2026年度 健康経営認定対応

更年期と仕事の両立ガイド
── 経済損失1.9兆円時代に、企業ができる5つのこと

📊 この記事の注目データ

  • 更年期症状による経済損失は年間約1.9兆円(経済産業省 2024年試算)
  • 重い症状を持つ女性の43.6%が退職を検討17.2%が実際に離職
  • 症状がある時のパフォーマンスは平均約50%に低下(パーソル総研 2024)
  • 40・50代正社員の約4割が軽度以上の更年期症状を保有
  • 2026年度 健康経営度調査で「女性の健康課題」が評価項目として強化

「最近、急に集中力が続かない」「会議中にめまいがして辛い」「理由のない不安やイライラが止まらない」──
40代後半から50代にかけて、多くの方がこうした変化を経験します。それが更年期です。

更年期は女性の約半数に何らかの症状をもたらし、そのうち約1割は日常生活に支障をきたすとされています。
問題は、この症状のピークがキャリアの円熟期と完全に重なること。
管理職への昇進、プロジェクトリーダーへの抜擢、後進の育成──
企業にとって最も「手放したくない人材」が、最も離職リスクが高い時期を迎えているのです。

この記事では、最新のデータと制度動向をもとに、企業が今すぐ着手できる更年期支援の5つのステップを体系的に解説します。

1|更年期とは ── 「個人の問題」ではなく「経営課題」

更年期とは、閉経の前後各5年間、合計約10年間を指します。日本人女性の閉経年齢の中央値は約50.5歳であり、一般的に45~55歳がこの時期にあたります。

エストロゲン(女性ホルモン)の急激な減少により、「ホットフラッシュ」だけでなく、多岐にわたる症状が現れます。

身体的症状

ホットフラッシュ・発汗 / めまい・動悸 / 頭痛・肩こり / 関節痛・筋肉痛 / 疲労感・倦怠感 / 手指のこわばり

精神的・認知的症状

不眠・中途覚醒 / 気分の落ち込み・不安 / イライラ・感情の波 / 集中力の低下 / 記憶力低下(ブレインフォグ) / 意欲の減退

職場で見落とされがちなポイント:ホットフラッシュのような「見える症状」よりも、ブレインフォグ(頭にモヤがかかる状態)や不眠による慢性疲労のほうが仕事への影響が大きいとされています。「なんとなく調子が悪い」状態が何か月も続くことで、パフォーマンスが通常の約50%まで低下することがパーソル総研(2024)の調査で示されています。

2|データが示す「更年期の壁」の深刻さ

年間経済損失

1.9兆円

経済産業省 2024

退職を検討

43.6%

重症女性のうち

パフォーマンス

~50%

症状時の低下率

症状を保有

~4

40-50代正社員

経済損失の内訳(女性・更年期症状、経済産業省推計)

損失要因 推計額 解説
パフォーマンス低下 約5,600億円 出勤しているが集中力・判断力が低下(プレゼンティーイズム)
離職 約1.0兆円 経験・スキルの喪失 + 代替人材の採用・育成コスト
欠勤 約1,600億円 症状による休職・欠勤日数
追加採用コスト 約1,500億円 離職補充のための採用・研修コスト

パーソル総研(2024)の7,000人以上を対象とした調査では、40・50代正社員の男女とも約4割が軽度以上の更年期症状を持っていることが明らかになりました。さらに深刻なのは、治療が必要なレベルの症状を持つ人でも約4割が「自分が更年期だ」と自覚していない点です。

症状を上司に相談している人はわずか1割程度。同僚に相談しているケースも2割未満と、ほとんどの当事者が「一人で耐えている」のが現状です。

💡 専門家の視点:「人材投資」として考える

更年期は「体調の問題」ではなく「人材の問題」です。
管理職への昇進、プロジェクトリーダーへの抜擢──キャリアの円熟期と症状のピークが重なるからこそ、企業が失うものは「一人分の労働力」ではなく「10年以上かけて育てた知見と判断力」です。
離職1人あたりの代替コストは年収の50〜200%とも言われます。
更年期支援は、福利厚生ではなく人材投資のROIとして評価すべきです。

