査を横断的に分析すると、明確な答えが浮かび上がります。
2026年卒の新社会人479名を対象にした調査では、60%以上が「心身を壊さずに長く働ける環境」を最も期待すると回答。「上司とフラットに話せる関係」(50.8%)よりも、「理不尽に怒られない・精神的に追い詰められない」環境が上回りました。
出典:僕と私と株式会社「新生活に関する実態調査」(2026年3月)
従業員1,000名を対象とした帝国データバンクの調査では、勤め先が「健康経営」に取り組むことに20代で54.5%、30代で53.0%が「賛成」と回答。これは40代(46.0%)や50代(42.5%)を大きく上回ります。さらに、健康経営に取り組む企業で「働き続けたい」と答えた人は全体の52.4%にのぼりました。
出典:帝国データバンク「健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析(従業員アンケート)」(2024年)
デロイトの2026年グローバル調査では、Z世代の55%が「経済的理由で結婚・出産などの重要な人生の決断を先延ばしにしている」と回答。転職理由のトップ3は「より良い給与」「仕事に目的を感じたい」「心身の健康を守りたい」で、給与だけでなく「意味」と「ウェルビーイング」が不可欠な条件となっています。
出典:Deloitte「2026 Gen Z and Millennial Survey」(44カ国・23,000人以上)
また、リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2025」では、Z世代が求める職場の特徴として「お互いに助けあう」が69.4%で圧倒的1位。仕事で重視することは「成長」(35.1%)と「貢献」(23.8%)が上位を占め、「競争」はわずか3%でした。
つまり、Z世代は「心身の安全が保障され、成長でき、助け合える環境」を求めています。これはまさに、ウェルビーイング経営そのものです。
2026年5月に発表された「全国1万人従業員エンゲージメント調査」(アジャイルHR・インテージ共同研究)は、衝撃的な事実を明らかにしました。
20代で比較的高かったエンゲージメントは、30代で急落します。特に「組織コミットメント(会社への愛着)」の落ち込みが激しく、50代まで低空飛行が続きます。つまり、20代の若手を支えるケアが途切れた瞬間、30代の中核人材が「静かに離脱」していくのです。
出典:アジャイルHR「2026年版 第4回全国1万人従業員エンゲージメント調査」
また、パーソル総合研究所の「はたらく人のウェルビーイング実態調査2025」によると、「はたらく幸せを感じている人」の割合は40.8%にとどまり、2020年から3.1ポイント低下。ウェルビーイングの認知度は27.1%に上昇しているものの、実態は悪化傾向にあることがわかっています。
一方で、HR総研の「2025年度 新入社員のエンゲージメント合同調査」では、「組織エンゲージメント(組織全体への愛着)」が高い新入社員ほど、残留意向が顕著に高いことが実証されています。つまり、ウェルビーイングへの投資は「なんとなく良いこと」ではなく、定着率に直結するビジネス戦略なのです。
最新の調査データから導き出された、明日から実践できる4つのアプローチをご紹介します。
リクルートMSの調査で、Z世代は上司に「意見や考え方に耳を傾けること」を約半数が期待しています。専門のカウンセラーに相談できる窓口を設置するのはもちろん、上司との定期的な1on1ミーティングを制度化しましょう。ポイントは「業務の話」だけでなく「キャリアやプライベートの悩み」も話せる場にすること。Z世代は週1回のチェックインを好む傾向があり(73%が週次を希望)、メンタル不調の早期発見とエンゲージメント向上の両方に効果があります。
帝国データバンクの従業員調査では、健康経営で重要な取り組みとして「休暇取得の推進」(54.8%)と「長時間労働の是正」(54.7%)がトップ2。特に女性は「勤務時間・制度の多様化(フレックス制、育児・介護・病気との両立支援など)」への期待が高くなっています。時間単位の有給休暇制度やカフェテリアプラン(与えられたポイント内で自己啓発、リフレッシュ、健康増進など好きなメニューを選べる制度)は、心身の健康維持に直結する人気の高い施策です。
デロイト2026年調査で、Z世代の70%が週1回以上スキルを磨いていると回答。マイナビの調査でも、新入社員が辞めない条件の上位に「仕事内容が向いている」「努力や貢献が賃金で評価される」が入っています。具体的には、スキルマップの明示、キャリアパスの可視化、リスキリング・学習機会の提供が有効です。「この会社にいれば成長できる」という実感が、最も強い定着要因になります。
若手の離職コストは、採用費・教育費だけではありません。出勤しているのに心身の不調でパフォーマンスが落ちる「プレゼンティーズム」は、企業の健康関連コストの約77.9%を占めるとされています。例えば従業員50人・平均年収400万円の企業では、プレゼンティーズムによる損失は年間約5,000万円にのぼる試算も。この「見えない損失」を数字で経営層に示すことが、ウェルビーイング投資の第一歩です。
重要なのは、これらの制度を導入する際に「なぜこれを行うのか」という経営者の想いやビジョンをしっかりと発信することです。HR総研の調査では、新入社員の定着に最も影響するのは「会社支援」──つまり「この会社は自分の成長と健康を本気で支えてくれている」という実感でした。制度の導入以上に、その背景にある経営者のコミットメントが伝わった時、若手社員は初めて会社への信頼と貢献意欲を高めるのです。
若手社員の離職は、単なる労働力不足以上のものを会社から奪います。それは、新しい視点、活気、そして未来の可能性そのものです。
Z世代は「忍耐力がない」のではなく、「納得できない環境を、早く見切る世代」です。裏を返せば、仕事の意味が明確で、成長の道筋が見え、心身の安全が保障された環境が揃えば、驚くほど定着します。
彼らのウェルビーイングに投資することは、目先のコストではなく、イノベーションが生まれやすい企業文化を育み、持続的な成長を実現するための最も確実な経営戦略です。貴社も「選ばれる会社」になるための一歩を踏み出してみませんか?