3|なぜ「制度があっても使われない」のか

更年期に関する制度を導入している企業は増えています。しかし、制度が存在していても「使われていない」ケースが非常に多いのが実態です。その3つの壁を整理します。

壁 1

理解不足と無言のプレッシャー

「更年期=おばさん」というスティグマ。男性上司・同僚の理解が乏しく、体調不良を言い出せない空気。

壁 2

相談相手の不在

産業医は更年期の専門外であることが多く、人事部門も対応ノウハウが不足。「誰に言えばいいか分からない」。

壁 3

キャリアへの不安

「弱みを見せたら評価が下がる」「昇進に響く」という恐れ。特に管理職女性ほど、相談を躊躇する傾向。

職場で更年期への理解不足を経験した人のうち、約8割が「相談しづらい」と回答しています。
2026年1月には厚生労働省が「更年期の健康に関する問診活用マニュアル」を公表。健診の場を活用した早期気づきと相談導線の構築が、国の政策レベルでも推進され始めています。

4|企業ができる5つのアクション

1

知る ── 全社リテラシー向上

  • 管理職研修(男性含む):「更年期は誰にでも起こりうる」を正しく理解
  • 全従業員向けセミナー:症状の種類、対処法、相談先の情報提供
  • 「知っていれば配慮できる」── 啓発が第一歩
2

整える ── 柔軟な働き方の選択肢

  • フレックスタイム・リモートワークの活用推奨
  • 時間単位の休暇取得や「中抜け」の制度化
  • 症状が辛い時に一時退避できるスペース(休養室等)の確保
3

つなげる ── 相談窓口と受診導線

  • 社内相談窓口の設置(プライバシー保護を明示)
  • 外部EAP・オンライン婦人科との連携
  • 健診問診での気づき → 相談 → 支援の流れ(厚労省2026年マニュアル準拠)
4

測る ── 効果検証とKPI

  • プレゼンティーイズム測定(SPQ、WLQ等)での可視化
  • 女性特有の健康課題に関するアンケートの実施
  • 離職率・休職率の性別×年代別分析
5

届ける ── 2026年度 健康経営認定への対応

令和7年度(2026年度)の健康経営度調査では、女性の健康課題に関する設問が強化されています。

  • Q48:女性特有の健康課題(月経随伴症状・更年期症状)に関する知識の提供
  • Q49:行動を促す具体的取組(婦人科検診補助・更年期支援・PMS低用量ピル費用補助〔2026年新設〕等)
  • Q21(中小):性差・年代に配慮した職場づくり

💡 専門家の視点:「何をすればいいのか」はシンプル

食生活改善や運動施策と比べて、更年期支援は「何をすればいいか分からない」という声を最も多く聞きます。
答えはシンプルです。

① まず管理職が知ること。
② 次に、制度を「使いやすく」すること。
③ 最後に、健診の問診で気づきを促し、受診につなげること。

この3つだけで、離職リスクは大きく下がります。
「特別な施策」ではなく、既存の仕組みを更年期に"対応可能"にすることが最善手です。

5|男性の更年期 ── 見落とされがちなもう一つの課題

男性更年期の経済損失

約1.2兆円

経済産業省、パーソル総研

重度でも自覚なし

約7

パーソル総研 2024

更年期は女性だけの問題ではありません。男性もテストステロン(男性ホルモン)の低下により、疲労感、意欲の減退、不眠、集中力低下、抑うつ傾向といった症状が現れます。

パーソル総研(2024)の調査では、重度レベルの症状があっても約7割が「自覚していない」ことが判明。男性は「年のせい」「疲れが溜まっているだけ」と捉えがちで、受診行動につながりにくいのが特徴です。

包括的アプローチの推奨:更年期支援を「女性限定」にすると、男性当事者を取りこぼすだけでなく、「女性だけが配慮される」という逆効果の認識を生むリスクもあります。性別を問わず「40-50代の健康課題」として位置づけることで、全社的な理解と利用率が向上します。

まとめ

  • 更年期は40-50代の約4割が経験する「当たり前の健康課題」
  • 経済損失1.9兆円(女性)+1.2兆円(男性)=合計約3兆円は「放置のコスト」
  • 最も多い損失要因は離職。10年以上育てた人材の流出は経営リスク
  • 2026年度は健康経営認定の評価項目として女性の健康課題が本格化
  • 知る → 整える → つなげる → 測る → 届ける」の5ステップで、明日から実装可能

更年期支援セミナー・健康経営のご相談

管理職向けリテラシー研修、全社向け健康セミナー、制度設計のご相談まで、
ウェルネスドアが企業の更年期支援を伴走型でサポートします。

健康セミナーを見る 無料相談・お問い合わせ

🔗 関連ページ

「見えないコスト」は年間7.6兆円

プレゼンティーイズムの経済損失とROIを可視化。

詳しく見る →

健康経営KPI完全ガイド

戦略マップ×効果検証でKPI設計を体系化。

詳しく見る →

健康統計データ完全ガイド

令和6年調査の最新データを年代・男女別で解説。

詳しく見る →

執筆・監修

狩野 学(かりの まなぶ)

ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間、フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。食生活改善・運動習慣づくり・メンタルヘルス対策から、更年期を含む女性の健康課題支援まで、データに基づく伴走型コンサルティングを提供。

【参考文献・出典】

  • 経済産業省「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失(2024年試算)」
  • パーソル総合研究所「更年期についての定量調査(2024年)」
  • 厚生労働省「更年期の健康に関する問診活用マニュアル(2026年1月公表)」
  • 経済産業省「ACTION! 健康経営 企業取組事例集(2025年版)」
  • 経済産業省「健康経営度調査 調査票(令和7年度版)」
  • 日本産科婦人科学会「更年期障害ガイドライン」
  • ニッセイ基礎研究所「更年期症状と就労に関する調査研究(2024年)」
  • Arima H. et al. "Economic burden of menopausal symptoms in Japan" (2026)

【免責事項】本記事は健康経営に関する一般的な情報提供を目的としています。更年期の症状や治療に関しては、必ず医療機関や専門職にご相談ください。


旧コラム

4割が退職を検討。管理職世代を襲う「更年期の壁」と企業の損失

この記事のポイント

  • 重い更年期症状に悩む女性の43.6%が退職を検討し、実際に17.2%が離職している。
  • 症状により仕事のパフォーマンスは約47%低下。これは企業にとって大きな生産性損失となる。
  • 問題は「ホットフラッシュ」だけではない。「脳の霧(ブレインフォグ)」や気分の落ち込みなど、判断力や意欲に直結する症状も多い。
  • 経験豊富な人材の流出を防ぐ鍵は、「正しい知識の共有」「柔軟な働き方」「相談できる文化」の醸成にある。

管理職への昇進など、キャリアの円熟期を迎える40代から50代。しかし、この重要な時期に多くの女性従業員が、心身の急激な変化という見えない壁に直面しています。それが「更年期」です。

「個人の体調の問題」と片付けられがちなこの課題が、実は4割以上の当事者に退職を考えさせ、貴重な人材を失う原因となっているとしたら、それはもはや個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき経営課題ではないでしょうか。

この記事では、データが示す「更年期の壁」の深刻な実態と、企業が優秀な人材を失わないために今すぐできる具体的な対策について、深く掘り下げて解説します。

キャリアの正念場に訪れる、心と身体の「嵐」

更年期症状は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって引き起こされます。一般的に知られるホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)や発汗だけでなく、その症状は多岐にわたり、仕事のパフォーマンスに深刻な影響を与えます。

見過ごされがちな「脳の霧(ブレインフォグ)」という症状

特に注意したいのが、思考力や集中力が低下する「ブレインフォグ」と呼ばれる症状です。「会議の内容が頭に入ってこない」「簡単な言葉が思い出せない」「企画書をまとめるのに普段の倍以上時間がかかる」といった状態に陥り、本人も「能力が落ちたのではないか」と深刻に悩み、自信を失ってしまいます。

その他にも、気分の落ち込み、不安感、不眠、関節痛、疲労感など、多種多様な症状が日替わりで現れることもあり、経済産業省の調査では、症状がある時のパフォーマンスは平均で約47%も低下するという結果が出ています。

これらの症状に、具体的にどう向き合えば良いのでしょうか。一つの選択肢として注目される「ホルモン補充療法」について、専門家の解説動画をご覧ください。

なぜ「静かな離職」は起きてしまうのか

これほどの不調を抱えながら、なぜ従業員は誰にも相談できずに離職を選んでしまうのでしょうか。背景には、日本の職場特有の課題があります。

  • 理解不足と無言のプレッシャー:更年期症状への理解が乏しい職場で「やる気がない」「怠けている」と誤解されることを恐れ、不調を隠して無理に働き続けてしまう。
  • 相談相手の不在:特に男性が多い職場や、同世代の女性が少ない環境では、悩みを打ち明けられる相手がおらず、一人で孤立してしまう。
  • キャリアへの不安:管理職などの責任ある立場で、「弱みを見せられない」というプレッシャーから、誰にも相談できずに追い詰められ、自らキャリアを手放してしまう。

優秀な人材を守るために、企業ができること

経験豊富なベテラン従業員を失うことは、企業にとって計り知れない損失です。しかし、適切なサポート体制を築くことで、「更年期の壁」を乗り越え、さらに活躍してもらうことは十分に可能です。