【情報源】
「時間やコストをかけて育てた若手社員が、数年で辞めてしまう…」
多くの経営者や人事担当者が、このような悩みを抱えています。「最近の若手は忍耐力がない」と片付けてしまうのは簡単ですが、問題の本質はそこにはありません。彼らは、自身のキャリアや人生において「ウェルビーイング(Well-being)」、つまり身体的・精神的・社会的に良好な状態を、上の世代以上に重視しているのです。
この記事では、Z世代のリアルな本音をデータで解き明かし、彼らに選ばれ、長く活躍してもらうための「ウェルビーイング経営」について解説します。
私たちは、従業員1,000名を対象としたアンケート調査を実施しました。そこから見えてきたのは、若手世代の切実な声です。
勤務先が「健康経営優良法人」の認定取得に取り組むことについて、20代で54.5%、30代で53.0%が「賛成」と回答。これは、40代(46.0%)や50代(42.5%)を大きく上回る数字です。
彼らは、単に給与や待遇が良いだけでなく、「会社が自分の心と身体の健康を大切にしてくれるか」を、企業選びの重要な基準としているのです。
また、会社に期待する取り組みとして、「メンタルヘルス対策の充実」や「柔軟な働き方の導入(フレックスタイム、時間単位休暇など)」が上位に挙がりました。長時間労働の是正といった”マイナスをゼロにする”取り組みだけでなく、個々の幸福度を高める”ゼロをプラスにする”施策が求められていることがわかります。
では、具体的にどのようなアプローチが若手の心に響くのでしょうか。明日から実践できる2つのポイントをご紹介します。
Z世代は、自分の意見が尊重され、安心して挑戦できる環境を求めます。専門のカウンセラーに相談できる窓口を設置するのはもちろん、上司との定期的な1on1ミーティングを制度化し、「業務の話」だけでなく「キャリアやプライベートの悩み」も気軽に話せる場を設けることが極めて重要です。これにより、メンタル不調の早期発見だけでなく、エンゲージメントの向上にも繋がります。
画一的な福利厚生ではなく、個々のライフスタイルや価値観に合わせて選択できる制度が好まれます。例えば、カフェテリアプラン(与えられたポイント内で、自己啓発、リフレッシュ、健康増進など好きなメニューを選べる制度)の導入は有効です。また、「体調が優れない時に半日だけ休む」といった時間単位の有給休暇制度は、心身の健康維持に直結する人気の高い制度です。
重要なのは、これらの制度を導入する際に「なぜこれを行うのか」という経営者の想いやビジョンをしっかりと発信することです。「私たちは、社員一人ひとりのウェルビーイングを本気で考えている」というメッセージが伝わった時、若手社員は初めて会社への信頼と貢献意欲を高めるのです。
若手社員の離職は、単なる労働力不足以上のものを会社から奪います。それは、新しい視点、活気、そして未来の可能性そのものです。
彼らのウェルビーイングに投資することは、目先のコストではなく、イノベーションが生まれやすい企業文化を育み、持続的な成長を実現するための最も確実な戦略です。貴社も「選ばれる会社」になるための一歩を踏み出してみませんか?
【情報源】
・帝国データバンク「健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析(従業員アンケート)」