  • ステップ1:まずは「知る」ことから。全社的なリテラシー向上を。
    最も重要なのは、経営層や管理職、そして同僚である男性従業員が、更年期について正しく理解することです。専門家を招いたセミナーなどを実施し、「誰の身にも起こりうること」「適切な対処で乗り越えられること」を全社で共有しましょう。
  • ステップ2:「やり過ごせる」環境を整える。柔軟な働き方の選択肢を。
    症状が辛い日に無理は禁物です。体調に合わせて一時的に休憩できるスペースを設けたり、リモートワークやフレックスタイム制度を活用して心身の負担を軽減できる環境を整えることが、離職防止に直結します。
  • ステップ3:一人で抱えさせない。相談できる窓口の設置。
    社内の相談窓口に加え、プライバシーが守られる外部の専門機関(EAP)や、オンラインで婦人科医に相談できるフェムテックサービスなどを導入し、従業員が「相談できる場所がある」という安心感を持てるようにすることが大切です。

更年期サポートは、全従業員への投資

更年期への正しい理解と支援は、当事者である女性従業員を守るだけでなく、組織全体の心理的安全性を高め、誰もが長期的に安心して働ける企業文化を育みます。
それは、すべての従業員のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長を支える「未来への投資」です。
ウェルネスドアは、リテラシー向上セミナーの開催から相談体制の構築まで、貴社の状況に合わせたサポートをご提案します。

【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。心身の不調については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。

【主な情報源】
・経済産業省「働く女性の健康増進調査2018」
(※記事内の数値は、上記調査結果を基に記載しています)

制度があっても言い出せない。更年期支援を機能させる「職場設計」3つのポイント

この記事のポイント

  • 更年期世代の女性は、管理職や中核人材として重要な役割を担う一方で、症状があっても受診や相談につながらないことが少なくありません。
  • 支援を機能させる鍵は、制度の有無だけでなく、「言い出しやすさ」「使いやすさ」「受診につながる導線」を設計できているかどうかです。
  • 有効な打ち手として、管理職教育柔軟な勤務制度休憩・温度調整などの環境整備相談窓口と産業保健の接続が挙げられています。
  • 2026年には、健診問診で女性特有の健康課題(更年期障害等)を把握し、事業者の健康管理支援につなげる実施マニュアルも公表され、企業実務との接続が進みつつあります。

第1弾では、更年期が「個人の体調の問題」にとどまらず、離職や生産性低下につながる経営課題であることを取り上げました。

では、企業は何をすればよいのでしょうか。実は、多くの職場でつまずくのは「制度がないこと」だけではありません。むしろ、 制度はあっても、本人が使いづらい・言い出しづらい・受診につながらない という“運用の壁”のほうが、現場では大きな課題になりやすいのです。

今回は、更年期支援を「制度の掲示」で終わらせず、実際に機能する仕組みにするための 職場設計のポイントを3つに整理して解説します。

なぜ、支援制度はあっても使われないのか

厚生労働省の情報発信でも、更年期は一般的に45〜55歳頃にあたり、責任ある立場で働く女性が多い時期とされています。しかし、更年期症状はホットフラッシュだけでなく、疲労感、睡眠障害、肩こり・腰痛、気分の落ち込み、イライラなど多様で、本人も「これが更年期なのか分からない」と感じやすいのが特徴です。

その結果、「医療機関に行くほどではない」「周囲に言いづらい」「迷惑をかけたくない」と考え、我慢したまま働き続けてしまうケースが少なくありません。職場側に制度があっても、 “使う心理的ハードル”が下がっていなければ、支援は実質的に存在しないのと同じ になってしまいます。

「配慮したいのに、どう配慮してよいか分からない」管理職の戸惑い

現場では、管理職が悪意なく「最近元気がない」「集中できていない」と受け取り、本人も「評価に影響するのでは」と不安になって相談をためらうことがあります。更年期に関する知識が職場内で共有されていないと、 不調が“能力の問題”や“意欲の低下”として誤解されやすくなります。

だからこそ重要なのは、当事者だけに情報提供するのではなく、管理職・同僚を含めて「理解の土台」を整えることです。

支援を機能させる職場設計① まずは「知識の標準化」をする

更年期支援の第一歩は、当事者だけにセルフケアを促すことではありません。 管理職・人事・同僚を含めた全体の理解水準をそろえること が出発点です。

厚生労働省は、事業主に対して「更年期について基本的な情報を共有すること」「周囲がこの世代の体調不良を理解すること」「体調が悪いときに活用できる制度を検討すること」を勧めています。更年期は個人差が大きく、症状も日によって変動するため、 一律の“正解対応”よりも、まずは職場に共通理解をつくることが重要です。

  • 管理職向け: 更年期の基本知識、よくある症状、声かけの仕方、業務配分の考え方
  • 全社員向け: 「女性だけの問題」ではなく、チームの生産性・心理的安全性に関わるテーマとして共有
  • 当事者向け: 我慢せず受診につなげること、セルフケアと治療の選択肢を知ること

支援を機能させる職場設計② 「やり過ごせる環境」を用意する

更年期の支援は、特別な制度を増やすことだけではありません。ポイントは、 症状が強い日でも“仕事を続けやすい余白”をつくること です。

職場で検討しやすい具体策

  • 柔軟な勤務制度:
    時差出勤、短時間勤務、フレックス、テレワークなど、「今日は少し負担を軽くする」選択肢を持てるようにする。
  • 環境調整:
    温度調整のしやすさ、通気性、制服や服装の柔軟性、すぐに座れる・休める場所など、ホットフラッシュや疲労感に対応しやすい環境を整える。
  • 一時的な負荷調整:
    体調が不安定な期間だけ会議出席や出張の負担を見直すなど、“恒久的な配慮”ではなく“期間限定の調整”として運用する。
  • 制度利用の見える化:
    制度はあるのに使われない場合、実際の利用イメージがわかないことが原因です。使い方の例を社内で共有すると、心理的ハードルが下がります。

文献調査でも、更年期症状に対して職場が取り組むべき支援として、 休みを取りやすい勤務形態や制度、作業環境の改善、リフレッシュ空間の拡充 などが挙げられています。重要なのは、「制度はある」ではなく、 “症状がつらい日に、本当に使えるか” まで設計することです。

支援を機能させる職場設計③ 相談→受診→フォローの導線をつくる

更年期支援が機能するかどうかを分ける最後のポイントは、 「相談で終わらせず、受診や支援につなげられるか」 です。

厚生労働省は、更年期症状がある場合は我慢せず早めに婦人科へつながることを勧めています。更年期障害の治療では、ホルモン補充療法(HRT)や漢方、必要に応じた薬物療法、カウンセリングなどが選択肢になります。ただし、本人が「どこに相談すればよいか分からない」状態では、職場での啓発だけでは不十分です。

最近の実務トピック:健診問診の活用

2026年1月には、厚生労働省が 「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」 を公表しました。一般健康診断の問診に、月経困難症、PMS、更年期障害などの女性特有の健康課題に関する質問を加え、その結果をきっかけに 個々の労働者と事業者をつなぐ健康管理支援 を行う考え方が示されています。

つまり、今後は「本人が自分から言い出すのを待つ」だけでなく、 健診・産業保健・相談窓口を通じて支援につなげる仕組みづくり が、より実務的な選択肢になっていくと考えられます。

企業としては、社内相談窓口、産業医・保健師、外部EAP、婦人科受診案内、オンライン相談サービスなどを、バラバラに用意するのではなく、 「困ったとき、次にどこへつながるか」が分かる導線 として整えておくことが重要です。

更年期支援は「制度導入」ではなく、「使える仕組みづくり」

更年期支援がうまくいかない職場に共通するのは、「制度や情報はあるのに、使われていない」ことです。逆に言えば、 言い出しやすさ、やり過ごしやすさ、受診につながりやすさ が設計されていれば、離職やパフォーマンス低下を防げる可能性は大きく高まります。

ベテラン人材が安心して働き続けられる職場は、更年期世代だけでなく、すべての従業員にとっても働きやすい職場です。更年期支援は、特定の人への配慮に見えて、 実際には組織全体の心理的安全性と持続的な人材活用を支える施策でもあります。

「制度を作る」から、「使える支援にする」へ

更年期支援の成否を分けるのは、制度の数ではなく、実際に使われる仕組みになっているかどうかです。
ウェルネスドアでは、リテラシー向上セミナー、管理職向け研修、相談導線の整理、女性の健康支援施策の企画まで、
貴社の状況に合わせた形で実務に落とし込むご提案が可能です。

【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。心身の不調については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。

【主な情報源】
・厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト(更年期)」
・厚生労働省科学研究費補助金 分担研究報告書「更年期症状に対して職場が取り組むべき支援や配慮に関する文献調査」
・厚生労働省「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」